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第315回: 「ALTTAのテキストをつくろう」1 (プロローグ)

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≡ はじめに

前回は、箸休め回でした。

前回一番伝えたかったことは、次の言葉です。

◾️ 魚を木登りの能力で評価しない

Everyone is a genius. But if you judge a fish by its ability to climb a tree, it will live its whole life believing that it is stupid.

誰もがみな天才だ。でも、もし魚を木登りの能力で評価したら、魚は自分がバカだと思い込んで一生を過ごすことになる。

アインシュタインの言葉ではない

今年も忘れないようにしようと思います。

前々回の復習は以下で模擬試験問題の確認を通して行います。

今回は新しい連載の始まりの回となります。

ALTAが終わったので、ALTMにしようかALTTAにしようか迷ったのですが、JSTQBのALTMシラバスは、“Version 2012.J04”バージョンの翻訳なので、(このnoteの連載が終わるころには新しいシラバスが出ている可能性が高いので、)ALTTAの方にしました

ALTTAのシラバスは、”v4.0.J01”で、2024/07/14に日本語版が公開されたばかりだからです。
また、ALTAとALTTAはどちらもテスト技法を扱っているので、連続性が高いと思ったのもALTTAを選択した理由の一つです。

⚫︎ 懸念事項 ⚫︎

ALTTAは日本(JSTQB)で資格試験が始まっていないため、資格を取得するには、英語で受験する必要があります。(オンラインで受験できますので日本で受けることは可能です)

ちょっとハードルが上がってしまいますが、英語のスキルとテストのスキルの両方を上げるチャンスともいえます。

また、前向きに考えれば、このハードルがあるため日本人でALTTAを持っている人は少ないので、ALTTAのスキルを必要としている企業に超アピールできます。

以下に、偉大な先人が受験ノウハウを公開していますので、参考にしてください。ありがたやーです。


◾️ 資格試験の受験が大変なのになぜ?

まず、ALTAはブラックボックステスト技法に焦点を当てていますので、ホワイトボックステスト技法についても書きたいと思いました。
でも、それだけではなく、性能、セキュリティ、信頼性、移植性、保守性のテストについては、ALTTAの範囲だからです。(詳細は後述)

ALTTAの知識はテストエンジニアとして知っておいて損はありません。資格は保有スキルを証明する方法の一つですので取得する価値はあります。

ただ、資格を持っていなくても、ALTTAの知識を身につけて、性能、セキュリティ、信頼性、移植性、保守性等々のソフトウェアテストの実務で役立てることができたら、それもあなたのスキルを証明するものです。
(職務経歴書に書きましょう!)

ということで、ALTTAの連載の始まりです。

以下では、前回の問題の解説をした後に、第一回目として、JSTQBの「ALTTAビジネス成果」と、「ALTTAシラバス」の「0 本シラバスの紹介」について書きます。



≡ 前回の復習

以下は前回出題したJSTQB ALTAの模擬試験問題を𝕏にポストした結果です。


𝕏によるアンケート結果

投票の結果、選択肢3の「シラバスのみでは理解が難しい事項(技法等)について参考文献を読む」が86.7%と最も多く、正解も3です。

選択肢1のようにリストされた参考文献は全て熟読してマスターしてからでないとALTAの資格にチャレンジをしないのは、ちょっと違うと思います。時間は有限だからです。

まず「標準」のところにある「ISO 25010」、「ISO 29119-4」、「OMG-DMN」、「OMG-UML」、「RTCA DO-178C/ED-12C」を押さえましょう。
これらは、テストをつくろうとしたときに、「ここに書いてあるから正解とする」の根拠となるドキュメントですから受講者というより、ALTAのセミナー講師が読んでおくと良いと思います。
「ISO 25010」はJISになっていますので入手も理解も楽です。

つぎに「ISTQB® とIREBのドキュメント」ですが、こちらは、JSTQBのFLとALTAのシラバスを熟読する必要があります。試験に合格することが目的なら選択肢4の「参考文献は使わずにFLとALTAシラバスに集中する」方法をお勧めします。

