試練の酒、それはキンミヤハイ
僕がときどき飲みに行くゴールデン街の某バーにて、なにげなくキンミヤハイを注文したら店員さんにこんなことを言われた。
「キンミヤハイって、キンミヤのソーダ割りってこと? そんな美味しくないのわざわざ頼むなんて珍しいね」
僕は少しびっくりした。いままでキンミヤハイのことをマズいとも、“わざわざ頼むようなもの”だとも思っていなかったからだ。あれって、スタンダードな飲み方なんじゃないのか。
戸惑う僕をよそに、その店員さんはグラスを差し出しながら追い討ちをかけてくる。
「はい、試練の酒ことキンミヤハイおまちどおさま」
今日まで俺は無自覚なまま自らに試練を課していたとでもいうのだろうか。つか、そんなボロクソに言われるほどマズいか? キンミヤハイって。
そりゃ、冷静になって考えてみれば確かに美味しくはないかもしれない。けど、そんなこと言ったらビールだって“美味しくなさ”では同じぐらいじゃなかろうか。この店員さんは、キンミヤハイになにか恨みでもあるのだろうか。
いや、味の好みは人それぞれなんだから、別に彼女がキンミヤの味を好まないのは勝手だ。僕が気にしているのは、いきなり客にたいしてそんなことを言ってきたという事実のほうだ。
その店員さんとは初対面ではなくある程度顔馴染みで、向こうも僕のことを客としてある程度信頼しているというか、慣れているからそういうことを言ったのだろう。僕としても別に不快感などがあるわけではなく、たんに「この人、そんなにキンミヤ嫌いなのか?」と気になってしまっただけだ。今度またその店に行ったら聞いてみようと思う。
そういえば、別の店で黒霧島のソーダ割りを頼んだときにも「珍しい飲み方するね」と言われたことがあった(ただ、そのときは他のお客さんが「いや、案外いるよ」とフォローしてくれた)。
ソーダ割りって意外とみんな飲まないんだろうか? たしかに、飲み慣れていそうな人ほどお茶とかで割ってるような気もしてくる。
そもそも、なぜ僕がソーダ割りを頼むのかというと理由は単純で、あまりお酒の種類をしらないからとりあえず知っている単語を復唱しているだけなのだった。ちょっと前まではラーメン屋で好みを聞かれてもよくわかんないから「普通で」って言ってたが、それと同じだ。
これからはもうちょっといろんなものでキンミヤを割ってみようかと思った次第だ。カルピスとかどうだろう。さっき検索したら予測変換に出てきたのだ。ちょっと想像がつかない組み合わせだが、だからこそチャレンジしがいがあるということなのかもしれない。
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