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「のあ先輩はともだち。」のスパイシーさと理人くんのアジリティに唸っている

 Ha郎♪(某ピエロリスペクト)

 季節の変わり目だがお加減はいかがだろうか。おれは読書の秋に向かいつつあるのに一向に涼しくならない気温と戦いながら日々を過ごしています。

 今日は密かに自分の中で熱くなりつつあるヤンジャン連載中のマンガ「のあ先輩はともだち。」の紹介をやっていこうと思っている。
 とはいえ紹介と言っても7月から連載し始めた新作だしおれも最近読み始めたのでちゃんとこのマンガをわかっている自信がない。紹介をしながら自分の中で作品への理解を深めたいみたいなところがある。一緒に楽しめたら幸いだ。


※本記事中では作品紹介のため無料公開中の第一話から画像を引用させて頂いています




一話からやべぇ女のスピード感ありすぎて声出る

 まあちょっとこれに関してはまず無料公開分の第一話を読んでほしい。すぐ読み終わるから。



こ、後半のスピード感がすごい!!!



 バリキャリ女子・のあ先輩、低燃費ボーイの理人くんを見ながら「あ~~これからこのふたりが社会人としての友情を築いていく半ラブコメ的なお話なのね。ヒンナヒンナ」と味わっていたら中盤からの数ページで急に激アツのおでん口の中に突っ込まれて「はあっつぅッ!!!」って杉元みたいな声出ちゃったよ。



©あきやまえんま

 いちおう言っとくけど「愛した彼氏のためにクレカ作って仕事中にフラれました!!」は買ったその日にケンカでフライングVを叩き壊したくらい衝撃の逸話だからね。ロックンローラーの才能があるよ。
 「社会人になってからの友情」「男女間で成立する友情」のお話と思わせておいて、まあそれは確かにそうなんだけどヒロインがメガトン級の重さを誇るハンパなくヤバい女という情報を急に開示してくる。請求してないけど開示してくる。かわいさと両立させながら読者を根源的恐怖でぶん殴ってくる剛腕ぶりに完全にブルっちまうね。
 おれはもうこの第一話のマジのヤバさに惹かれて一気に全話ヤンジャンアプリでコイン払って読みました。面白かったです。


まず普通に男女コメディとして良質ではある

 いきなりオタクの悪い癖で誇張表現ぎみな紹介をしてしまったが、実際のところちゃんと男女のコメディとしてかわいいし面白い作品だ。まずそれはきっちり保証したい。
 のあ先輩の超高純度に精製された重水並の熱核サークラパワーというか地雷女パワーにピリッと来るスパイシーさを感じながら毎話読み進めていったが、のあ先輩が純粋にかわいいシーンもあるし、理人くんがかっこいいなと思えるシーンもある。理人くんとのあ先輩のつっけんどんなやり取りは笑えるし、おおまかにはしっかりとラブコメの読み味がしている。大人になってからの友人関係ってなかなか作れないよなぁ、なんてところは社会人にも染みてくる。


それはそれとして様子がおかしい

 ただ、ちょっとこう、様子がおかしい。ラブコメが放っていい殺気じゃないんだよね。主にのあ先輩が毎回無意識で出してくるクリティカルヒットがぜんぶ首跳ね級の火力なんで怖いんすよ。どうしてそんな息の根止めに来るの?みたいな所作を一話につき数回ブッ放してくるのがあまりにも生存本能を刺激してくる。怖い、怖すぎるこの女。ヤバい。かわいいとは思うけど”関わってはいけない”というセンサーがビンビンに反応してくるんだよマジで。


©あきやまえんま

 作者のあきやまえんまさん的にも意図してのあ先輩をゾルディック家みたいな殺傷力した地雷ヒロインとしてデザインしていると思うので、これはあくまで全部わかっていてちゃんと計画されたヤバさだとは理解しつつもあまりにも「危険な女性」のエミュレート力が高すぎる。
 おれ自身、大学時代に所属サークルの人間関係が女性を巡って派閥割れして大爆発したのを見ているのでそのころ培われた「ヤバい!!!!!!!」という第六感がこの漫画読んでると全力で警鐘を鳴らしてくる。すごすぎ。さすがにのあ先輩ほどの高純度な無自覚サークラはいないと思うけど、この60パーセント出力くらいの人間関係破壊する恋愛距離感がヤバい人は我々の世界には存在する。解像度が高すぎる


とはいえ魅力的で身につまされる部分がある人物造型

 ただ、この作品のすごくいいところは「じゃあサークルを破壊してしまう側の人は何も悩んでないのか?」ってところにも踏み込んでる点なんだよね。
 いわゆる地雷系とかサークルクラッシャーと呼ばれる人たちも、ある種のコミュ障であり男女の距離感が分からなくて悩んでいる…という側面にも触れているわけ。

