2025年度東大数理+東工大数学系院試体験記
こんにちは。表題の通り、2025年度の東大数理、東工大理学院数学系の院試を受験しましたので、その備忘録的なものをつらつらと書き殴っていこうと思います。特に東大数理の院試体験記はググれば山ほど出てくると思うのでこのnoteに需要があるかはわかりませんが、年度は新しいものの方が良いでしょうから、もし参考にしたいという方がいらっしゃればぜひ読んでいってください。ただし、院試は学部入試以上にコロコロ形式が変わったり(細かいことを言えば試験開始時間が年によって違ったり)するので、ここに書いてあることを鵜呑みにすることだけは避けていただきたいと思います。
筆者は東大の内部生で普段確率論や数理統計の勉強をしています。ご参考までに。
3年生まで
2年生の時に父の職場で統計ブームが起こっていることを聞き、その勉強を教えてくれと言われたので流れで手始めに統計検定2級をサクッと勉強して取得しました。それじゃあせっかくならということで統計検定1級の勉強もしようとなり、そこでどうやら測度論が必要になるらしいぞということをうっすら感じとりました。(使った本は竹村『現代数理統計学』です。)その伏線回収が3S必修の解析学IV(Lebesgue積分論)で行われ、そのまま興味を持ったので数学輪講ではFerguson (1996) "A Course in Large Sample Theory"を読んでいました。特に院試に向けた準備をしていたわけではなかったような気がします。
4年生
7月まで
解析学VII(関数解析)、確率統計学II(統計的大標本論)、確率統計学III(確率過程論)の講義を履修していました。履修科目数的にもそこまで忙しくはならないだろうと思っていたのですが、主に誤植や本質的な誤りの修正に厖大な時間を費やしていたために講究の準備に追われあまり余裕はなかったと思います。自主ゼミで東大院試対策が行われていて、A問題を解く会があったのですが、なんとなくやる気が起きず過去問を消費するのが憚られたため特に参加せず、学科discordに挙げられていたゼミ記録の板書も見ませんでした。
それとは別に、6月中頃に講究の相方からB問題の確率・統計分野の問題を解かないかと誘われ、流石に焦りを覚え始めていた僕は過去問の消費を渋りつつもこのまま放置していたらいつまでも解かないなと思い参加することにしました。毎週2~3年分の問題を解いて議論するという形式でした。もちろんその日までに解けなかった問題も幾つかありましたが、その後で解けたりしてなんだかんだでフォローはできていました。最終的には2004~2024の問題は小問2つ(2006、2013)を除いて解決しました。院試が終わった後にこれらも解決しました。
その後院試まで
講義も終わり、課題も終わり、いよいよ後は院試に向かってまっしぐらというところまで来ました。東大数理の院試Aでは必答2問、(実)解析(?)、複素解析、微分方程式の中から2問を、Bでは確率、統計と適当に測度論の問題を解こうと決めていました。ざっとA問題を眺めている限りでは3完以上は安定して取れそうで、B問題に関しても近年確率・統計分野の問題が異様に易化していることから筆記は問題ないだろうと踏んでいました。そのため、主に口頭試問の対策を行っていました。やったことは主に3Sの確率統計学基礎、3Aの確率統計学I(確率論)、および講究の復習です。流石に何回も同じ議論やらを見ていると禿げそうになりますね。 東工大の院試体験記も兼ねているのにここまで何も書いていないのはどうなのかという感じがするので書いておくと、午前問題は線型代数×2、集合と位相、解析×2、午後問題は各専門分野の問題×3くらい(?)といった問題構成になっています。(私は解析の人間なので他分野については疎いです。受験される方はご自身で確認してください。)解析については大体毎年複素解析、Lebesgue積分、関数解析、PDEのうち3つが出ていたような気がします。関数解析は解けないのでもうこの時点で捨てることを決めていました。過去問は午前午後両方とも5年分ほど解いていけそうだなと思ったのでそれ以上は解かず東大対策に振りました。個人的には時間的制約なども含め、東工大午前の方が東大Aよりも難しい気がするのですがどうなんでしょう……
東京工業大学
1日目(2024年8月16日)
関東地方に台風7号が接近し、このまま実施するのかと若干混乱気味でしたが予定通り決行されました。前日から低気圧によりひどい頭痛に悩まされ若干のビハインドを感じていましたが、糖分をドカドカ摂取して頭痛に気づかないふりをしていました。試験中に急に土砂降りになったり、かと思えば蝉が鳴いたりして随分情緒不安定な天気だったのを覚えています。
松屋で朝食をとり、試験会場に向かいました。この時期は松屋で永遠にポルノグラフィティの『ミュージック・アワー』が流れていました。
ここからは問題のネタバレを含みます。見たくない方は枠で囲まれた部分を飛ばしてください。以降も特に断らない限り、問題のネタバレを含む際はこのように枠囲みを使います。
想定をはるか下回る出来だったので不安でしたが、昼休みに同学の友人の話を聞いた限り全然解けなかったようなので少し安心しました。後塵を拝するようなことはしていないと自分に言い聞かせ午後に臨みました。
ということで午後はまあまあ挽回できたかなと思います。
東工大の口頭試問は筆記の成績優秀者が午前に回され微妙だった人は午後に回されるということを風の噂で聞いていましたが、この時点で筆記落ちもしくは午後になることを覚悟しました。
英語はめちゃくちゃ簡単でした。辞書持ち込み可ですが一人暮らしで家に辞書がなかった上前日ブックオフに行って辞書を探すと中古で2000円くらいして目ん玉が飛び出たので結局辞書は持っていきませんでした。余程の英弱でない限り辞書はなくてもいい気がします。
その日はどうしても午前問題のことを考えてしまい気が滅入っていました。疲れていたので早々に寝ました。
