ふたりの選択の先に希望はあるのか――生きづらさを抱える彼らの幸せをただただ祈った「流浪の月」
エンドロールが終わっても座席から立ち上がれなくなるという経験を初めてしたのは、2010年に公開された「悪人」を観た時だ。当時は舞台鑑賞に比重を置いていて映画は年に10本も観れば多い方だったわたしが、初めて「映画を観て打ちのめされる」という経験をしたのでよく憶えている。以来、そんな貴重な経験をさせてくれた李相日監督は注目の存在になった。
その李監督が、前作「怒り」以来6年ぶりにメガホンを取った長編映画「流浪の月」が公開された。本屋大賞を受賞した凪良ゆうの原作小説も非常に印象深