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その目カーリーの目 Mouthwashing感想EXTEND

柳田國男です。
折口信夫です。

父は神道学者をやっておりました。
二人でアマガミSSの全話レビューをやっていきます。

願わくは之を語りて、平地人を戦慄せしめよ……

アマガミSS 第一話 レビュー / The Great Underground Home Page



 Mouthwashingの記事を書いてからはや一週間…

 遊びたくて遊びたくて仕方ないのにダウンロードしたStar Fetchersがなんらかのバグで起動せず、悲しみに暮れながら撮り溜めたシマーちゃんの顔芸スクリーンショット集を眺めて元気を出したりしていた…。おれもいつか死んだら顔面を炸裂させて人を笑かすネクロマンサーになりたい…。


 とかなんとかやっているうちに前回書いた感想記事が爆裂拡散され、生まれて初めて自分の書いた文に投げ銭をいただいたり、いつも読んでるマンガの作者さんに取り上げられたりといろいろたまげる出来事が起きてソワソワしている。
 評価していただいている身分でこんな事言うのアレなんすけど、みなさんよくあんな気分悪くなる記事を最後まで読んでスキまで押しましたね。物好きなんですか……?(失礼)

 まあそんな冗談はともかく、数々の身に余るお褒めの言葉をいただき誠に有り難い限りだ。おれの記事がいくらかでもMouthwashingの売上に寄与していたら幸せだなと思う。

 アッ!まだの人はMouthwasing買ってね!ウィッシュリストに入れといてお金あるときに買うでもいいから!よろしくな!!!



 さて、本記事では前の感想記事を書いたあとになんとなく考えついたことを追加でのんべんだらりと書いていくつもりだ。
 おれの好きな言い回しを引用すると"The Searching for Deep Meaning Syndrome"というのか……アポフェニアめいて重箱の隅を楊枝でほじくっておるだけの記事で……考察というのもおこがましい、その場の思いつきの当て推量で適当言ってるだけなので適当に流してほしい。スウォンジーが酔っ払ってなんか言うとるなくらいの感じでお願いします。

 あと当たり前ですけどネタバレが含まれているので各自自衛してくださいね。よろしく。


カーリーの見ていたクソ忌々しい黄昏

 今回おれが唱える珍説、こじつけ、石炭のモチーフは「カーリーが笑った理由」についてである。

 劇中で衝突事件が起こったあと、全身包帯グルグル巻きのバーンドマンと化したカーリーは何も喋れなくなってしまい、うめき声を上げて安眠を妨害する小粋なマスコットキャラクターになってしまう。このカーリーが何も言えないという設定は非常に重要で、事件前の全ての情報を握っているカーリーが何も明かせないからこそジミーはやりたい放題でき、しまいにゃ勝手な想像を押し付けて救いを求めだすことになる。そして我々プレイヤーですらもカーリーの心境をあくまで推理することしかできず、真実は藪の中……になるのだが……。


 カーリーが事故後に一回だけ声を上げて意思表示をするシーンがある。それが「ジミーが銃を取る」瞬間だ。あれだけ頑なに口を開かなかったカーリーがこのときだけは明確に大笑いをするので、ここは結構大きな意味があるのではないか、というふうに思われる。

 というわけで、これについておれが好き勝手に岡田斗◯夫ごっこをやってやろうというのが今回の魂胆です。ちょっとしたお遊びの与太話として付き合ってほしい。


カーリーの置かれている状況について

 カーリーは衝突事故で負った四肢へのダメージと、おそらくへし折れたパイプから吹き出した高温の蒸気で全身をやけどしたとみられ、寝たきりの状態になっている。薬が上手く飲み込めないことや喋れないことについても、喉が潰れているなどと考えるとしっくりくる。
 さらには、耳も聞こえなくなっているのではないかという懸念がある。それについては魚がビチビチ跳ねるゲームが関与しているのだが、こちらの方の記事が詳しいので読んでみてほしい。(ちなみにアーニャの受けた性被害が透明化されている構図や、アーニャが何を考えて立てこもったかについても順序立てて考察しており、面白い。おれのたわごとよりよほど必読の記事である)