さて翌日です。確か17時頃に口頭試問の受験資格者が発表される予定だったのですが、採点に時間がかかっているのか時間になっても全く発表される気配がありません。スプラでクマフェスが来ていたのでノーミスカンストしました。(スクショ撮り忘れた……) ムニエールのノーミスカンストは2回目でした。サモランをやっている方ならわかると思いますが、結構時間がかかります(4時間弱)。それでもまだホームページが更新されないので、諦めてご飯を食べてお風呂に入りました。結局発表されたのは21時半頃だった気がします。
見ると、自分の番号がありました。そして解析がなんと少ないことか……そもそも解析系は午前の受験者がおらず、全員午後で、しかも8人しかいませんでした。他分野には午前も午後もいました。とりあえず一安心です。今年に関しては、先ほど述べた風の噂はおそらく適用されていないと思います。
2日目(2024年8月18日)
会場に着くと見知った顔ばかりで少しギョッとしました。割とすぐに自分の番が回ってきたのですが、事務的な確認ばかりですぐ終わりました。この時点で合格を確信しました。口止めは特にされなかったので書いてもいいと思いますが、思い出せる範囲で書くと、
(合否には関係ないと明言された上で)併願校はあるか、また両方ともに合格した場合どちらに進学する予定か
筆記試験の出来はどうだったか
今までにどんなことを勉強してきたか
指導教員は誰を希望するか
といった感じです。10分くらいで終わった気がします。
試験会場を出て武蔵小杉のミスドでポン・デ・ストロベリーとチョコファッションを食べました。愛知出身の者としては大岡山にせっかく来たのだから歌志軒に寄りたかったのですがさすがに口頭試問前に昼ごはんを食べてきて胃のキャパがなかったので断念しました。
その後
残るは東大数理のみなので、全力で対策しました。本番の1週間前の平日5日間毎日A問題を1年分解きました。3完1半以上は安定して取れ、4完できることも珍しくありませんでした。ちなみにこの頃はA問題に完全に気を取られ、結局B問題を通しでやったのは最新の1年分のみになってしまいました。
東工大での反省なのですが、筆記の時に計算用紙を使っている時間が長すぎたような気がしました。私は確実に答えが出るまで計算用紙で計算を続けてしまう癖があり、もちろん時間がタイトな試験ではそんなことをすれば一瞬でタイムオーバーになってしまいます。そこで、東大ではある程度不確かな状態でも解答用紙に手をつけようと心がけました。こういうことを知れたという点でも東工大の受験は試験の練習として良かったと思います。
余談ですが、数理の図書館はエアコンが28℃に設定されていて暑いので、専らコモンルームや総合図書館で勉強をしていました。まあまあ涼しくて快適です。最後の日には総合図書館に頭を下げてキャンパスを後にしました。
東京大学
1日目(2024年8月26日)
朝から緊張のしすぎで手の震えが止まりませんでした。私は大講義室で受けることになりました。他に117と123が会場として設定されていましたが、大講義室が一番広々としていてしかも涼しかった気がします。
さて英語です。過去問を最新の1年分しかやっていませんでした。その問題を見る限り分量的には問題ないだろうと思っていたのですが、今年の問題は心なしか量が多かったような気がします。和訳×2、英訳といった構成でしたが、和訳が終わった時点で30分しか残っておらずかなり焦りました。
英訳は学部入試のような複雑な構文などは出てこないので、数学英語の語彙をしっかり押さえていれば意味はわかると思います。講究で英語の本を読んでいれば抵抗感もなく読めるのではないでしょうか。和訳に関してはある程度決まった言い回しなどを覚えて望めばいいのではないでしょうか。
さて、午後のA問題に取り掛かります。
体感3完1半でした。まあ良いのではないのでしょうか。4完を狙っていたので少し残念ですが死守ラインは割っていなかったのでその日は安心して寝ました。
2日目(2024年8月27日)
確率論と統計を1問ずつ解くことは決めていて、あとは解析から適当に1問見繕おうと考えていました。
というわけで1完2半、しかしそのうちの1半はかなり完答に近かったと思います。実質2完1半 筆記通過の手応えは十分だったので、安心して次の日を迎えました。予想通り筆記は通過して、口頭試問に臨むことになります。
3日目(2024年8月29日)
なんと口頭試問は1日目のトップバッターでした。まあ待たされるよりずっとマシなので良かったです。1時間前くらいに会場に着きました。コモンルームに何人か集まっていたのでその人たちと他愛もない話をして気を紛らわせていました。
口頭試問の内容に関しては箝口令が敷かれたのでここでは書きませんが、特に講義と講究やセミナーの復習はしておいて損になることはないはずです。まあそれで口頭試問の内容を全てカバーできるとも言いませんが。
終わったあとは落ちたとは思いませんでしたが、聞かれたことを思い出して釈然としませんでした。
合格発表
東工大も東大も受かっていました。良かったです。東大は例年35人程度しか合格を出さないはずなのになぜか今年は50人程度が合格していました。何があったんでしょうか?
余談ですが、B問題の過去問の確率・統計分野の問題は全て解決しているので、需要があれば略解などを書こうかなと思います。今のところそんなに気力がありません。LaTeXめんどくさい。
後日談
2024年10月11日追記:
東大の結果の開示が返ってきたので、参考までに載せておこうと思います。(東工大の方はなぜか金がかかるので請求はしていません。)満点はオフィシャルには公開されていませんが以下の値でほぼ確だろうと真しやかに囁かれているのでそう書いておきます。
英語:195/200
専門科目A:260/400
専門科目B:225/300
総合得点(口述試験を含む):81/100
どうやらAで結構事故ったようです。意外でした。何か間違えたっぽいです。他は想定以上に取れていました。よく分かりませんね。
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