©あきやまえんま

 のあ先輩は自分の天然のサークラパワーや恋愛依存症を「キモさ」という形で断片的に自覚しており、自分を良くしようと努力し、仕事に打ち込むというかたちで社会と折り合いを付けようとしている。これ自体は非常に立派な心構えですよ。「異性への依存の度合いが強い」「男女間はもうちょっと距離感とったほうがいい」という本質にまではたどり着いてないけど、ある程度は気がついていて行動を起こしている。
 この人もそういう人間関係の悩みを持っているんだな、という置き換え方をして考えてみると、確かに「恐るべきサークラ」ではあるにしてもこの人もおれたちみたいに「人との付き合い方がわからない人」なんだな…というところでシンパシーが出てくる。ああそっか、そういう(異性との付き合い方がうまくない)ところはおれたちにもあるよね、と共感できてくるのが良い。


©あきやまえんま

 仕事ぶりとか言葉遣いとかにしても、相手に嫌な思いをさせないように気を遣えてる。理人くんが感じた通り、いい人ではあるんだよね。的確な指示を出すし、相談すれば仕事上のアドバイスもくれる。
 けっして嫌な人というわけではない。嫌な人じゃないんだ。ただちょっと、その………若干、本人の性質が足の付いた大タル爆弾GというかN2爆雷を抱えて突っ込んでくる零号機のジャンルに入るってだけでな…………。


カンストしたアジリティで即死攻撃を躱し続ける理人くんがすごい

 のあ先輩もすごいんだけどこのマンガは理人くんも相当すごいし良いやつなんだよね。


©あきやまえんま

 のあ先輩が仕掛けてくるクリティカル攻撃というか特大ファンブルを全部絶妙に躱して友人関係を続けている理人くんがマジですごいことになっている。AC値が究極まで下げられた裸忍者とか体幹が全然崩れない若い頃の葦名一心みたいな回避力を発揮するので読んでいて不安がない。
 のあ先輩とは出会うべくして出会ったみたいな組み合わせの相性なんだよな。自分の振る舞いとスゥームひとつで人の世を破壊してしまうので己を縛めているパーサーナックスに竜の魂を持つドヴァーキンが出会ったがごときつり合い方をしている。


 我々読者はのあ先輩の言動にかわいさを感じつつも、同時にその行いがあまりに地雷過ぎてハラハラしたり恐怖したりするので下手するとのあ先輩に不快感を覚えかねないところがある。しかしその点この作品が上手なのは省エネ極めすぎて他人のあしらい方に関してはプロ級の理人くんが相手してることで、奇跡のバランスで両者の格闘ゆうじょうが成り立っており嫌な気分にならないのがすごい。

 本作はコミュニケーションという形式で繰り広げられる一種の格闘漫画ではないか、と思えなくもない。
 のあ先輩がつい繰り出してしまった高速ジョルトブローに対して理人くんは「へえ……」と軽くスウェーで流したり「距離が近いですよ」とか「いきなりキモいですよ」と鉄壁のシールドをジャスガのタイミングで出していく。だけれども、のあ先輩が本気で困っていたりすれば助け船を出すなどのイケメンムーヴでボディーブローを入れていくことも忘れない。一見振り回され押される側でありながら、かなり理人くん側が有利に進めている試合運びとなっている。ゆえにどちらかというと優勢に立っているのはかなりまともな神経をしている理人くんであり、理人くんがビール片手に「またやってんぞこの人」くらいの雑な温度感で必要なツッコミをしてくれるのでのあ先輩のやらかしにあまり不快感が湧かない。理人くんがいい感じにジンガ踏んで避けているのでジョーゴで収まってんなみたいなイメージになる。

©あきやまえんま

 のあ先輩は悪気がないけどスコリッピのローリング・ストーンズ並に追尾性が高い即死攻撃を放ってくる悪癖があり、対する理人くんは驚異的にマン・イン・ザ・ミラーの扱いが上手かった場合のイルーゾォなので毎回絶妙な力関係でスタンドバトルが成立しているのではないかとおれは思っている。のあ先輩の遠隔自動操縦型スタンドが悪辣な攻撃を放ってしまった場合でも理人くんが自分の世界に立ち入られすぎることを「許可しない」神テクで回避するので非常に安心して読むことができるという寸法だ。あれ、コレ能力バトル漫画だったっけか……?


一癖も二癖もあるが重さが笑えるゆるコメディ

 そんなわけで繰り出してくるあざとさの火力がエスカトンジャッジメントくらい激烈に高い女会話の体捌きが葦名出身かと思われるほど異常にうまい男がゆるゆると遊ぶ「のあ先輩はともだち。」を紹介させてもらった。
 毎回のあ先輩によってピリッとした緊張感を味わいつつも、理人くんが見事に料理していくのでちゃんとコメディとして成り立っているバランス感覚が面白い。新しい連載ということでこの先どんな展開が待っているのか、そして理人くんがどんな会話の格闘テクニックを見せてくれるのかが楽しみだ。

 ちなみに単行本1巻が10月19日に出るらしいので、単行本派はそちらをチェックしてみると良いと思う。
 作品の温度感が好きなのでこのままいい感じに続いていっぱい単行本出てくれたら嬉しい気がする。


©あきやまえんま


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