No.6|都市の再形成
CNNの Oscar Holland 氏の記事 "Our cities may never look the same again after the pandemic"(5月10日)は、何人かの専門家へのインタビューに基づき、パンデミック後の都市の姿について検討したもの。私なりに重要だと思ったポイントを整理してみました。
1.パンデミックは都市再形成の触媒として機能するだけ
ウォーカブル都市、自動車と汚染がない都市を推進する人にとって、ここ数週間はこれまで主張してきたアイディアを試す絶好の機会であった。COVID-19ロックダウンによって道路や公共交通システムの利用が減少すると、道路から自動車を締め出し、自転車道を整備し、フィジカル・ディスタンスを確保するために必要な歩道の拡幅を行う。歩行者やサイクリストはこれまで決して行かなかった場所に行くようになり、米国、カナダ、オーストラリアの都市は交通信号を歩行者優先の制御に変更した。
このような都市への介入は、パンデミック終了後も続くのだろうか。多くの都市はこれをパンデミック後の「新しい普通」にしようとしている。一方で、自動車混雑との兼ね合いで歩行者や自転車に優しい街路をつくることが難しい都市もある。取り組みが続く都市の多くは、例えばパリ市など、もともとこうした変革の方針を持っていた都市だ。言い換えると、パンデミックは触媒として機能しただけなのかも知れない。
都市計画の変化は漸次的・断片的で、都市計画が過去の意思決定のレガシーを克服するのには時間がかかる。公共空間やアメニティはそう簡単に拡大したり再配置したりできない。よって、これから数ヶ月ではなく、これから数年の将来を見据えて、ウイルスがどう都市を再形成するのかを考える必要がある。
2.「6ft=約1.8m」という寸法による空間構成
人と人のフィジカル・ディスタンシング(6ft=約1.8m)のガイドラインは、新しい公共施設の空間構成を再定義し得る。これまでもコレラ、結核、肥満などの流行は都市の風景を変えてきた。1.8mは、私たちが都市や公園を考える際の新しい単位になるかも知れない。しかし、フィジカル・ディスタンスを取ることは、これまで人と人との密な交流を目指してきたプランナーや建築家の考え方と矛盾する。この矛盾がおもしろい。社会的つながりを促進する緑地や人々を惹き寄せる街路をつくる取り組みは、従来通りで良いのか、それとも変える必要があるのか。
3.グリーン都市と都市の密度
結論づけるのはまだ早いが、緑豊かな都市・汚染の少ない都市の方がそうでない都市に比べて、パンデミックに強いようだ。これはグリーンな都市のプランニング(Green Urban Planning)のゲーム・チェンジャーになり得る。もしそうだとしたら、「街路をリ・デザインするのは、フィジカル・ディスタンスをとるためだけでなく、人々の生存確率を上げるためだ」と言うことができる。
最も大きな疑問は、都市の人口密度だ。病気は人口密度の高い都市中心部で広まりやすいと心配する人々の都市居住に対する態度が変わる。すでに高い家賃や混雑した街路に悩まされていた人たちは、今、ウイルスによって、フィジカル・ディスタンシングをライフスタイルとして捉えざるを得なくなっている。では、都市中心部の人口を減らすために市街地を外へとスプロールさせる長期的取り組みが行われるのか。特に、自動車保有率が高く郊外生活が不便でなく、もともと密度を恐れていた米国では、都市中心部への反発が出てくるかも知れない。
しかし、都市からの撤退は、コストを伴う。高い密度が公共交通システムを成立させ、公共施設へのアクセスを改善し、変革や創造を推進しているのだから。デザイナーや都市プランナーは密度が高いことの利益を強調しなければならない。そもそも、人口密度や公共交通とCOVID-19感染拡大の関係については検証が必要である。一方、都市ではスクーター、電動自転車などのマイクロ・モビリティの成長が期待されている。シェアのモデルには、衛生や清掃に対する追加的コストが必要となる。
4.多くの変革の領域、政治とご都合主義
歴史的に見ても、病気の流行は建築やデザインに予想外の影響を及ぼす場合がある。COVID-19の影響を現時点で評価するのは時期尚早だが、そこには多くの変革の領域がある。自動ドアの普及、都市農業の人気上昇、下水道のモニタリングなどが考えられる。しかし、そこには政治やご都合主義もあることに注意したい。
Our cities may never look the same again after the pandemic
https://edition.cnn.com/style/article/cities-design-coronavirus/