8月「景気ウォッチャー調査」では、宮崎県の地震や南海トラフ地震臨時情報の発表、猛暑や台風の上陸など、自然現象が景況感に影響。先行き判断DIは5カ月ぶり景気判断の分岐点50超。―景気の予告信号灯としての身近なデータ(2024年9月10日)―
8月の現状判断DIは49.0で前月より1.5ポイント上昇。3カ月連続の改善。内閣府の基調判断は2023年5月以来の上方修正。
8月「景気ウォッチャー調査」では、現状判断DI(季節調整値)が49.0となり、前月より1.5ポイント上昇しました。現状水準判断DI(季節調整値)は47.8となり、前月より1.2ポイント上昇しました。どちらも3カ月連続の改善ですが、6カ月連続で景気判断の分岐点の50.0を下回っています。一方、先行き判断DI(季節調整値)は50.3となり、前月より2.0ポイント上昇し5カ月ぶりに景気判断の分岐点の50.0を上回りました。内閣府の基調判断はこれまでの「緩やかな回復基調が続いているものの、このところ弱さがみられる」から「景気は、緩やかな回復基調が続いている」に変更しました。2023年5月以来の上方修正です。
今年も昨年に続き、暑い夏でした。福岡県太宰府市では、最高気温が35℃以上の猛暑日が8月27日に40日連続となり、「連続猛暑日」の国内最長記録を更新しました。8月の現状判断での「猛暑」関連のコメント数は124名と7月の104名から増加し、8月の「猛暑」関連現状判断DIは45.6なりました。なお、2~3カ月先の先行き判断での「猛暑」関連のコメント数は32名で。「猛暑」関連先行き判断DIは50.0です。秋になり気温が落ち着けば、景気に対する影響はほぼ無くなることを示唆していると思われます。
北海道の旅行代理店・従業員が「宮崎県の地震や南海トラフ地震臨時情報の発表、猛暑や台風の上陸など、旅行敬遠につながる要因が多く、予約の低迷や旅行の取りやめといった動きがみられる。ただし、3か月前も景気が良くなかったことから、下げ止まりという評価になる」と、「変わらない」いう判断理由をコメントしています。
宮崎県の地震や南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)の発表で、8月の「地震or震災」関連コメント数が、東海、近畿、四国などで増加。
8月8日に気象庁が、日向灘を震源とする最大震度6弱の地震を受け、初めて「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」を発表しました。
内閣府が、景気ウォッチャーの見方としてまとめた基調判断で、6月に「また、令和6年能登半島地震の影響もみられる。」が削除され、7月までの「地震or震災」関連判断DIからみても、能登半島地震の景気への影響は小さくなっていました。
7月では「地震or震災」関連の現状判断DIは53.1、先行き判断DIも同じ54.2と6月の60台より低下しましたが、景気判断の分岐点50.0を上回りました。コメント数は、現状8名、先行き6名と1ケタで、全て北陸の回答でした。
宮崎県の地震が発生し、「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」を発表された8月では「地震or震災」関連の現状判断DIは48.4、先行き判断DI 47.7で、ともに景気判断の分岐点50.0を下回りました。コメント数は、南海トラフ地震の影響が懸念される、東海、近畿、四国などで増加し、全国では現状78名と大幅に増加しました。但し、先行きは32名と現状に比べ少なくなっています。
中国の高級レストラン・事業戦略担当は「南海トラフ地震臨時情報からお盆期間のキャンセルが多く、キャンセルがなければ景気はやや良いくらいであった」とコメントしています。四国のスーパー・人事担当者の「地震及び台風の防災として、水などの備蓄品を求めた客が殺到し、特需が生まれた」とのコメントもありました。
「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」の景況感に与える影響は総じてみれば比較的軽微であった感じがします。
