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「禁断の国史」(二)天照大神

第一章 神話時代の神々

(二) 天照大神  (心優しき女帝 民主主義を実践)

  重要なポイントを三つあげる。

 第一に、高天原を統治したアマテラスは太陽神であり且つ女帝だった。

 第二に、合議を重んじ独裁に走らなかった。
 スサノオを高天原から追放する決定は、八百万の神々を天安河原に集めて合議した。つまり人類最初の民主主義政治である。
 この合議という原則はその後、聖徳太子の十七条憲法、「和」が大事な価値観とする政治改革に繋がり、大化の改新で大宝律令となった。
 明治維新の「五か条の御誓文」にも「万機公論に決すべし」と明記された。民主主義の根本原理はアマテラスが嚆矢(こうし)である。

 第三に、人間的な神なのである。
 神様らしからぬ気弱なところがあって、情緒に富み、スサノオが暴れると天岩戸に引き籠ってしまう。太陽神だから世の中が真っ暗になった。
 鉦と太鼓と踊りでなんとか岩戸を開けさせると、世の中がぱっと明るくなったという寓話は、噴火、日蝕、地震、洪水などの天災が起きると、シャーマン的なカリスマ性を帯びたアマテラスが神秘の儀式をおこなって鎮めたという重要なメッセージが籠められている。

 皇室の重大な行事は新嘗祭、御代が替わると最初の新嘗祭に匹敵するのが大嘗祭である。五穀豊穣と安寧を祈る、日本国民の象徴としての祭祀王=天皇の崇高な役目であり、米の豊饒を祈願する儀式である。

 弥生時代から稲作が始まったのではなく、縄文後期には縄文人も稲作をしていた。中期には、大豆、小豆を耕作していた事実が、最近の発掘調査で鮮明になった。縄文後期と弥生初期は重なり合っているのである。

 日本の天皇は、諸外国のツアー、キング、エンペラー、エミレーツなどとは異なった統治の象徴、すなわち祭祀王である。

 アマテラスを祭るのは伊勢神宮である。天皇陛下は正月に必ず御親拝されるし、歴代首相も正月四日には伊勢神宮に参詣するのが日本の儀式である。
アマテラスに祈るのである。
 日本の安寧と国民の安全と繁栄を護る伊勢神宮は、まことに神霊に蔽われ(おおわれ)境内は清々しい。

 かつて境内を流れる五十鈴川で、文豪アンドレ・マルロォがフランスの文化大臣(ドゴール政権下)のとき、伊勢神宮に参拝して禊ぎを受けた。
 マルロォには魂を重視した作品が多いが、アマテラスと対話をしたいと希望したのだ。そのときマルロォが五十鈴川の清流に身を浸しながら震えが収まらず、「このバイブレーションは何だ」と叫んだことは有名な話だろう。

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※ 「禁断の国史」宮崎正弘著 ハート出版
  次回はスサノオです。ご期待くださいませ。


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