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締切を設定します!

 編集者の役割のひとつに、「締切を設ける」があります。特に、雑誌などの定期刊行物においては文章やイラストなどを発注する必要が常にあり、締切の設定は最重要のミッションかもしれません。当然、「原稿、入らなかったわね」では済まされません。印刷して製本する工程から逆算して、なるべく余裕を持った進行にて、締切は設定されるべきです。出版に限らず自明なことですが、お仕事には納期というものがございまして、それに間に合うよう成果物を提出することが、大人というものです。

 とはいえ、牧歌的な佇まいを残している出版業界です。出版契約書なるものも存在していますが、だいたいは刊行する直前にバタバタと交わされることが多いと思います。主たる項目は、印税率や部数、また版権使用に関することなどで、肝心である内容について、例えば、「全世界が感動する」かとか、「10ページに1回は泣ける」とかいう契約ではありません。「面白い作品にする」ことは当たり前ですが、それは作家も最初から保証できないことです。

 そんな中で、大事になってくるのが口約束です。曖昧なイメージをふわっと伝えることで、仕事をしている感じにしていた僕です。そのふわっとをカタチにしてしまう作家とは本当に畏れ多い存在ですが、そんな相手に対して唯一、締切だけは、決して破ることが許されない最高規律でありました。そんなに重要であるなら、締切についての誓約書を作ればよい気がしますが、そこは人情といいますか、ものづくりに対する敬意のようなものを大事に扱う気配の中では、やはり口約束の域を出ないのです。

 すると、作家と編集者との間で、攻防が繰り返されることになります。こんなことがありました。あるバイク好きの作家と鈴鹿まで取材に行きました。現地でたまたまスポーツ誌にいる同期の編集者と一緒になり、彼のスタッフが運転する車で、一緒に東京まで帰ることになりました。ちょうど、小説の新連載の初回を決めることが努力目標の旅行でした。僕はその車中において、ずっと作家に締切の話をし続けました。雑談をしながらも、作品の話につなげて締切を提案する。それをスルーされ別の話題で盛り上がれば、そこに小説のヒントを見つけて、締切の話まで引き戻す。これを繰り返しつつ、なかなかの長距離を密閉空間が走るわけですから、まるで犯人を疲弊させ自白を迫る刑事のようなやり口です。その時は、犯人自白法がうまくいきましたが、この強硬な手段でよかったのか、やや疑問が残るところです。当時は切羽詰まっていたようで、同乗した同期も苦笑していました。

 いきなり脈絡なく言いますが、二丁目文芸部が作る同人誌の原稿の締切は、8月10日(水)にします。部員にだけ流せばよい情報ですが、振り返ってみると、締切という言葉にはいろいろな含みがあり、悲喜こもごものドラマが展開される可能性に富んでいるようです。ここから、何か面白いネタが生まれるかもしれないと思いました。

 コミティア出展は9月4日です。締切までちょうど4週間ありますし、これで、余裕を持って進めることができそうだと信じています!


<決まったこと>
・すべての原稿の締め切りは、8月10日(水)


二丁目文芸部
二丁目文芸部は、バー「A Day In The Life」の毎週水曜日に活動しています。

A Day In The Life
東京都新宿区2-13-16 藤井ビル203

毎週水曜日、19時より営業中です!


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