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建築家の子育て記 001

2020年3月24日、第二子が産まれた。
COVID-19は着実に感染者数を増やしていた。
妻と4歳の娘と新生児と私。
自粛生活とともに4人での暮らしが始まった。

はじめに

 2020年のゴールデンウィークが過ぎた。
 家庭的にはいたって平和に。
 世間的にはなんとなく不穏に。
 最低限の散歩と最低限の買物。それ以外は外に出ることもなく、1日24時間のうち22時間30分を家で過ごす毎日。どちらかと言えば出不精な一家なので、家にいること自体は苦になることはない。けれども、やはりそれは特異な日々であった。
 将来、きっと振り返る日がくるであろうことを考えて、娘たちとの暮らしについて、記録しておこうと思う。

自己紹介

 簡単に自己紹介をすると、小さな建築設計事務所の代表をしている。

 スタッフは私を含めて6人。正社員3名とアルバイト2名の小さな組織だ。名を一級建築士事務所秋山立花という。
 なぜ秋山立花かというと、ちょっと長くなるので事務所のホームページをご参照いただきたい。
 主に個人の住宅をメインに、保育園や集合住宅を設計させていただくことが多い。いわゆる「建築家」と呼ばれるカテゴリーに含まれている。

 建築設計事務所は日本中に数多あれど、秋山立花はちょっと変わった存在である。なぜ変わっているのかということは、もっと長くなるので、別の機会に書くことにする。とりあえず、建築家が自分の子育てについて書きたいのだな、と思っていただければありがたい。

 38歳という年齢にはとても見えないほどの豊富な白髪を生やし。弱小チームだったとはいえ高校野球でキャプテンをしていたとは思えないほど、ひょろりと痩せていて。日本酒が大好きで呑みすぎじゃないかといつも妻に窘められている。
 そんな、ひとりの建築家の子育ての記録である。

すっぽん!わっしょい!!

 2020年3月24日午前4時38分 快晴

 2465gの女の子が、すっぽん! わっしょい!! と産まれでた。

 少し小さく産まれはしたものの、幸運なことに母子ともに問題なく出産を終えることができた。
 当時3歳の上の娘(仮に名前を「春」とする)は、ことさら妹ができることを楽しみにしていた。
「赤ちゃんって、すっぽーん!って産まれてくるんでしょ?」
 どこから仕入れてきたのか分からない(というか保育園以外にはないと思う)が、常にすっぽん!と産まれる、すっぽん!と産まれる、と言い続けていた。それが何時ごろからか、わっしょい!というなんともおめでたい言葉も加わるようになる。

 すっぽん!わっしょい!!

 なかなか良い響きである。

 すっぽん!わっしょい!!

 すっかり我が家では、すっぽん!わっしょい!と赤ちゃんは産まれてくるものだ、ということになった。

 すっぽん!わっしょい!!
 すっぽん!わっしょい!!

 お産は何が起こるかわからない。
 すっぽん!わっしょい!!で済むのであれば、これ以上望むものもない。

 文字通り、すっぽん!わっしょい!!と産まれてきてくれた娘。
 仮に名前を「桜」とすることにする。

 病院の外では、少々気が早く満開になった桜の木が太陽の光をいっぱいに受けて、穏やかな風に枝を揺らしていた。

(つづく)


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秋山怜史
読んでくださりありがとうございました。 いただいたサポートは全て『特定非営利活動法人全国ひとり親居住支援機構』の運営資金にまわり、母子家庭の居住支援を広めていくための活動に活用させていただきます。