かえりみすれば
東(ひむがし)の野にかぎろひの立つ見えて
かへりみすれば月西渡(つきかたぶ)きぬ
日本最古の歌集「万葉集」から、
柿本人麻呂の短歌(うた)を一つ。
軽皇子に従って狩に出た時の風景を詠んだといわれている。
太陽と月。
西と東。
全てを見渡せる狩の野にあって、今、夜が明けようとする暁の様を見たままに詠み上げた。
ありのままの風景を伝えることは、簡単なようで実はとても難しい。
他の人には真似の出来ない言葉の力。
この歌を口にするとき、まるで共にそこにいるかのように風景が眼前に浮かびあがる。
上記の文は書き下し文となる。
「万葉集」は、日本に平仮名やカタカナがなかった時代の歌集の為、原文は全て万葉仮名と呼ばれる漢字のみで詠まれている。
原文を下記に記す。
遠い古代の息吹が感じられる気がしないだろうか。
東 野炎 立所見而 反見為者 月西渡