8月の「不正」関連判断DIからみれば、自動車メーカーの型式不正問題のマイナスの影響は無くなった模様。
トヨタ自動車は、認証不正問題で6月から3カ月間、「ヤリスクロス」「カローラフィールダー」「カローラアクシオ」の3つの車種を生産停止にしていました。当初は9月2日の生産再開を予定していましたが、台風10号の接近によって部品の調達が遅れたため、4日夕方から生産が再開されました。
6月では現状判断で11名、先行き判断で15名「不正」というワードを使ったコメントが出ましたが、ダイハツ工業など一部自動車メーカーの不正問題が影響した23年12月の現状判断17名、先行き判断26名よりは少なめでした。6月の「不正」関連判断DIを作成すると、現状38.6,先行き45.0とどちらも景気判断の分岐点50を下回る内容ですが、12月よりは幾分良いDIでした。
7月では現状判断で6名、先行き判断で6名が「不正」というワードを使ったコメントを出しました。7月の関連判断DIを作成すると、現状41.7,先行き50.0になりました。コメント数は8月では減少しました。現状判断で1名、先行き判断で5名にとどまりました。8月の「不正」関連判断DIを作成すると、現状50.0,先行き65.0になりました。8月では、自動車型式不正問題の景気へのマイナスの影響は、無くなったと言える状況です。
7月・8月「価格or物価」関連DIは6月に比べるとやや改善。コメントした景気ウォッチャー数は6月から減少傾向。
8月の「為替」関連先行き判断DI Iは51.3になり、6月43.9、7月51.0から改善しました。6月の調査期間(25日から月末)のドル円レートは1ドル=160円台の過度な円安局面が多く、先行きの物価高懸念、景況感を悪化懸念が生じていました。8月の調査期間(25日から月末)のドル円レートは1ドル=140円台半ばの水準で推移し、先行き判断への円高の影響が注目されましたが、それほどの悪影響はなさそうだという結果になりました。
6月「価格or物価」関連現状判断DIは40.6で23年1月の35.1以来の悪い水準になり、コメントした景気ウォッチャーは247名と、こちらも23年1月の250名以来の水準になりました。しかし、7月の「価格or物価」関連現状判断DIは42.4で6月から1.8ポイント改善、コメント数は182名まで減少しました。8月の「価格or物価」関連現状判断DIは43.2で7月から0.8ポイント改善、コメント数は179名まで減少しました。
6月の「価格or物価」関連先行き判断DIは42.4、コメント数343名でした。7月ではDIは43.8、コメント数は272名、また8月ではDIは42.7、コメント数は257名で、ともに6月と比べると、DIは小幅ながら改善・コメント減で、円安などが物価高に寄与し先行きの景況感悪化を招くリスクが低下したと判断していることがわかります。
7月31日の金融政策変更を反映した8月調査で、「金利」についてコメントした景気ウォッチャー数は前回政策変更があった3月以来の水準に増加。
景気ウォッチャー調査で「金利」についてコメントしたのは2月では現状2名、先行き7名だけだったのが、3月は現状16名、先行き60名と一気に増えました。日銀の金融政策の影響が反映されたかたちです。その後、4月は現状5名、先行き22名、5月は現状7名、先行き25名のあと、6月は現状4名、先行き12名と振幅をともなって減少していました。7月は調査最終日の31日に日銀の金融政策がにわかに変更されましたが、現状0名、先行き26名のコメント数でした。金融政策変更の影響を十分反映した8月は現状14名、先行き40名と3月以来の水準に増加しました。
6月の「金利」関連先行き判断DIは31.3で30台に低下していましたが、7月は44.2で40台に上昇。8月では45.6に上昇しました。50割れですが、判断DIは緩やかに改善しています。
7月には一時的なコロナ感染者数増加で悪化した「新型コロナウイルス」関連DIは8月に改善。
7月は「新型コロナウイルス」関連現状判断で37人がコメントし、DIを作ると50.7で6月と同水準になりました。先行き判断で54名とコメント数が増加し、「新型コロナウイルス」関連先行き判断DIは48.6と22年11月の48.6以来の50割れになりました。最近の第11波で感染者数が増加していたことへの懸念が背景にあったとみられます。
