【自分が持っている体の動きと感覚を最大限発揮し、個性的な踊りを踊るための練習方法】
こんにちは、アキです。
京都でフラメンコを教えています。
今回は、自分が持っている体の動きと感覚を最大限に発揮し、個性的な踊りを踊るためには、どうすれば良いのかをお伝えしたいと思います。
私自身、最近になって、やっと自分自身の体の動きや感覚がハッキリと意識出来るようになりました。
それまでは「なんとなく」とか「こんな感じかな?」ぐらいで、どこか曖昧だったり、何か抜けていたり、体全体のバランスが歪んでいたりしました。
「イメージ通りに踊れていない・・・」
「やっているつもりが、出来ていなかった」
そんな自分の踊りを見る度に、何度も心が折れそうになりました。
何が正解なのか、分からなくなってしまう時もありました。
自分の理想通りに踊れるように、そして個性豊かな踊りを踊れるようになるためには、どうすれば良いか?
それには、いくつかの段階を踏まなくてはいけないと思いました。
その段階は、大きく分けて4つあります。
①【全力で踊る】
②【体の動きを調節していく】
③【感情が揺れ動くように踊る】
④【体から音を表現出来るようにする】
この4つの段階を経て行くと、自分が持つ個性的な踊りが踊れるようになると思います。
順を追って説明していきましょう。
①【全力で踊る】
レッスンで振付を覚えた後、反復練習をされると思います。
フラメンコは1曲が長いので、毎回の反復練習の時に、どこか手を抜いたり、動きをセーブしながら踊る時があると思います。
また、自分を客観視しすぎて踊っていたり、次の振付を意識しすぎて踊っている場合もあります。
私自身も振付がなかなか覚えられなかったり、振付がきちんと体に落とし込まれていない時は、どこか動きが中途半端だったり、踊りが小さくなっていました。
振付を覚えたら、必ず1回1回全力で踊ることをお勧めします。
(レッスン中に、先生からアドバイスや指摘された時は、冷静に客観的に踊る事をお勧めします)
なぜ、全力で踊った方が良いのか。
まず、単純に「踊る体力」がつきます。
踊りながら、体が鍛えられていきます。
教室によって、レッスンの時間内に筋力トレーニングをされる先生がいらっしゃいますが、筋力トレーニングをしたからと言って踊りが上達する事に直結はしません。
筋力トレーニングは、あくまでも体のメンテナンスが目的です。
各部位の筋力の強さ、弱さには個人差があります。
筋力トレーニングは、各自で行う方が効率が良いと思います。
私のクラスでは、生徒さん一人一人に合う筋力トレーニングを個別でアドバイスしています。
さて、全力で踊ったことがある方なら分かると思いますが、全力で踊ると必ず体の各部位からハッキリとした感覚を感じるようになります。
「背中が締まる!」
「腰がだるい!」
「足のふくらはぎが痛い!」
「視界が広がった!」
「脇腹が攣りそうになる!」など。
まずは、この体から伝わって来る感覚を毎回感じることがスタートになります。
逆に、体から伝わって来る感覚がないのであれば、その動きは無意識で動いているので、身体的に楽な状態で踊っている場合があります。
そうすると、どこかが抜けていたり、体全体のシルエットのバランスが悪くなっていると思います。
もう少し、詳しく説明していきましょう。
例えば、立った状態や座った状態でも、どんな体勢でも構いません。
その体勢のまま、1度全身に思いっきり力を入れてみてください。
その時、足先や手先、頭から首スジ、腰や背中やお腹など、体の各部位を一つ一つ意識してみてください。
体の各部位から伝わって来る力の入れ具合、感覚や痛み、しびれや強ばりなどが、はっきりと脳に伝わってきます。
他にも、体全体を伸ばすパターンや、体全体を真下に押さえ込むパターンなど、いろんなパターンを試してみてください。
そして、体の各部位から来る感覚を意識して、自分なりの「言葉」に置き換えていくと、もっと体を意識しやすくなります。
例えば、私がいつも自己判断している感覚は、顔を横に向く時、首の両横のスジと後ろのスジに軽い痛みと引っ張られる感じ、喉に歪んだ圧迫感があれば、しっかり横を向けていると自己判断しています。
他にも、セビジャーナスの「パソ・デ・セビジャーナス」を踊る時、背中にキツい締め付けと少しの痛み、胸を広げているので軽い息苦しさ、前に出る足のつま先とふくらはぎに、かなりの体重が乗ってる感覚があれば、きちんと踊れている感覚だと自己判断しています。
