無法地帯で運転奮闘記

わたしたちが暮らすドミニカ共和国は、人口10万人あたりの交通事故死亡者数が世界一という不名誉な記録を保持するめちゃくちゃに運転が荒い国だ。

以前住んでいたトルコも相当に荒い運転をするなと思っていたけど、この国はそんな比ではない。

ウィンカーを出さないのは当たり前。車線だってあってないようなもので、2車線のところがいつのまにか3車線になってたりする。運転をしていると後続車やバイクが爆速で車と車の間を縫うように走り抜けていくので、「カーチェイスかい！」と独りツッコミを入ることもしばしば。

ただでさえ交通渋滞が酷いのに、秩序を保とうとせず無茶な割り込みなどをする車が多いのでカオスになって更に渋滞が酷くなる。この国には道路上で「思いやり、譲り合い」という言葉は基本的には存在しない。自分が一番先に目的地に行く、それこそが己に課せられた使命のように、みな我先にと運転している。

衝撃的だけどこの国でよくある話を。例えばスーパーの駐車場から通りに出るために一時停止してタイミングを伺っているとする。出ようとしたその瞬間、後ろで待っていたはずの後続車が平気でわたしの前にきて先に出てしまうことは、超超頻繁にある。

予想だにしないところから平気で車が現れるから、油断も隙もあったもんじゃない。交差点とかでも左折•右折専用レーンで信号待ちをしていると隣の直進レーンから曲がってきたりするから、道路標識や信号も過信してはいけない。

ウインカーを出さないのはもちろん、ブレーキランプが壊れてつかないままの車もたくさんいる。路肩に停める時にハザードをつけない車なんて日常茶飯事。猛スピードで走る車に、急に止まる車。突然現れる巨大な穴。倒れている木。溢れ出る下水。ここはマリオカートのコースですか？？？

更に、バイクの運転マナーはもっと酷い。

爆走、逆走、歩道を走る。信号待ちは停止線手前の最前列にバイクがずらっと並び、まだ赤信号であっても少しでも隙があれば発進する。とにかくやりたい放題の無法地帯。渋滞で車が止まっている間をまあまあな速度ですり抜けていくので、サイドミラーにゴツっと当たっていく。最初はショッキングな光景だったが、今では「またかい。まあ中古車でよかったな。」なんて思っている自分が怖い。

こんな感じで、信号待ちでは前に前にバイクが詰め寄ってくる

夫が同僚から聞いたところによると、この国において交通ルールは「遵守するものではなく、respectするもの」なんだそうだ。なるほど。いや、納得するとこじゃないんだけど。

飲酒運転率もすごい。

ガソリンスタンドにあるKIOSK的なお店には必ずビールが売っていて、空になったビール瓶を持った運転手が降りてきたかと思えば、また店で買ったビールを片手に乗って去っていく。

街中の至る所にあるコルマドと言われる商店では、車の中から店の人に「ビールくれよ！」とお金を渡しつつ声をかければ、蓋の空いたビール瓶が差し出されそれを片手に去っていく。運転手が飲みながら。

普通に目の前で繰り広げられるその光景に、もはや笑うしかない。それは事故るでしょう。運転が荒い国は数多くあれど、交通事故死亡者がとんでもなく多いのはこれが原因だと思ってる。

酷い交通違反にしても飲酒運転にしても、警察はもはや機能してない。取り締まろうにも数があまりにも多すぎて追いつかないから、らしい。それでいいんか…？

たまに気が向いたみたいに飲酒検問的な事をしているのを見る。ある日のニュースでは、飲酒検問したところ5人に1人が飲酒運転していたそう笑。

コルマドで配達によく使われる、日本で廃車になった郵便局のスーパーカブ（そしてそれに挟まれている我が娘の自転車 笑）

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そんな場所でかれこれ2年間、なんとか無事故でほとんど毎日運転をしている。こんなところよく運転してるよなぁ。運転しながらたまに自分で自分に感心する。

最初はこんなところで運転なんか無理！絶対無理！！！とビビっていたけど、超車社会＆治安面からいっても子供の学校の送り迎えや買い出しに車は必要不可欠。避けては通れない。ってことで、この国での私の職務は我が家専属ドライバーとなったのであった。

最近では夫が助手席に乗った時には「いや〜素晴らしいドミニカ走りをするね〜」なんて揶揄されるくらいすっかりこちらの運転仕様になってしまっているらしい。自分でも、一時帰国の際に日本で運転すると、つい前を走る車との車間を詰めすぎたりしていることに気が付く。危ない危ない。

でもこの四方八方から車やらバイクやらが飛び出してくる中で運転していると、だいぶ運転技術は上がったし、運転中は全集中しているので感覚が研ぎ澄まされたように思う。

それに夫の車好き、しかも「日産のセダン、北米仕様車（北米でしか流通しておらず、日本で販売していない車）に絶対乗りたい」という謎のこだわりに押され中古車を購入したため、まあとにかくトラブル祭り。その度に修理業者に持っていき、全然分からない車関係のスペイン語と格闘している。おかげで私のスペイン語スキルは夫よりかは上だ。

本当に我ながらよくやっていると思う。誰も褒めてくれないので自分で褒める。よくやってるよ私！！！！お疲れさま私！！！！

これからも安全第一で運転頑張りましょう。

事故にあったまま、応急処置をしたまま走っている車も珍しくない。バンパーが外れたまま走る車も日常の光景。