全然聞こえてないとするとジミーがええカッコしてるこのシーンがだいぶ面白くなる

 つまりカーリーは、事件前についてはことの成り行きをよく知っているが、事件後の出来事については目玉のキービジュアルよろしく医務室で起きていることからの視覚情報しか判断材料がないということになる。
 目玉でしっかりジミーの動きを追ったりできているのでなんとなく意識自体はあると思われるが、耳が聞こえないとなるとジミーとアーニャのやり取りなどもわからず、体の痛みを置いておくにしても事故後のカーリーは相当混乱していたのではないかと思われる。あるいは、激痛もあいまってもはや人としての思考はできていなかったのかもしれない……。

 しかしここで、これまで見た情報をカーリーが思考して咀嚼していたのではないか?と仮定すると、ひとつの線が繋がってくる。


カーリーのタイムライン

 それでは事故後の流れをカーリーの視点でざっくり並べてみよう。


①ジミーがなんか知らんが自由行動している

この会話も全く聞こえていないとすると後ろで見てるカーリーがだいぶ面白い

 まずこれである。カーリーからするとこの時点で結構「?」が頭の上に浮かんでいるはずだ。
 事故起こしといて平然とほっつき歩いとるし、なんかあんだけ気まずい史上最悪の受胎告知受けたはずなのに普通にアーニャと話しとるし、どういうことなんや?と思っていそうなところ。カーリーとしてはかなりいろいろ考えていた数ヶ月ではなかろうか。
 ジミーがもし「自分がやりました!」と正直に話していたらスウォンジーあたりにキツめの折檻をくらって営巣にぶち込まれていそうなので、カーリー的には「ガチ土下座して運良く赦してもらってアーニャ含む全員に協力しているか」「すべてを黙ってすっとぼけているか」のどちらかっぽいな……で判断を保留しているものと思われる。相棒が心を入れ替えたことを信じたいという気持ちもあるだろうし、まだ状況が詳しくはわかっていないものと推察される。


②ジミーがなんか言ってる

 アーニャと喧嘩して頭を冷やした直後あたり。一周目の初見プレイヤーからするとジミーが反省してカーリーに詫びているように見えるいいシーンである。その後、ジミーの本当の狙いは「カーリーに詫びる自分」に浸ることだとわかる醜悪な場面でもあるのだが……。

 カーリーが「えっ ジミーがなんか言うてる……」しか感じていなかったとするとめちゃくちゃ面白いシーンになってしまうので恐ろしい。ジミーさん!!なんか感動的な雰囲気醸し出してますけどその人なんも聞こえてないですよ!!ジミーさん!!!
 冗談は抜きにしても、真面目な話、耳が聞こえていないとするとジミーからの謝意がマジで1ミリもカーリーに伝わっていなかったということになるので、ジミーが勝手に許された気になって自己満足していたナルシズムがなおさら重たくなってくる。許す許さないの意思表示ができない以前に、そもそもカーリーからはジミーが反省しとるのか反省しとらんのか声が聞こえてないので謝られていることがわからないというフェーズにいることになる。
 ジミーからの語りかけが何一つ通じてないので、いよいよ勝手にジミーが「はい!オレは謝りました!」というポーズをしているだけになる。伝わらないって怖いね……。


③アーニャの立てこもり発生

 カーリーもこれはかなりヤバいんじゃないかと流石に察するであろう一幕。

 プレイヤーはカーリーとアーニャの会話やコックピットでのスウォンジーの密談など、神の視点から怪しい証拠がいくつも手に入るのでうっすら諸々を察し始めることができるが、医務室から動けないカーリーはここで悲劇を目撃することになり、ジミーとアーニャが実はなんの関係修復もできていなかったことがやっとわかる。
 このあたりで、カーリーのジミーへの疑念がかなり強まったのではないかと思われる。これまではわりとふたりが平然と会話していたので(カーリーからは)見かけには問題が解決したように見えていそうだったが……。アーニャの悩みを解決することができなかった自分の無力さを噛み締めたことだろう。
 まあでも身動きできない自分の横にずっと死体転がってるの嫌すぎるな…DDLCのYuriルートか?