全力で踊ることによって、体の各部位から来る感覚の情報量が増え、細かい所まで意識する事が出来て、体をコントロールしやすくなります。
まずは、全力で踊っている時に自分自身の体の情報を丁寧に集めて、しっかり意識して行くことをお勧めします。
②【体の動きを調節していく】
①を行い続けると、新たにハッキリと分かることがあります。
それは、自分の弱点と欠点、強みと長所と得意分野がわかってくるようになります。
例えば、全力で踊ると
「肩が上がりすぎる」
「力みすぎて、動きが硬くなる」
「速い動きになると振付が雑になる」
「動きが小さくなっている」など。
普段は気づかない弱点や欠点が全力で踊ることによって、より明確にはっきりと分かるようになります。
そして、もう一つはっきりと分かる事が、自分の新たな長所や強み、得意分野です。
「暗い曲の方が気持ち良く踊れる」
「シャープでキレのある踊りが好き」
「表現するのが得意」
「女性らしい踊りを極めたい」など。
今まで、気付けなかった自分の長所や好み、強みや得意分野を発見することが出来ます。
新たに見つけ出した自分の弱点や欠点は調節し、強みや得意分野は磨きをかける練習をしていきます。
《弱点や欠点の調節》
お勧めは、自分の踊りを動画撮影することです。
自分の踊りを撮影し、確認する時に「見るコツ」があります。
それは「体の各部分ごとを分けて見て確認する」ことです。
例えば、1回目は腰の位置や高さ、向きや動きだけを見て確認し、調節していきます。
そして、再び動画撮影します。
2回目は、肩と胸の位置や高さ、向きや動き、左右のバランスだけ見て確認し、調節していきます。
そして、再び動画撮影します。
3回目は、足の動きや膝の位置、つま先の向きだけを見て確認し、調節していきます。
そして、再び動画撮影します。
体の各部分を細かく分けて分析したら、今度は見る範囲を広げていきます。
上半身だけを見て確認し、動きやポジションを調節して、再び動画撮影をします。
下半身も同様に行います。
この作業を繰り返す事によって、弱点や欠点が修正され、「見る力」もつくようになります。
《強みや得意分野に磨きをかける》
習った曲を最初から最後まで踊った時、自分が「この部分の振付が好き!」とか「この振付は気持ち良く踊れる」とか「これは得意かも」と思う箇所が、いくつかあると思います。
その部分だけを抜き出して、何度も繰り返し練習をします。
ここで大切なのは「自分が納得するまで」或いは「これこそ、私なりの踊り!」と満足出来るまで練習します。
テクニック的な完成度や先生から誉められる事を目的にするのではなく、自分自身が納得し満足出来る事をゴールにします。
それが、出来るようになると③の練習に繋がっていきます。
【③感情が揺れ動くように踊る】
②の《強みと得意分野に磨きをかける》練習を行っていくと、必ず起こる事が「精神的な変化」です。
私が、フラメンコを始めたばかりの頃、自主練習といえば、習った曲を最初から最後まで繰り返し練習するか、先生から指摘された箇所や苦手な箇所、出来ない箇所を集中的に練習する方法ばかりしていました。
しかし、この練習方法だけでは自分の個性も分からず、長所も強みも得意分野も見つけ出すことも出来ないままだと思いました。
それどころか、自主練習が辛くなったり、やる気がなくなってしまう時もありました。
体調の良い時や気分が良い時は、反復練習や苦手な箇所や出来ない箇所の練習は難なく出来ます。
しかし、1年間365日、毎日体調が良く気分が良い訳ではありません。
練習の時こそ、マイナスのイメージや不安や心配を取り除き、自主的に「もっと練習がしたい!」「ここを、もっとこうしたい!」「これはカッコ良い!」「これは決まった!」と、プラスのイメージをしっかりと認識できる練習方法をして、自分の踊りに強い意志や説得力が表れるようにしていく必要があると思いました。
「好き振付」「好きな箇所」「お気に入りの振付」だけを何度も繰り返し練習して行くと、少しずつ自分の踊りに自信を持つ事が出来ます。
そして、自信がつくと踊っている時に自分の感情が揺れ動き出します。
「ここは、力強く、やーーー!!」
「ここは、ソフトに優しく優しく・・・」
「ここは、決めポーズ、えい!!」
「これは、決まったぞ~!!!」
など。
自分の感情が、しっかり揺れ動くように練習します。
この練習を積み重ねていくと、練習している曲を最初から最後まで踊った時に自然と抑揚がついてきます。
細かく説明しましょう。
練習曲を最初から踊っていきます。
