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シャラの木

梅雨の晴れ間。
庭のヒメシャラがぽたぽたと落ちた。シャラは夏ツバキともいって、ツバキではないが花が似ていて、落ちる時の様子も似ている。

ずいぶん昔だが、この季節、実家に帰ると夏ツバキが咲いていた。木の幹がしっかりしていて、つやがある、いかにも硬そうな木なのに、真っすぐに伸びた木の先に、純白の優し気な花がびっしりと咲いていた。
花の名前を聞くと、父か母か忘れたが、「夏ツバキ」別名はシャラの木だと教えてくれた。父が気に入って植えたものだと思われる。

数年前、実家のシャラの木を思い出し、庭に植えたいと思い、息子に相談したら、「シャラの木は大木になるのでヒメシャラがいいんじゃないか」と云うことになった。ヒメシャラにしたのは正解だった。
翌年から可愛い小さな花を咲かせて、風や雨にあたると、ぽたぽたと落ちた。落ちた花弁は変色して土に還った。
夏はこんもりと葉が繁り、涼し気な日陰を作ってくれる。
秋が深まると徐々に色づき、真っ赤に染まる。この時期がヒメシャラは一番美しいと思う。
寒くなる頃には落ち葉で埋もれるが、枝からは新たな芽が育まれている。
春になると、やわやわと芽吹いていく。その瞬間もよい。





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