 とはいえ、この時点でならまだカーリーからすると「ジミーが詫びたうえでアーニャが唐突に精神を持ち崩した」というセンもあり得るので、好意的に解釈するならギリギリでジミーを信じられなくはない土俵際とも言える。


④ダイスケが傷だらけでダクトを通ってくる

 ダメ押し。ダイスケが血を流しながらダクトを通ってくるのを目撃する。

 ダクトが危険だというのは過去のカーリー編でもわかっていたことなので、スウォンジーはまず通らせないと予想がつく。スウォンジーが手を貸していた場合、なんとしてもドアをぶち破る方向に行くはずだ。状況証拠からしてジミーが焚き付けて通らせようとしたことがわかる。
 カーリーからしてみるとジミーがアーニャを助けようとしたのか、カーリーが閉じ込められる状況を打開したかったのかということはいくらか理解できるが、自分で身体を張るわけではなく船員を怪我させたジミーの失態が目に付く。


⑤ジミーが銃を取る

 ここでやっとカーリーの中ですべての糸が繋がる。

 どういうことなのか。ここでカーリーにとって「ジミーが銃を取る」ということに複数の意味合いがあるので、それぞれ説明したい。

 まず、ジミーが箱のロックを外して銃を取り出すためには、船長のコードスキャナーを使って番号を読まねばならない。これまでは医務室の外でスキャナーを使っていたのでともかくとして、ここで決定的にスキャナーを使ったことがカーリーにも伝わり、ジミーがすべてを伏せてヌケヌケと船長代理をやっていたことが確定する。

 次に銃を使う必要がある状況。これはクルーが反乱を起こしたときなのだが、ジミーが銃を取るということはジミーが周囲への信頼関係を構築していなかった、つまり詫びを入れたり自分が犯人だと名乗り出ていなかったことを意味する。当然、先程のアーニャのことも解決していなかったことがわかってくる。本当にすまない、お許しくださいと思って頭を下げている奴が周りに銃なんか突きつけるはずがないのだ。
 ダイスケが大怪我をしているのはカーリーも見ている。怪我人に銃を使う必要はない。消去法で「スウォンジーがジミーを殺そうと反乱を起こしたので銃を持ち出した」という状況まで絞り込むことができる。


 よって、銃を取るというワンアクションで最後のピースが嵌まり

  • ジミーが真相を黙って船長代行をし(おそらく自分に真犯人をなすりつけ)

  • アーニャに対して詫びも責任もなく決裂し

  • ダイスケを怪我させてスウォンジーの怒りを買い

  • ついに何一つうまくできず、銃で無理やり解決しようとした

 という、事故後のすべての出来事がカーリーの中で結像する。


 内心がわからないのでカーリーの笑い声の真の意図はわからない。あるいは、複数の意味を内包した哄笑なのかもしれない。ジミーを笑っているのか、自身の落ち度を笑ったのか……。
 しかしおれとしては、全ての線が繋がり最悪の事実がわかってしまったことで「そうだったのか」と合点して思わず笑ってしまった(もはや笑うしかなかった)のではないか?と見ている……。


より最悪な結末

 結局のところ何が言いたいのかというと、これらカーリーが視覚だけで事件の全体像を把握したと仮定すると、プレイヤーとジミーだけでなくカーリーも全ての真実を大方知っていることになり、なおかつジミーの詫びの言葉は本当に表面上すらも一切届かずに「ジミーが何をしたか」という悪行だけがカーリーの胸の中に残っていることになる。
 よって、カーリーからジミーに対しての赦しは万に一つもなく(そもそも詫びられてもいないことを許すことは出来ない)、カーリーからジミーに対して一欠片の温情として向けられていたであろう友情は最後の最後に粉々に砕け散ったであろうことは想像に難くない。

 ラストのシーンで、重ねてジミーはカーリーに詫びる。だがカーリーには何も聞こえず、永遠にそれが届くことはない。永遠に……。






というシリアスで締めたかったんだが公式の様子がおかしい


あのさぁ…………

お前精神状態おかしいよ………


 Wrong Organちゃんさぁ、ひどいよ…なんでシリアス壊しちゃうの?悲しいじゃん……

 今度は俺もちゃんと悲痛なシメで記事を書き上げるつもりだったのによぉ…?お前が鬱ゲーを丁寧に作り込んでおれらを絶望させてきたんだもんな?
 なのに、なんでこんな真似すんの?クソmeme投稿されたらお前のこと助けてやれないよ…





もう笑うしかなくなっちゃったよ…





<了>

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