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東京23区のホームレス数は過去最低更新、初の2万人割れの可能性がある今年の自殺者数(警察庁)などは、2%台半ばでの完全失業率の安定的推移と整合的。一方、物価高が暮らし向きを圧迫、24年9月の金融機関店舗強盗が6年半ぶりの高水準の背景か。―景気の予告信号灯としての身近なデータ(2024年12月2日)―

24年8月の東京23区の国管理河川(国土交通省調査)を除くホームレス数は、調査開始以降で最低。ピークの約17分の1まで減少。

 東京23区のホームレス調査である23年8月「路上生活者概数調査」が11月29日に公表されました。東京都福祉局(2023年6月までは福祉保健局)によるこの目視の調査は、年に2回、冬期・1月(07年までは2月)と夏期・8月に行われています。

 24年8月時点での東京都のホームレスは588人でした。このうち、都・区市町村等の調査による人数は359人(23区342人、市町村17人)、国土交通省の調査による国管理河川の人数は、229人(23区196人、市町村33人)でした。令和6年1月の調査結果と比べると、合計で36人の減少となりました。

 東京23区の国管理河川(国土交通省調査)を除くホームレスのデータで長期的な推移をみると、バブル景気崩壊により最初の調査である95年から過去最高の99年8月の5,798人まで増加しました。その後04年8月まで5,000人台の高水準で推移した後で減少に転じ、24年1月は372人、24年8月は342人と調査開始以降で最低となった。ピークの約17分の1まで低下してきました。

 東京都によると、都と23区が共同で取り組んできた、ホームレス及びホームレスとなるおそれのある人を一時的に保護し、就労による自立と早期の社会復帰に向けた支援を行う自立支援センターの運営などの対策がホームレスの減少に寄与しているものと考えられるということですが、ホームレス減少の根底には、かつて5%台の高水準だった完全失業率が、現在2%台半ばまで低下していることに表れている雇用環境の改善が、ホームレスの減少につながっていると思われます。


1~10月で前年比▲9.0%の1万6,990人。初の2万人割れの可能性がある2024年の警察庁集計の自殺者数。

 自殺者数が減少傾向にあることも、雇用関連の明るい材料として挙げられます。警察庁のデータによると、10月速報値時点の自殺者数は前年同月比▲18.9%の1,515人と12カ月連続の減少で推移しています。24年では自殺者数が前年同月比で増えた月はありません。自殺者数が初めて年間3万人を超えた1998年は、金融危機に伴い日本経済が深刻な状況になった年でした。その後2012年以降は2万人台に低下しても、近年までテレビに出てくる評論家には、「失業者は3万人」と発言する人もいました。それが初めて警察庁のデータで2万人を割り込むということになれば、経済的な理由で自殺者が増加するという悲観的な流れが一服したことを象徴する数字になるのではないかと思われます。

 24年1~10月の累計自殺者数は速報時点で前年比▲9.0%の1万6,990人となっています。残り11~12月が前年比▲5.0%の3,009人で推移すれば、年間2万人を下回ることになります。ただ、自殺者数は発表ごとに24年の過去の月の数字が若干増えてしまうため、際どい状況ではあります。年間の自殺者数が2万人を下回れば、明るい話題として取り上げられる可能性が期待されるところです。78年以降データがある自殺者数(警察庁)と完全失業率との相関係数は0.911と高いため、24年に自殺者数が2万人割れすることは、雇用面の改善を意味すると思われます。

10月完全失業率は2.45%の2.5%。8月から3カ月連続2.4%台で安定推移。24年完全失業率は2.5%と23年から0.1ポイント低下か?

