勇気の出るコード進行
この記事は、TwitterでFantom Iris様が「#GMクロスラ」にて提示した課題「勇気の出る・滾るゲームミュージック選手権!!」(2023.7.17)に関する考察をまとめたものです。
注:筆者、音楽コードについては独学なため、細かい間違いに関してはご容赦いただけると幸いです。あまりにトンチンカンな箇所がありましたらご指摘ください、訂正します。
Ⅰ-♭Ⅲ-Ⅳ-Ⅴ?
このお題を聞いたとき、じつは曲より先に「あるコード進行」が思い浮かんだ。昔のコナミのゲームでよく聴いた覚えのある、
Ⅰ-♭Ⅲ-Ⅳ-Ⅴ
というやつだ。具体的には、ベースで
「ドドドド ミ♭ミ♭ミ♭ミ♭ ファファファファ ソソソソ」
という感じの音を思い浮かべてみれば、なんとなく分かるはず(分かりづらくてすみません)。
Challenger 1985(グラディウス)
[正確には「Ⅰ-♭Ⅲ-Ⅳ-♭Ⅵ-♭Ⅶ Ⅰ-♭Ⅲ-Ⅳ-Ⅴ」だが、こんな感じのやつ]
炎の惑星のテーマ(グラディウス2)
[コナミ十八番の8分の12拍子と合わさり最強に聞こえる]
Hit Man(ゼロウィング)
[マイナー調でも相性はBATSUGUN。最終面がこの曲で燃えないわけがない]
Final Mission(イメージファイト)
[こちらも最終面。Ⅰm-♭Ⅲ-Ⅳm-Ⅴm/♭Ⅶ-Ⅴ/Ⅶ…という表記になる?]
親戚がたくさんいた
……と、このあたりをピックしたところで、じつはこの進行(ここでは仮に「コナミ進行」とする)を使っているゲームミュージックがあまり思い浮かばないことに気が付いた。これだけ記憶にこびりついているのになぜ……。(※他に知っている方がおられましたらぜひ教えてください)
その代わりというわけではないが、「勇気の出る成分」考察のためにたくさんの名曲を思い出せたので、以下に掲載する。
Cross Point(A-JAX)
[3番目のコードが変わっており、Ⅰ-♭Ⅲ-♭Ⅵ-Ⅴ進行となる。少し印象は違うが、Ⅰ-♭Ⅲの高揚感はやはり強い。ちなみに、MSX版「ゴーファーの野望エピソードⅡ」にも同様の進行の曲がある]
Sturdy Wings(トライゴン)
[正しくはⅠm-Ⅳ-♭Ⅵ-♭Ⅶだが、キーを変えて見てみるとⅤm-Ⅰ-♭Ⅲ-Ⅳと、コナミ進行が1個ズレた並びになっている。つまり「勇気が出る成分」自体は同じ?]
FAR AWAY(TATSUJIN)
[コード進行はⅠ-♭Ⅶ-Ⅳ-Ⅴ。2番目が変わっただけでメッチャ垢抜けた感じになる。どうやら勇気の秘密は♭Ⅲにありそうだ]
AREA6(ドラゴンスピリット)
[コナミ進行かと思って聴き返してみたら、実際にはⅠm-♭Ⅶ/Ⅱ- ♭Ⅲ-Ⅳmだった……。ただ、ベースが常に上行しているので、コナミ進行と同じような高揚感がある]
Planet RATIS(沙羅曼蛇)
[これも勘違いしていて、実際にはⅠm-♭Ⅶ-♭Ⅵ-♭Ⅶ。しかしベースに違うキーでのⅠ-♭Ⅲ-Ⅳ-Ⅴが織り込まれており、しっかり勇気成分が含まれている。これは神の所業]
……やっぱりコナミ作品が多い。正確なところは違っても、勇気の出る、滾るような曲調のイメージはこれで養われていたのだろう。
勇気成分を考える
なお、この記事を作成するにあたり、コード進行についてネットを使っていろいろ調べてみたが、どうもしっくりこない。カノン進行・王道進行・小室進行のようにビシッと「これ!」という解説をしているサイトが出てこない。(※前述のように独学なので、探し方がそもそも悪いのかもしれないが……)
例えば、いわゆるフツーの音楽シーンでは、以下のようなコード進行がポピュラーとされているようだ。
・Ⅰ-Ⅲm-Ⅳ-Ⅴ ※Ⅰ-Ⅲm7-Ⅳ-Ⅴ7でよく使われる
・Ⅰ-Ⅵm-Ⅳ-Ⅴ ※Ⅰ-Ⅵm-Ⅳ-Ⅴ7でよく使われる
聴いてみるとすぐ分かるが、とにかく明るい。聴きやすいが、コナミ進行のような血湧き肉躍る昂ぶりは感じられない。
あくまで自分なりに理由を考えてみたが、やはり2番目の♭Ⅲの存在が大きいようだ。和音をいろいろいじってみると、Cメジャーキーでの「♭Ⅲ-Ⅳ-Ⅴ」はGナチュラルマイナーキーでの「♭Ⅵ-♭Ⅶ-Ⅰ」に相当するが、「♭Ⅵ-♭Ⅶ-Ⅰ」あるいは「♭Ⅵ-♭Ⅶ-Ⅰm」というのはかなり叙情的でよく目にする(「春よ、来い」や東方projectの曲など)。
つまりコナミ進行は、まずⅠで王道のコード(シンプルなrootキーのメジャーorマイナー)によりプレイヤーの現状を伝えたのち、♭Ⅲをきっかけに、ポジティブな力強さ(メジャー調+上行)と困難を予想させる不安(マイナー調)が同居したような感情を覚えさせる。この感情が、きっと「勇気の出る成分」なのだろう。グラディウス1面のⅠがメジャー調、ゼロウィング最終面・イメージファイト最終面のⅠがマイナー調なのは、そう考えれば当然なのかもしれない。
一方で、いわゆるフツーの音楽シーンではほとんど見ない理由も何となく察した。ポピュラー系の進行と比べてこれだけ暑苦しいと(とくにマイナー調)、ヒーロー系アニメや特撮戦隊ものの主題歌くらいでしか使えない。逆にゲームであれば、プレイヤーの感情を瞬時に鼓舞し盛り上げるにはうってつけとも言える。
おまけ:全部つなげてみた
記事内で出てきたコードおよび曲について、キーを調整し、分かりやすい音だけ打ち込みでつなげてみました。(※参考用なので、音質・動画編集の品質はお察しください)