自分の好きな振付部分が近づいて来ると「よ~し!私の好きな振付部分が来るぞ!」と、自然に感情が揺れ動き出し、精神的にも肉体的にも構えたり、勢いがつきます。
そして、好きな振付部分を気持ち良く踊ると、その部分は感情がMAXになります。
「決まった~!!」
「今のは、カッコ良かったぞ!!」と。
そして、好きな振付部分が踊り終わりると、続きの踊りにも感情の余韻がしっかり残ったまま踊る事が出来ます。
そして、次に来る好きな振付や得意な箇所に向かって再び感情が動き出します。
これを1曲の中で、何度も行うことによって自然と抑揚がある踊りが踊れるようになります。
【好きな振付部分に向かって構える➡好きな箇所を踊って感情がMAX➡余韻を残しながら、次の好きな振付部分に向かって構える➡好きな箇所を踊って感情がMAX➡余韻を残しながら、次の好きな振付部分に向かって構える】
この練習を行っていけば、無理に表情を作る必要もありません。
自然と自分自身を素直に表現出来る踊りになって行くと思います。
自分の感情を自分で揺れ動かせるからこそ、見ているお客さんにもその感情が伝わると思います。
お気に入りの1曲の中に、自分の「好きな振付」「お気に入りの振付」「得意な振付」を入れて、磨きをかけ、自分の感情が揺れ動くまで練習することをお勧めします。
自分の弱点や欠点を克服する練習は、いかに客観的に分析し、冷静に考えて練習をするかが大切だと思います。
逆に、自分の強みや得意分野は、いかに感情を乗せて情熱的に練習をするかが大切だと思います。
弱点や欠点を克服するばかりの練習に溺れずに、自分の長所や強み、得意分野を「見つけて伸ばす」練習方法をぜひ、チャレンジしてみてください。
④【体から音を表現できるようにする】
私がフラメンコを始めた頃、ギターリストに伴奏してもらう時に、いつも思っていた事が「自分の理想通りのメロディーが来ない」
「自分のリズムやタイミングがギターのメロディーと合わない」と思っていました。
一生懸命、練習してもギターやカンテに合わない事が、段々とプレッシャーに感じたり、辛く感じる事もありました。
そんな時、母親から「バック(ギターリストやカンテ)を楽しませれる踊りをしないと!」と言われました。
その時、私は自分自身がいかに独りよがりで、自分の踊りの事しか考えていなかった事に気付かされました。
そして、深く反省しました。
「音を待っていては、いけない!」
「自分の体全体から、音を発信しないといけない!」と思いました。
それまでの私は「どんな音やメロディーが来るんだろう?」と受身でいました。
しかし、受身の状態では動きも小さく、メリハリもない萎縮した踊りになっていました。
「私は、こんな踊りだからね!」
「私は、こんなリズムやメロディーが欲しいです!」と言うアピールを全くしていませんでした。
ギターリストが「この踊りには、こんなメロディーを弾いてあげよう!」「このステップには、この音を弾いてあげよう!」と思えるような踊りを目指さないといけないと思いました。
受身状態やギターリスト任せではなく、ギターとカンテと踊り、全員で音を出し合って感性を高めながら一つの作品を作っていく。
その為に、踊る人は体全体からリズムやメロディー、感情を表現してこそ、ギターリストやカンテにインスピレーションを与えていけるのではないでしょうか。
私は、そう思います。
①~③の練習方法の成果を発揮すれば、自然とギターリストやカンテに伝わると思いました。
実際、私自身も①~③の練習方法を行って行くうちに、ギターと息が合うようになったり、上手く踊れるようになって行きました。
体から音を表現出来るようになるとは、気持ちを込めて全力で踊る事だと思います。
①~③の練習方法を行っていけば、自然と抑揚が出て表現力も出ると、お話しました。
感情的に抑揚をつけて踊ると、それが目に見える音やリズムの波になって、ギターリストやお客さんには見える音の波として伝わって行きます。
ぜひ、「自分にしか出来ない踊り」を目指して、新しい自分の踊りを見つけ出してください。
この記事を読んでくださった皆様が、フラメンコを心から楽しんで、新たな個性と才能を発見し、磨きをかけ、充実したフラメンコライフを送れますように心から祈っています。
最後まで、読んでいただきましてありがとうございました。
次回も、どうぞよろしくお願い致します。
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