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11月確報値で実質賃金前年同月比は+0.5%の増加と速報値▲0.3%の減少から0.8ポイント上方修正のサプライズ。―景気の予告信号灯としての身近なデータ(2025年1月24日)―

「きまって支給する給与」は下方修正要因だが、ボーナスを含む「特別に支払われた給与」の大幅上方修正が11月実質賃金のプラス転換の主因。

 1月9日に厚生労働省から公表された毎月勤労統計11月速報値の実質賃金・前年同月比は▲0.3%で4カ月連続のマイナスでした。しかし、1月24日公表された11月確報値によると、現金給与総額から、全国消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)をデフレーターとして物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月比+0.5%と4カ月ぶりの増加に転じました。▲0.3%の減少値から0.8ポイントも上方修正されたかたちです。

 「きまって支給する給与」の11月確報値は+2.5%と速報値+2.6%から0.1ポイント増加率が鈍化しました。「きまって支給する給与」の実質賃金は11月確報値▲0.9%と速報値▲0.7%から0.2ポイント減少率が拡大しました。

 11月は一部の事業者でボーナスの支給が始まる時期です。ボーナスを含む「特別に支払われた給与」の確報値は+24.9%と、速報値+7.9%から17.0ポイントも上振れました。これが全体の実質賃金がプラスに転じた主因です。


実質賃金にとって、プラス要因になる可能性がある25年1月からのサンプル入れ替え。

 12月は11月に引き続き、ボーナスの高い伸びが期待されますが、デフレーターである全国消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合の前年同月比も11月の+3.4%から12月は+4.2%まで0.8ポイントも高まるので、実質賃金の前年同月比の符号は不透明です。2月5日に12月速報値と同時に判明する24暦年実質賃金・前年比はマイナスの見込みです。

 毎月勤労統計では、18年からローテーション・サンプリングを導入し、毎年1月分調査で一部を入れ替える方式になっています。経過期間を経て20年1月分からは、1年ごとに3分の1ずつ入替えられています。共通事業所に限定した集計を行い、前年同月比が参考指標として発表されています。

 共通事業所ベースで「実質賃金」を試算すると意外な結果になっています。前年同月比マイナスは5月で止まっていて、6月~11月までの半年間、ゼロの月もあるものの、前年同月比マイナスになっていません。11月確報値は前年同月比+0.3%で2カ月連続プラスです。速報値の+0.1%から上方修正されました。

 24年1月~11月の、現金給与総額・本系列の前年同月比の単純平均は2.4%で、共通事業所ベースの前年同月比の単純平均3.0%に比べ0.6ポイント小さくなっています。0.9ポイント小さかった23年に続き、24年も2年連続で本系列の前年同月比の単純平均が共通事業所ベースを下回っています。3分の1のサンプル入れ替えられることから考えて、25年が3年連続して、本系列の前年同月比の単純平均が共通事業所ベースを下回る可能性はさすがに小さいと思われます。25年1月からのサンプル入れ替えはプラス要因になる可能性があると思われます。

※なお、本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。