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負けを知る者の強さ

ドラマ「初めて恋をした日に読む話」(以下、はじこい)が熱い。
自他共に認めるドラマ好きなわたしは今クールも8本ほど観ているが、「はじこい」にダントツにはまっている。前クールの個人的ベストドラマだった「中学聖日記」と同じ枠で、「教師と生徒の恋」というテーマも重なる。ただ前作はそれをシリアスに描いた展開に沼落ちしたのに対し「はじこい」はラブコメテイストなので、第2話あたりまでは気楽にキャーキャーツッコミ入れながら楽しめる作品になるなと思っていた。

ところが。
回を重ねるごとに登場人物たちの魅力に、発する言葉に、ストーリー展開に…どんどん引き込まれて、とうとう第4話で「中学聖日記」同様に沼落ち状態となった。見事に完敗……いや、うれしい誤算である。

そんな訳で第1話からツイッターで感想ツイートを連投していたのだが、回を追うごとに言いたいことが増えてどんどん長くなっていったので、第7話分からはこちらのnote上に綴ることにした。始めたばかりのnote、早速有効活用してみようと思う。
※以下、第7話のレビューへ

順子を想うライバルである匡平と雅志を焚きつけながら、自分は順子に改めて今の気持ちをまっすぐ告白する…山下くんが本気を出してきた第6話。
第7話ではそんな山下くんが引き続きぐいぐい順子へのアプローチを仕掛ける中、順子は受験まで半年を切った匡平を東大受験専門塾の「花恵会」に送り込む。

自分は理数系が弱い。今のままでは匡平のためにならない。どんな手を使っても、匡平を東大に現役で合格させる…ただひとつ、匡平と共に目指す目標を実現させるために。情に流されず、シビアな判断ができるようになったと塾長にも講師としての成長を認められたが、確かに順子は匡平と出会って人生を好転させていた。

ただ順子の場合、「新しい自分に変わった」というよりは「昔の自分を思い出し、その延長線上に描いていたなりたい自分の姿に近づいた」という方が正しい気がする。今回初めて明らかになった順子の高校時代のエピソード――いじめを受けても相手にせず、ただひたすら自分自身とだけ戦っていた…順子はそんな強くてカッコいい女子高生だったのだ。そう考えると、順子の鈍感さは単に天然なのではなく、常に自分自身と必死に向き合っている結果なのかもしれない。

第7話のキーパーソンは、花恵会で匡平の担当講師となる百田朋奈。UCL卒業の27歳、東大合格率8割を誇る実力・人気を兼ね備えた講師――しかしその正体は、順子へのいじめの起因となった高校の同級生だった。雅志に振られ、その雅志のそばにいる順子への嫉妬が引き起こした行動だったが、彼女はその後の人生も上手くいかず…必死の努力でようやく人気講師の座に登り詰めた時、順子に再会して高校時代の負けを取り返そうとする。しかし年も学歴もごまかし取り繕って生きてきたツケが回り、結局講師もクビに……上手くいかない人生に逆戻りしてしまった。

順子も百田も共に挫折を経験し、思い通りにならない人生を歩んできたはずなのに、今の二人には大きな違いがある。それを見抜いていたのは、他ならぬ匡平だった。「生徒を盛り上げ、優しくして、負けても持ち直せるようメンタルサポートする」という指導方針を持つ百田に対し「全部計算なんだ」と言い放ち、「春見は強いんです。あいつは計算なんか全然できない」と、愛おしそうに語る…順子が今までどれだけ自分と本気で向き合ってくれたか。講師である前にひとりの人間として、素のままでぶつかってくれる順子にどれだけ救われてきたか。匡平の溢れる想いが伝わってきて、思わず涙が零れた。

匡平の言う通り、順子が強いのは負けたことがあるから。そしてその負けを認め、失う怖さを知って、それでもそのままの自分を受け入れて次に進もうとしているから。負けたことを引きずり、自分自身を偽ってしまった百田との決定的な違いだ。

負けを知る人間は強い。そこからどう這い上がったかで、その後の人生が大きく変わることもある。わたし自身も挫折を繰り返した人間だけど、それらの経験はどれも自分に必要なものだったと今は思えるようになった。かと言ってその都度人生が好転している訳ではなく、残念ながらこじらせているところは多々あるし、守りに入ってしまうこともあるけれど…それでも多少のことではへこまない強さは持てるようになった。だから順子の言葉や行動には、いちいち共感してしまう。

「必要とされなくなるのが先生」「最後に手を放して見送るのが仕事」
そう言った順子の言葉を受け、匡平は「先生がいくら手を放しても、俺、何回でも掴みに行くんで」と宣言する。17歳なりの、精一杯の愛情を込めて。人気講師の百田のアプローチにも一切心を許さず、一途に順子を想い続ける匡平は素敵だ。そして20年近く片想いを続ける雅志も、高校時代に順子に告白し、十数年ぶりに再会して想いを再燃させた元ヤンバツイチの頑張り屋さん・山下くんも、それぞれ違う魅力を持っているのが「はじこい」の素敵なところ。メインの4人だけでなく脇のキャラクターも含めて、誰も憎むべき人がいないのだ。百田ですら決して根っからの悪人ではないので、憎めない。それが「はじこい」にはまってしまう一番の理由だと思う。

次回はいよいよ受験が目前に迫った時期…ところが匡平の涙と共に「受験やめるわ…」という不穏なセリフが。そして山下くんが引き続きぐいぐい来る展開。毎回思うけど、次回予告の作りが上手すぎる。気になりすぎて、一週間を悶々と過ごす「はじこい」ファンがどれだけいることか。
どうにかして幸せな未来に向かう展開を妄想しながら、あと2日待ちたいと思う。

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