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これぞB級映画の真骨頂『フューチャー・ウォーズ』に驚愕と感動!

WOWOWで時々放送される『誰が観るのよこんな映画』っていうB級~Z級作品があるのですが、私はそういうどうしようもない映画が大好きで、時々「とてつもなくつまらない映画が観たい!」という欲求に駆られる際にお世話になっております。
なんでもよいわけではなくて、映画への愛を強く感じるのに低予算は当たり前として、何故かヘンテコになってしまったりトホホな出来になってしまった作品が好きなんです。
例を挙げるなら『ビッグフットvsゾンビ』や『オール・チアリーダーズ・ダイ』、『アース・フォール JIU-JITSU』など、本当に時間の無駄というタイパ時代には最高の贅沢を味わわせてくれる作品たちです。

しかし、そんな映画の中にもこれは掘り出し物!という作品は極々たまに(本当に稀にですが)あるのです。そんな作品に出会った時は思わず心の中でガッツポーズ!前評判などである程度面白さが補償された作品を観た時には決して味わうことのできない謎の達成感があるのです。

今回紹介するのは『フューチャー・ウォーズ』という、プレステ時代のポリゴン・アクションゲームみたいな凡庸でダサめのタイトルからして普通だったら観る気がしない作品ですよね?ちなみにYouTubeのコメント欄は意外にも好意的なものが多かったです。私のような好事家、結構いるんですね。

Filmarksによるあらすじ
2555年――地球は終末の危機に瀕していた。人類を救うため、一人のタイムトラベラーが立ち上がる。彼に課せられた使命は2022年に戻り、世界を変えた“ある事件”を阻止し、歴史を変えること。しかし、歴史の改変を阻止すべく、時間警察の追手が迫っていた...。果たして、男は未来を変えることは出来るのか。

古くさいSF映画の匂いしかしませんが、2022年に製作されたフランス・ベルギーの合作で、2009年から2014年にかけて4シーズン計57話製作されたWEBショートドラマが元になっているそうです。原題”Le visiteur du futur”で検索するとYouTubeでも視聴できます。
ノリ的には『THE 3名様』とかそんな感じなんでしょうか。
そして映画自体は日本未公開かと思っていたらちゃんと公開してたんですね・・・。

あらすじからだとガチなSFっぽさを感じますが、冒頭からしょーもないコントが始まります。基本は緩いコメディです。そして我々日本人からするとあまり洒落にならない原発事故からスタートするので、ここで怒りや憤りを感じる方もいるでしょう。実際私も「これ以上観なくてもよいかも?」と一瞬思いました。
しかし、ここをグッと我慢することにより、最後には感動を味わえるのです!どうですか?観たくなりましたか?

ここからはネタバレ&独自解釈

ここからは『フューチャー・ウォーズ』を鑑賞した方のみに向けて書きます。どうでした?面白かったですか?
「ふざけるな!時間の無駄だった!」とお怒りの方がいたらゴメンナサイ。でも、きっとこの記事をわざわざ読んでくれるような優しい方はそんなことは言わないと思います。

私は本作、いろいろな作品のパロディ、オマージュや愛で作られていると思いました。
まずは主人公であるアリス。もうこれはお約束の『不思議の国のアリス』ですね。時間移動で不思議の国(未来、ディストピア)で冒険。
キツネや時間移動装置を作る博士はジュゼッペ爺さんの引用か?つまり『ピノキオ』
ロストボーイズの様な子どもたちは『ピーターパン』
世界を滅ぼす雲は『オズの魔法使い』の嵐(テンペスト)か胸糞映画代表『ミスト』
時間移動を利用し世界滅亡の原因を根絶しようとするのは『ターミネーター』
両親にまつわる歴史改変(アリス自身の出生の話)は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で間違いないでしょう。
まだまだあります。
突然第一次世界大戦風(マニアの方は軍服や大砲などで時代考証ができるのでしょうが、生憎無知なもので詳しいことはわかりません・・・)のフロントラインに放り込まれるシーンはまるで『1917』
娘の名前を忘れてしまうのは、日本アニメーション映画の金字塔『君の名は。』なのか!?!?事故を回避する展開からもあり得る!

完全に悪ノリしている感じもしますが、これを全部詰め込んで101分でまとめる手腕、凄くないですか?
勿論、ひとつひとつは雑だし、タイムパラドックス、パラレルワールドなど突っ込みどころは山ほどあるんですが、そういった理屈は突き詰めすぎると『何も起きてないように見えなければおかしい』となってしまうので、映画としては『細かいことはいいんだよ』で飲み込みましょう!

そしてクライマックスのアリスの選択・・・。すべてが『無』になり、別の未来が展開して行く。無意識に涙を流すアリスの父。(「私、なんで泣いてるんだろう?」って、やっぱり『君の名は。』だよ!)
何だよ!良い映画じゃないか~!

人類滅亡は回避されたのか?と思ったら、最後に映し出されるのはやっぱりディストピアとなった街並み・・・。え?どういうこと!?と思った方が多かったようですが、伏線はちゃんと張ってあって、人類滅亡に至るケースは無数にあって、それをひとつひとつ何度もトライして改善していく中のひとつの話なんですよね。確かに現実的にはひとつ問題を解決しただけではすべてが変わることなんてないし、ましてそれが地球規模の話となると・・・。
本作は人類滅亡回避への小さな一歩。アリスの父親の意識を変えるというミッションが成功したに過ぎない。しかし、この一人ひとりの意識を変えなければいずれ人類は滅亡してしまうというかなり大真面目なメッセージが隠されているのです!とても誠実に作られ練られた脚本であると感じました。

本作で監督・脚本・制作まで担当したフランソワ・デスクラックさん。
勿論全然知りませんし、作品もこの1本だけです。
今後の要注目映画人として追いかけたいと思います。
いつかとんでもない名作・傑作を作るのでは!?と期待も込めて。

みなさんのオススメB級~Z級があれば教えてください!

From AleJJandro Hiderowsky

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