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真冬のドライブ
エンジンがついてる乗り物が好きなんです。クルマ、バイク。いやエンジンがなくたっていい。車輪がついてればいいのかも。自転車だって乗るし、ある時はスケボーにもハマってた。電車だって車輪たくさんあって、レールの継ぎ目でガタンゴトンっていう車輪の音、好きだなぁ。いやいや脱線しそうだから話を本題に戻そう。真冬にドライブっていいよねって話です。
なんでドライブする?
どこに向かっているのかなんて、そんなのどうでもよくて。
あてもなく首都高をグルグルしてるのはハツカネズミとおんなじ気持ち。どこにも辿りつかないし、どこかに行きたいわけでもない。ただ窓の外に滲んでる夜の光をぼんやり眺めながら誰かのことを想ったり、アクセルを踏んでカーブを曲がる時に感じる放り出されるような重力?遠心力?を人生に例えてギュッと堪えてみたり。そんな風に独りで自分と向き合う時間なんてドライブじゃなきゃなかなかないもんね。
エンジンっていう凄まじいパワーを持ったマシンをハンドルとペダルで操ってさ、それもほぼ無意識で。考えることと言ったら「あん時、こうしときゃよかった」とか「次は、こんな風にしてあげよっ」とか。運転以外のことしか考えてない。
信号が赤になれば自然と停止ってるし、前の車と車間距離が詰まり過ぎないように無意識で調整してる。いつもの曲がり角や分岐はいつものように曲がってる。
どこにも辿り着かないのに、どっかに行って戻ってきてる。道中の景色がちょっと違ったり、いつもと変わった空気や色を感じたり。
ドライブしてる間に一生懸命考えたことも覚えてなかったり、ぼんやり思いめぐらせたことでなんとなく悲しかったり喜んだり。
それって必要?って聞かれたら「他の人には要らなく見えるかもしれないけど自分にとっては必要なこと」って答えるしかなくて。それって本を読むのと似てる感覚で。
そう、何かを考えたり思いついたり、景色の変化を発見して嬉しくなったり。そういう内外の新しい気づきは自分にとって新鮮な発見。通い慣れた道でも知らない山道でも走ってれば自分の中にはなんかある、新しいの。
そっか。ドライブって、無意識にページを捲る読書と似てる。ドライブじゃなくてもいいし、読書じゃなくてもいいけど、今の自分にはそれがいい。だから今夜もドライブする。それだけ。
冬のドライブの良さ
それなら夏だっていいじゃん、ドライブ。仰る通りです。それは間違いない。読書だって夏でも冬でもいい。自分と向き合ったり、心を解放したり。そんなの年がら年中やったってよくて、もちろんやってるんです。
じゃぁ、冬のドライブって何がいいの?って聞かれたら…
冬は静かなイメージないですか?夏は暑くて騒がしくて、なんか温度高めのアクティブな感じ。冬はその逆で冬眠とか、こたつのネコとか静かで深くてインな感じ。
陰キャな人なら分かってくれると思うけど、誰とも関わりたくなくて一人で静かに過ごしたいのはどちらかというと冬の方じゃないですか?(いや!夏だって静かに過ごしたいよ。ってツッコミ、仰る通りです)
雪の下の球根がじっと耐えてるみたいに、寒いとなんか思考が内側に向く。みたいなことありませんか?そんな気分でなんかジーって考えを巡らせられる冬のドライブってすごい気持ちいいんです。
静かでエンジンの音(回転数)がビューンって上がってく時に、「あー、今日のアレはマズったなぁ」と反省したり、「めっちゃ腹たったけど(終わったし)まいっか。」って気持ちが収まったり。冬だとそんな感じにしんみりできるのがいい。じわっと思い返してちょっと元気になるのが冬のドライブ。
エンジンかけて冷えっ冷えのシートとハンドルがあったかくなってく感じとか。あったかいコーヒー啜りながら吐く息が白いのを見たくて繰り返したりとか。
いつもより遠くまで見える景色やエッジの立ったネオンの光。
夜の空も冬が一番黒くて夏はほとんど見えない星も瞬いてる。夏の読書が青春、恋愛、サスペンスだとしたら冬の読書はエッセイ、純文学、ハードボイルドって感じ。なんか静かにゆっくり楽しみたい。だから好き、冬のドライブ。
癒し≒ドライブ
平日夜のドライブは精神安定剤。なんかあったらクルマに逃げる。エンジンかけてどっかに走り出せばそれで落ち着く。痛みや悲しみを和らげるクスリみたいなもんなのか。
独りが多い。ときどき二人。お供はだいたいホットコーヒー。
休日のドライブはワクワクを乗せて。冬の誰もいない寂しい海や、薪を拾いに森の奥へ。どんな一日にしよう。どこに行ってもいいし、どこにも行かなくてもいい。ワクワクがあればなんでもいい。
宇宙って冬のドライブ向きじゃない?(急にどうした?)宇宙はめちゃくちゃ寒くて広い。
あんなに星がたくさんあるのに静かで暗くて孤独の象徴みたいな空間。時間だってあるんだかないんだか、上も下もなくて、どっからきてどこへ行くのかなんてどの星も知らない、関係ない。
何十年か、何百年に一回だけ一周して元に戻ってる惑星。誰も見てないのに、誰とも喋らないで光の速さでかけっこしてる彗星。
こいつらみんな最高にクールなドライバーじゃん。寒ければ寒いほど、光れば光るほど、速ければ速いほど。寂しい人たちがたくさん集まってブンブンいってるの、宇宙の遠くから見てるとなんかあったかくて滑稽だね。ドライブはいろんな景色が見れて楽しい。
特に冬がおすすめです。