夕方の黒ヤギさんへ

こんにちは。あ、もうこんばんは、かしら。

お返事のお返事のお返事…。ええい、ややこしい。どうだっていいわ。


見事になげやりなお返事でしたね。いいんです、別に。あ、これ拗ねて言ってるとか曲解しないで下さいね、これ、ほーんとーうーに!別にいいんです。あ、この別にいい、も、あなたのこととかどうだっていいわい、とかそう言うことではないですからね!

はー。疲れる。

疲れますね。思っていることをただ受け取ってもらうって。わたしのほうこそヤになっちゃうな。はぁ。


なんだか笑えてきちゃった。

自分の言いたいことなんて一生伝わらない感じ。ねえ?あなたもきっとそうなんでしょう?その、彼女さんにだって取引先にだってそしてわたしにだって。伝わらない、って思ってるんでしょう。

伝わらないわよ。

伝わるわけない。

……と、言ったら反発する?それともこの一点においては同意してもらえるのでしょうか。

言葉を介しては誤解を生み、面と向かっては鎧を被り、人間てのはつくづく愚かな生き物ですね。わたしはいっそ、戦国時代の戦士になって剥き出しの自分で一寸先も見通せない現実に身を投じてみたいように思うことがあります。記憶や期待を通さない、ただいまのわたくしが全身全霊で立ち向かう。そんな感じ。

こんなことを言ったらまたあなたに「ややこしい」とか思われる…なんて言う浅ましい保身の回路も発生させる隙がないくらい、その世界では一瞬一瞬が完全なる只今なの。

どうかな。

多分小さい頃はそんな感じだったのですよね。でもあの小さい人たちもまた、その一瞬一瞬学んでしまっている。学び始めたら最後、この世界に絡めとられてゆく。

何がいいのかなんてつくづく分からないものですね。

いつか言ったでしょう。

お馬鹿さんにならなくちゃ、と。特に愛しあうときには、と。

だから、あなたにはもう一度言っておきます。

お馬鹿さんになりなさい。

わたしもそうあれるようにしよう。


お返事は、そうですね、あなたも気にしないで下さい。

またいつか、書きたくなったら書いてみて。書きたくならなかったら、それはそれで。


それでは。良い夜を。


かしこ



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