 10月の完全失業率は2.5%で9月の2.4%から0.1ポイント悪化したと発表されました。通常、完全失業率は小数点第1位までで示される。しかし、小数点第42位まででみると、印象が変わります。10月の完全失業率は2.45%で9月の2.41%から0.04ポイント上昇しましたが、8月の2.46%から3カ月連続2.4%台で安定的に推移しています。1~10月の平均は2.54%で、11月・12月次第では、24年は、23年の2.6%を0.1ポイント下回る2.5%になる可能性があります。


生活状況の厳しさを示すデータか。足元の特殊詐欺犯罪増加と、金融機関の店舗強盗の増加。

 その一方で気になることは、特殊詐欺に関連した犯罪が多く報じられているように、警察庁の「特殊詐欺の認知・検挙状況等について」によると、24年1~10月の特殊詐欺認知件数は前年同期比+1.7%の増加で、14,254件。7月~9月は3カ月連続で前年同期比増加していることです。1~10月の実質的な被害総額は411.2億円、前年同期比+32.4%と増加しています。特殊詐欺に加担してしまう要因は様々ありますが、物価高で生活が厳しいことが要因の一つになっているかもしれません。過度な借り入れから消費者を守る必要があるため、貸金業法では個人に対して年収の3分の1を超える貸付を原則禁止するルールがあります。年収が低い若い人で急なお金の工面が生じた場合、家族や友人に頼れず、借り入れも難しい場合に、高額な求人募集を探し、結果的に犯罪行為に巻き込まれてしまう状況もあるようです。

 警察庁の犯罪統計によると、刑法犯総件数(認知件数)が増加傾向にあります。24年1~10月は前年同期比+5.2%の増加で61.5万件、3年連続の増加ペースを辿っています。10月は前年比+3.3%と7カ月連続で増加中です。

 また、犯罪関連では、金融機関の店舗強盗事件の発生も懸念材料です。日本防災通信協会の防災通信によると、24年9月は郵便局で3件、銀行で1件が発生し、18年3月以来6年半ぶりに月間件数が4件まで増えてしまいました。その結果、24年1~9月の累計件数は10件となり、23年の年間11件に接近。2年ぶりの増加が迫っています。2007年に年間144件発生したことに比べると、金融機関の店舗強盗は激減したままですが、特殊詐欺犯罪の増加と合わせて、生活環境の厳しさを示すデータとして気になる内容です。


「消費者マインドアンケート調査」、11月は24年1月以来の物価見通しDIの高さが招いた、暮らし向き判断の2カ月連続悪化。

 内閣府の「消費者マインドアンケート調査」は16年9月から実施されている、誰でも自ら参加し回答できるユニークな調査です。毎月20日締め切りで、結果の公表時期が当該月の22日~25日頃と早く、消費者マインドの基調変化を的確に把握できます。

 質問は「暮らし向き(半年後)」と「物価上昇(1年後)」の2問です。「良」「上昇」から「悪」「低下」の5つの選択肢から回答します。「景気ウォッチャー調査」と同じ5段階評価なので、1ら0まで、0.25刻みで点数を割り振り、加重平均してDIを算出することができます。50が判断の分岐点です。

 物価上昇判断DIは、調査開始から22年1月までは60台・70台で安定推移していましたが、ロシアがウクライナ侵攻した月の22年2月調査以降80台・90台と物価が上昇するという見通しが強まっていました。24年は高水準ながらも落ち着き傾向で、2月以降は7月82.6まで80台前半でしたが、8月は88.3と5.7ポイント上昇と大きく変化しました。政府の電気代・ガス代への補助金が一旦終了したことや、新米が出回る前に不足気味の状況が生じコメの価格が上昇したなどの身近なものの価格上昇が影響したと思います。 9月の物価上昇判断DIは80.3とまだ80台ながら、8ポイントも低下しました。円高が進んだことや、9月支払い分から「酷暑乗り切り緊急支援」として政府の電気代・ガス代への補助金が復活したことなどが影響したと思われます。暮らし向き判断DIの16年9月から24年9月の全調査期間平均は36.8、最高は17年1月48.9、最低はコロナ禍の20年4月20.7です。24年9月では41.0で平均的水準を上回りました。

 しかし、その後、高い気温の影響などで食料価格が上昇し、物価上昇判断DIは10月84.6、11月85.8と上昇してきました。それに伴い、暮らし向き判断DIは10月39.4に低下。11月は33.7へとさらに低下し、全調査期間平均は36.8を下回り、24年2月の31.5以来の水準に低下しました。

※なお、本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。