香川でうどんを食べようin茅ヶ崎
遠く離れた場所で同じ地名がカブるというのは割とよくあることだ。
この前、JR相模線に乗っていたら「香川」という名前の駅を見つけた。
香川といえばうどん。
ここでうどん食ったら「香川でうどん食った」って言えんじゃん。そう思った。
香川へ行く。電車で
後日、改めて香川へ行った。北茅ヶ崎駅のすぐとなり。保土ヶ谷の自宅からは1時間半ほどで着いた。小旅行というにはやや気軽すぎるだろうか。
小さい駅だが、日曜日だからか降りる人は多い。やはり茅ヶ崎市は湘南を擁するだけあってか、まぁまぁ活気がある。
写真は撮り忘れたが時刻表は液晶パネルになっており、さりげない部分にお金をかけられるぐらい儲かっていることが伺えた。
時間帯はもうすぐ夕方。今の時期は日が長いとはいえ、暗くなる前にうどん屋を見つけたいところだ。
周辺にそれらしき店があるか予め調べてくることもできたが、せっかく遠出するのにそれじゃあ面白くない。今回は極力インターネットに頼らないことに決めていた。
できることなら自力で見つけたほうがうどんの味だって美味しく感じるはずだ。
さっそく前方右に第一飲食店発見。アレがうどん屋さんだったら早くも目的達成だが、果たして・・・・・・
惜しい!そばはあるけどうどんはない。
こんだけいろいろあるんだからうどんあるんじゃない? と思い、メニュー表の隅から隅まで2〜3回ほど確認したが、ないもんはないのだった。
ま、まぁ。あんまり早く見つかってもそれはそれで来た甲斐ないしな。気長に探そう。
近くには博物館や歴史的な建造物とかもあるらしいのだが、今回の目的はあくまでうどん屋なので全スルー。
とりあえず、飲食店が多そうな駅の周辺をぐるりと歩き回ってみる。
のどかではあるが、さりとてド田舎というほどでもなく、わりかし発展している。行ったことないから比べられないが、たぶん県のほうの香川もこんなかんじなのかもしれないな。
そういえば、チェーン店以外でうどん屋ってほとんど見たことない気がする。個人経営が多いラーメン屋と比べると、うどんってたしかに地に足ついてるというかギラついてない印象はある。
ラーメンとか唐揚げとか焼肉のような脂っこい系の飲食店はコンサルがいっちょ噛みしてそうな新規参入が多いイメージがあるが、その辺を解き明かすカギはやはり「ギラつき」なのかもしれない。飲食店に新規参入する系の人たちってもれなくギラついてるもんな。宮迫とか。
殺伐としたにスレに宮城県が!
飲食店はあれど
少しずつ日が傾き涼しくなってきた。ふと、目の前にのぼりがはためいているのが見える。
なにやら飲み食いできる業態らしいことは伺えるが、はたしてうどんはあるのか?
店のホームページを覗いてみたところ、お酒の種類が豊富なことはわかったものの、
フードメニューは「充実」としか書かれていない。
人気No. 1の焼き鳥もかなり気になるが、今日はうどんを食べにきてるんだ。ごめんよ。
誰に謝ってんだ。
一瞬「ここで一杯呑みつつうどん屋がないか聞き込みでもするか」とか考えたが、うどん以外の食べ物を胃に入れたくなかったのでやめた。うどん食いにきてんだよ俺はよ。
撮った写真たち
本来の目的はあくまでうどん屋探し・・・・・・とはいえ、せっかく見知らぬ土地へ来たのだからついでに散歩もしておこう。歩き回ればお腹も空くしな。
時計を見ると、時刻は16時50分。諦めるにはまだ少し早い時間帯だ。
ここからは少し捜索範囲を広げて、住宅街も散策してみることにする。
ディストピアみのある河野太郎。色褪せてんのかと思ったが、どうやらもとからこういうデザインらしい。こないだTwitterでTHIS MANみたいって言われててちょっと笑ってしまった。
地図も見ないまま、ただ己のカンだけを頼りに駅から離れてゆく。
自転車に乗った童たちが僕を追い抜く。ああ、のどかだなぁ。
童のひとりが言う。
「じゃあローソンで集合な!」
ほとんど真っ白だった脳内地図に、ローソンの点だけがポツンと書き加えられた。
それから、自転車の群れを追いつつ歩くこと2〜3分。
果たして、ローソンは僕の目の前に姿を現したのだった。
とりあえず店内を覗いてみようと近寄ると、ドアの上にツバメがとまっている。
店の軒裏に巣を発見。看板猫ならぬ看板ツバメとしてお馴染みになっているようで、店員さんもお客さんもニコニコと見守っていた。
俺、来世の第二候補ツバメかもしれない(第一志望は人間)。
