コドモノヒ
いーいらーあかーの なーみーいとー
くーうもーお のー なーみー
そよそよと青い香りの風が抜ける坂道の、下に位置するドトールの店内から通りを透かしみている。
もうしっかりと葉形が成り上がったケヤキの葉は、その青々しくむせ返るようなフェロモンが物語るように青春期の若いみどり。
狭い通りの両側に立ち並ぶ街路樹の宿命として樹形は地上5メートル辺りから横に広がらないように細く天に伸びるように枝打ちが施されているけれど、五月を待っていよいよ幹に枝にと葉がわさわさと繁っている。
そのわさわさの間を光が射しては風が揺らす。
オメデトウ
オメデトウ
ケヤキの葉が風に揺れながらニコニコ顔で口々に言っている。
オメデトウ
オメデトウ
コドモノヒ オメデトウ
ああ、そうか。
あなた達は今日は鯉のぼりの気分なのね。
アタリ
アタリ
ハレテヨカッタネ
ニンゲンノミンナ
ミンナ
コドモタチ ダッタノヲ
シッテルヨ
なるほど、ありがとう。
道理であなた達を見ていたら遠い日の光を思い出したわけだわ。
ちょうど日曜日が締め切りになる詩を作ったところなの。こんな感じの。
五月
坂道につづく木々はみどり
午前のひかりがあの木をつたって降りてくる
木々のみどりも
晴れた五月のひかりも
変わらない
ずっとずっと変わらない
変わらなさのなかの懐かしさ
あれを見て
はじめの日のひかりを
思い出せるでしょう?
みどりのあいだを風がかけてゆく
ちらちらと葉がゆれる影を
あの日も見てたでしょう?
シニナッタ
シニナッタ
オメデトウ
オメデトウ
ウレシイナ
シニナッタ
光も緑も風も小さなころに感じたのと変わらない。不思議よね。どんなに年月を重ねても五月の光はおんなじように懐かしい。
懐かしさはひみつの鍵かもしれないね。
エゴが溶けて名前のなかったころのわたしたちを思い出すための。
ソウダネ
ソウダネ
オンナジ
オンナジ
イッショニ ユレテタ コトヲ
オモイダセタ カイ?
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