明(あける)

生き残り達が道場をこよなく愛するニンジャヘッズ。基本読み専につき。

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最近の記事

うろくず

「はい、今日のご依頼はですねー、マンションの管理者さんからでして」  部屋の前の通路で動画サイトにUPする挨拶を撮る。主に喋るのは入社2年めのミネちゃんだ。 「んでー、借りてたご家族と連絡が取れなくなってー、私たちゴミ屋敷バスターズにご依頼いただいたわけですね〜」  ミネちゃんのほにゃほにゃとした喋りと笑顔。彼女はドアを開けて部屋の中へと入っていく。俺は撮影しながらそれを追う。  嗅ぎ慣れた異臭がマスク越しに鼻腔を襲う。慌てたように遠ざかっていくカサカサ音。カメラの視

    • iphoneの下取りに手間取った話

       このたび、iphone14PLUSを購入しました。  その際のトラブルっぽいことと解決への経緯を備忘録的に残しておきます。  似たようなトラブルで検索した人の役に立てばイイなと思ったのですがあまり役立たないかも。  3年前、私はiphone12miniを購入しました。そしてすぐに後悔しました。思ったより画面が小さかったからです。(”mini”を買っておいてなんで小ささに落胆しているのかについては、また別で書くかも知れません大した理由ではないですが)  ともあれ、ようやく

      • 寄生者、あるいは人生代替者の帰還

         ――契約の完了が確認されました。帰還の許可が下ります。おめでとう。  どうもおかしいな、と思いながら俺は深夜の入院棟の廊下を裸足で歩いている。薄青く暗い常夜灯、微かに聞こえるピッ、ピッと言う計器の電子音。慣れ親しんだ夜の病院の気配。  なんで俺はこんなところをうろついているんだろう。帰らなくては。そうだ。帰らなくては。……どこに?  俺は頭を傾けた。こうしてみても何ひとつ浮かばないが、とりあえず考えるポーズをとっている。誰が見てるわけでもないのに。数十秒そうしてみた。頭の

        • 彼女のいとしき脳下垂体

             エイミは死んでいた。ぼくがこの部屋に入ったときから分かっていたことだ。  大好きな彼女はいつものくつろぎソファで上下逆さになっていた。足は背もたれに、頭は床に。爪先にパンダスリッパが片方引っ掛かっていた。  眉毛から上の部分は切り落とされて、ここからでも頭の中身がよく見える。  エイミの中身はきれいに空っぽになっていた。    ぼくの両眼からはらはらと熱いものが溢れ出す。頭の中で何かがぶつりと途切れたのが聞こえ、足が萎えて前のめりに突っ伏してしまう。かわいいピンク色の

          屍人守

           ※この記事は逆噴射小説大賞に間に合わなかった800文字小説です。つらい。  カタン、キィ。カタン、キィ。  夏菜子が歪んだ乳母車を押していく。色褪せたサンダルをつっかけて。  真っ白いワンピースとささくれた麦わら帽子。  真昼の港通りに人影はなく、吹き抜ける潮風が夏菜子の長い髪を揺らす。    夏菜子はこの町の最後の住人だ。  「俺」はこの町の住人を墓に入るまで見守るもの。  だが、彼女らはどういうわけか、死んでも動き続けていた。  ※※※※※  その日、太陽が二度瞬

          「アジェンダ・ディセント」感想羅列

           突然のサワタリ・オリジン・アンブッシュ。  あまりのことで思わずついったアイコンがお墓入りまでしてしまいましたが、そろそろ奇声ばかりでない感想が書けそうなので、書いてみようかと思います。 ・冒頭の倦んだ生活の描写の数々は、しかしまだ娯楽も友人も恋人も居て、マシな頃の生活だった。これはこの頃から既に疲労していたのか、それとも現在の摩耗した日々によって書き換えられたことなのか。 ・低脂肪高蛋白合成バター そもそも牛乳から脂肪分を取り出したのがバターなのに、この本末転倒っぷり

          「アジェンダ・ディセント」感想羅列

          フライング・ベイビー・ブルース

           空がどこまでも青い日だった。  その日生まれた赤ん坊の背には、みな白い羽が生えていた。  愛らしく、ちいさく、いとけない羽だった。  濡れた羽が乾く頃、赤ん坊たちは一斉に飛び立った。  生まれたばかりの赤ん坊たちは、まだ笑うことも知らず、おわあおわあと泣きながら青空へと昇って行った。  恐れ、嘆き、喚き散らす大人を顧みることなく。   あの事件からちょうど40年が経つ。  つまり俺もちょうど40だ。  不注意な鴨撃ちに撃ち落とされた不運で幸運な赤ん坊は、くたびれた中年男に

          フライング・ベイビー・ブルース

          片羽葬儀社のお仕事

           俺の仕事は型嵌め業だ。  何を型に嵌めるかって言えば、死体だ。  例えば轢死体。葬式に出すにはちと見苦しいって死体もあるだろ?  そんなときは特殊な鋳型を用意して、死体をそこに押し込んでやる。  そうすりゃ、どんなにバキバキに曲がった死体だろうと、ぐちゃどろに飛び散った肉片だろうと、見た目だけは元通り。  無論、完全に元に戻せやしないが人の輪郭になってるだけで有り難いって遺族も多いのさ。  だが、今回はミスった。見積もり損ねちまった。   型にブチ込んで開けてみれば、腕一

          片羽葬儀社のお仕事

          血塗られし死闘! ベンダーミミック対バイオニンジャ

          (※このテキストは、ニンジャ収穫祭にて発行された『ベンダーミミック合同』に寄稿したものです。少しだけ加筆修正済。)  ——そいつは俺を待っていたのだ。    雨上がりのジャングルにて、私は「それ」と遭遇した。まるで場違いな癖に、そこにいるのが当たり前のように佇んでいた。  派手な蛍光緑色に塗装された直方体の筺体は全体的に薄汚れて、こびりついたホコリは雨でも洗い流しきれていない。表面には端々に赤い鉄錆が浮いている。  バリキドリンク。タノシイドリンク。ザゼンドリン

          血塗られし死闘! ベンダーミミック対バイオニンジャ