8月は「新型コロナウイルス」関連現状判断で20人がコメントし、DIを作ると53.8で7月から3.1ポイント改善しました。先行き判断で29名とコメント数が減少し、「新型コロナウイルス」関連先行き判断DIは55.2と再び50超に戻りました。最近、第11波での感染者数が落ち着いてきたことが背景にあるとみられます。
コロナ禍が始まったばかりの2020年2月・3月には先行き判断で1,000名を超えるウォッチャーがコメントしていましたが、24年6月には26名とこれまでで最も少ない数字になりました。7月には54名と、依然低水準ではあるものの一時的にコロナ感染者数が増えたことで増加しましたが、8月は29名に低下しました。
8月の「外国人orインバウンド」関連現状判断DIは2カ月ぶり60割れ、先行き判断DIは5カ月連続60割れだが、今年はともに50超を継続。
7月の「外国人orインバウンド」関連の現状判断DIは60.4と3カ月ぶりに60台に戻りましたが、8月は54.5と2カ月ぶりに60を割り込みました。現状判断DIは、22年5月から景気判断の分岐点50超が維持されています。
一方、先行き判断で「外国人orインバウンド」関連DIは、22年4月の46.9以来18か月ぶりの50割れになった23年10月49.9から上昇に転じ、24年3月は23年7月69.8以来の水準である67.6まで改善してきましたが、4月は59.7で僅かですが60割れとなり、その後5月55.6、6月54.3、7月56.7、8月55.3と50代半ばの安定推移としています。
8月「最低賃金」関連先行き判断DIは41.8と50割れ、コメント数は52名。
2024年度の最低賃金は全国平均1055円で、23年度より51円上がることになりました。7月末に厚労省の審議会が示した引き上げの目安額は50円でしたが、人手不足や隣県との格差への危機感から各地で上乗せが相次ぎました。徳島県では84円と目安を34円上回る異例の決定がなされました。目安を上回ったのは27県で、10月以降に各地で適用されることになります。
8月「最低賃金」関連先行き判断DIは41.8と7月の38.6に続き50割れとなりました。コメント数は7月の35名から52名に増加しました。
東北のスーパー店長は「最低賃金改定などで収入が大きく増えることが予想されるため、消費も活性化するとみている」と「やや良くなる」いう判断理由をコメントしています。一方、甲信越の食料品製造業・製造担当は「最低賃金上昇分で年間70万円以上、原材料費80万円以上となると、商材単価を今の倍にしていかないと、吸収できない。ただし、本当に価格を2倍にすれば、スーパーでは間違いなく売れなくなる。このはざ間で新しい売り方を考えないといけない」と「悪くなる」いう判断理由をコメントしています。
8月は、政治への関心高まる。「政治」に関するコメント数は2ケタに増加。「政治」関連先行き判断DIは46.4。政治要因が景気の先行きの不透明要因に。
8月の「景気ウォッチャー調査」では、現状判断で3名、先行き判断で14名が政治に関してコメントしました。現状判断で0名、先行き判断で3名だった7月とは様変わりです。8月の「政治」関連現状判断DIは50.0、「政治」関連先行き判断DIは46.4です。
東海の家電量販店・営業担当が「お盆まで夏物商材が動き来客数も伸びたが、お盆以降は来客数が減ってきている。衆議院選挙の可能性もありそうで、米国大統領選挙もあり政治的には先が見えない時期である」と、「やや悪くなる」という先行き判断に関しコメントしています。また、九州の百貨店・企画担当は「現状の水準を維持していれば、3か月後も今月と大きく変わらない。今後の総裁選の結果など大きな政治要因があり、現状では今後の見通しが難しい」と、「やや悪くなる」という判断に関しコメントしています。先行きを見通しづらい政治要因が景気の先行きの不透明要因になっていることがわかります。
※なお、本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。