ついにうどん屋を発見
17時20分。腹が減った。もうこれ以上闇雲に歩き回ってもたいした成果は出ないだろう。そもそも、本当に香川にうどん屋があるのかも怪しくなってきた。進むにしろ戻るにしろ、いい加減に答えはハッキリさせなければ。
そう思ってGoogleで検索したら、一件だけヒットした。今いるローソンからおよそ徒歩10分。場所は住宅街のど真ん中で、ヒントなしではおそらく一生辿り着けなかっただろう。17時半オープンらしいので、今から向かえばちょうど一番乗りだ。
地図を頼りに川沿いの道を歩く。長い釣竿を担いだ少年が自転車に乗って駆けていく。自転車に乗れない僕にはそれが少しだけ尊いものに見えた。
地図が示す場所にあったのは、パッと見だと普通の民家にしか見えない建物。だが、よく見ると民家にしては内装がオシャレすぎる。
ここが香川で唯一のうどん屋である。
奥へ入るとガラス戸の前に下駄箱が置いてあり、「靴を脱いでお上がりください」とある。ちょっと高級な店だと土足厳禁のところもさして珍しいものではないが、そういうのともまた違うかんじ。そう、ここは「人んち」だ。
スリッパに履き替えて店内に足を踏み入れると、芳しい木の匂いが漂っていた。これは例えるなら、夏休みに泊まりに行った親戚の家の匂いに似ている。
「いらっしゃいませー!」
店主と思しき男性が愛想良く迎えてくれた。
とりあえず入り口からいちばん近いカウンター席に座ろうとすると、「すみません、そこはいつも常連さんが来るので他の席にしていただけますか」とやんわり言われた。こういうほんのりとした緊張感もまた親戚の家にそっくりだ。
壁に貼られたメニューを見ていると、「食べログ・グルナビへの書き込みはご遠慮くださいませ」との貼り紙が。どうやら、地域の人たちをメインターゲットにこぢんまりと営業しているみたいだ。なんだか、「香川でうどん食おうぜ」みたいな軽いノリで来たのが申し訳なくなってきた。
そういうわけなので、店内の写真はほとんど撮っていない。この記事を書くときも店の場所や名前はもっとゴリゴリに伏せようかとも思ったのだが、まぁ検索したら普通に出てくるしそこはいいだろう。
温かいほうじ茶を啜りつつ店内を眺めていると、ほどなくして注文の品が届いた。
うどんの「正解」が出たかもしれない。
少し離れた席に座っていた常連らしきおじさんも僕のうどんを見て「うまそうだなー!」と声を漏らしていた。へへへ、いいでしょぉ。
最初のひとくちを啜ってから、5秒後には箸が止まらなくなっていた。うまい。うまいぞこれ。
麺は細めだがコシがありモチモチしている。そしてなにより、特筆すべきは天ぷらだ。薄めの衣は脂っぽさを感じさせず、サクサクした食感なのにふわりとした軽やかさがあり、なんというか、颯爽とした味だ。
「この海老天がすごい! 2024」の1位が決まった。衣の上からではわからないが、かじってみるとかなり身が詰まっていて歯応えがある。よく食レポなどでエビの食感を「ぷりぷり」と表現したりするが(最近は聞かない気もするけど)、こいつはそんなクリシェを寄せ付けない。コリコリのエビをあなたは食べたくはないか。香川に行けば食べられるぞ。
あと、つゆが絡んだうどんをしそと同時に食べると「日本の夏」の味がする。これがんまいんだ。
などと、慣れない食レポのようなことをしてみたが。とにかく言いたいのは明確なイズムを感じさせる味だったということだ。こりゃあそうとう良い材料使ってるぞ、というのが素人の僕にもすぐわかる。
「ごちそうさまでしたー」
「はーい、ありがとうございましたー!」
ああ、美味しかった。良い店だったなぁ。
お会計を済ませて店を出てしばらく歩いたところで、「香川だからうどん屋なんですか?」と聞きそびれたことを思い出した。いちばん肝心なところなのに、ついうどんの味に夢中になってしまっていたようだ。
まぁ、いっか。どうせまた来るだろうし。
次は何を食べようか。とりあえず、脂を抜いてさっぱり仕上げているという鴨肉が気になって仕方がない。
皆さんも、もし茅ヶ崎に用事があった際はぜひ立ち寄ってほしい。「茅ヶ崎 香川 うどん」で調べたらトップに出てくるので。この店のためだけに足を伸ばすぐらいの価値はあると思う。
あと、香川県のうどんもそのうち食べてみたい。
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