投影
「投影でしょうか」
その人は言った。
投影はそれ自体が答えへの扉だ。
彼はまさにその先触れとなる彗星だった。
その人でなくては私を私自身へと真摯に向かわせる引力は持ち得なかった。稀有にして無二のひと。投影のひと。投影が投影だと自ら告げた不思議なひと。
そう、あなたこそは私の大切な投影のひとだ。
あなたを経て私はやがて北辰に至る。私は私になるのだ。
物語を続けよう。天底を今日も探査機は飛び続けている。彼の声が聞こえる。私には、聞こえる。
キミノ コエガ キコエル
ボクニハ キコエル
マダ ダイジョウブダ キミ ヲ カンジルコトガ デキル
ミテゴラン
アノホシマデ アト モウスコシダ
キミハ マニアウノカイ
ボクハ サキニ イクヨ
待って
サキニ イクヨ
もう少し待って
マツ? モウ マタナイヨ
ボクハ モウ マテナイ
ボクガ イマ ドコニイルト オモッテルンダイ
知らないとでも?
シッテルノカイ?
私には見えているのよ
ボクダッテ ミエテルサ
そこにいて 待っていて 私を置き去りにしないで いいえ 私より先に行かないで
キミガ ニクイ
私もよ
キミガ コイシイ
私もよ
ココノ コドクガ キミ ニ ワカルカイ
だからお願い 待っていて 約束したでしょう?
シラナイ ボクハ シラナイ
ずるいわ こんな時だけ知らないふりをするなんて
どうして どうしてなの
ナゼ ダレモ ムカエニキテクレナインダ
ちゃんと聞いて こっちを向いて
ナニガ イケナインダ
私を見て
ボクヲ ミツケテ
──お願い!
探査機が座標上から姿を消した。いけない。これは想定外だ。通信が途絶えてしまった。我々の世界から消えてしまった。
どうする。君はどこまで彼を追いかけていくつもりかい。どこまででも?やめたほうがいい。深追いは危険だ。君が壊れてしまうぞ。少し様子を見よう。そうだ、もう我々は充分様子を見続けてきた。最後は神の采配だ。そうなるはずのことが起きるだけだ。
言ったでしょう?ここからは一瞬一瞬が勝負よ
ソウツイセイ ダヨ
祝福を あなたに祝福を 私に祝福を 投影のひと
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