人間になる

「人間になって下さい」


え、と思う。にんげん……。いえ、わたしは紛うことなき人間ですけれど。


「あなたはいつも少し体から抜け出しているのです。そして意識が周囲にばかり向けられているでしょう。ひとのことばかり。それは人間ではない。天使とかそういう存在のあり様です」


天使ではないけれど意識の抜けは言われてみれば…。というか、それ、色々な方に本当によく言われるのですよね…。


「何か気になるものがあればすぐに“そこ”に行ってしまってるのです。それで相手のほうがあなたのところに行っても肝心のあなたの中にあなた自身がいなくなっている。それでは戸惑うばかりです」


なんと…。


「自分のなかに、あなた自身のなかにきちんと留まってご自身を、そしてご自身の感情をきちんと味わってください。生きるって、愛って、まずはそこからです。」


I love me……?


「そうです。いつだってまずはI love meからです。愛するべきひとは、まずはじめに自分自身です。そうしないとひとのことを愛せないし、ひとがあなたを愛することもできないのです」


「人間というのは、生きるというのは辛かったり切なかったりするものです。そして必ず、平等に死ぬ。そのときまであなたは、あなた自身というものを生ききるのです。すべての経験、すべての感情を自分のハートで受け止めて、折り紙のようにひとつひとつを折り重ねて、そしてそれを受容し感謝できたときにあなたの内側に留まっていた色々なものが成仏もするでしょう。片っ端から浄化して消していく、なんていう簡単なものじゃないんです。全部自分で受けとめるんです」


…………。ダメだ、本当にすぐ意識が外に抜けてしまうんですね、わたし。マインドが動きだした途端、外に飛び出てるみたい。言われてみれば。“ここ”に落ち着いていることが滅多にないみたい。


「癖、ですよね。それではあなた自身が悲しみますよ。そしてあなたを愛そうとする人も困ります」


絶望です。


「いやいや、だからって難しく考え過ぎないで下さい。誰だって、あなただってそもそもは愛なんです。ただあなたの場合は自分に興味が薄すぎてブレる、という傾向を持っているだけで。ほら。やってみて下さい。意識をきちんと自分のなかに収めて…、そこで感じる。そう。そこで想ってごらんなさい」


う……。はい(あぶない、抜けそう)。

難しいですね。


「癖がありますからね。でも難しくは考えないで下さい。“できない”という側面から見ないこと。それはそのときズレた、というだけのことで基本的には出来ていることなのです。ズレた、と思ったときは“どのように自分はズレるのか?”という風に観察すれば戻ってこれますよ」


練習が必要だー。


「ははは。まぁ長年の癖がありますからね。そしてそれが出来てから意図するのです。どう生きたいのか、これも流れに任せようなんてしないこと。きちんとご自身の意思で決めてください。」


(それが一番苦手なんだけど…)



さて、人間になるのは大変なものですね。特にわたしなどは今まで普通に人間してると思っていたので寝耳に水でショックが大きい雨降りの木曜日です。



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