また、たとえ試験合格よりも自分の実力を確認したいとか、ALTAの範囲の知識を業務に役立てたいという人であっても、試験前の1週間はシラバスに集中しましょう。合格して、次の勉強に移るほうがメリットが大きいからです。

つぎに「書籍と記事」ですが、これらからは、選択肢3の「シラバスのみでは理解が難しい事項(技法等)」を学びましょう。

テスト技法は、「標準」の「ISO 29119-4」を読んでも学べますが、やはり書籍の方が読みやすく理解しやすいものです。

最後の「その他の参照元」は、(おそらく)試験には出ない情報源ですが、業務を進めるときにピンポイントで知りたいことがあれば、アクセスして読むと良いです。

ところで、英文の参考文献がほとんどですが、Goolge翻訳でも、DeepLでも、ChatGPTでも良いので翻訳してしまえば何が書いてあるかはおおよそ分かります。Goolge翻訳でもPDFを翻訳できますので(サイズ制限はあるものの)便利になったなぁと思います。

ざっと概要を理解した上で、深く読むべきと思ったところについてのみ、じっくり英文と格闘するほうが効果的かと思います。

なお、私は、Google翻訳が一番好きです。変換後の日本語が下手なので、誤訳していそうなところがすぐわかるからです。最近の生成AIはスルッと読めてしまいますので正しく訳せているように思い込んでしまいます。
また、DeepLのように、「まるごと、文が抜ける」のは、“要件定義リストにあって仕様化も実装もされなかった機能のテストが難しい”ように、原文と翻訳結果を突き合わせないとならないので面倒です。

なお、ちゃんと理解したいときには、少し手間ですが、MSWordにPDFを読み込んで、少しずつWordの機能で(といってもクラウド先のサービスで)翻訳することもあります。

復習は以上として、今回のnoteのテーマに移ります。



≡ ALTTAビジネス成果

JSTQBのシラバスが置かれているウェブページにある「ALTTAビジネス成果」を読んでいますか?

私は今回のnoteを書くためにアクセスして、初めて気がつきました。

# JSTQBのシラバスのウェブページを使いにくいと思うのは私だけでしょうか?

以下の表があるだけのファイルですが、目を通してALTTA保有者に期待されることを知っておくと「ALTTAを学習する目的(学習した結果、自分が到達するゴール)」が明確となります。

「TTA Advanced Level ビジネス成果 v4.0」より


比較のために、これまで連載してきたALTAの方も載せておきますね。

「TA Advanced Level ビジネス成果 v3.1」より

この2つの表を見比べるとALTAとALTTAの資格で確認しようとしている受験者のスキル獲得状態が分かりますし、ALTAとALTTAの違いを説明できると思います。

● これまで連載してきた、ALTA(Advanced Level テストアナリスト)は、テスト技術の全般を担当しますが、特に機能面のブラックボックステストができることが期待されます。

● 今回から連載が始まった、ALTTA(Advanced Level テクニカルテストアナリスト)は、機能というよりはホワイトボックステストで構造面を評価したり、統計を使った推定であったり、ソフトウェアの最新技術のキャッチアップであったりができることが期待されます。

誤解を恐れずに言えば、昨年のALTAはキュアブラックで、今年のALTTAはキュアホワイトです。

私はキュアブラックの方が好きですし、ソフトウェアテストでもブラックボックステストの方が得意です。(たぶん)

⚫︎ とはいえ ⚫︎

「とはいえ」ですよ。「でも、だって」です。

人間、困らないと学習しようなんて気にならないものです。私は、いつまで経っても英語何にも分からない族です。←いばるな。

若い頃(35歳くらいのとき)、アメリカに出張することが決まったときには「困る」と思ったから出張前に付け焼き刃で、自分が説明しなければならないことを言えるように頑張りました。

出張中は相手の話は分からないことが多かったから自分の説明も伝わっていないと思い、何度も言い換えていました。

そうしていたら「I've understood what you said. It's OK. ─── 何を言いたいかは分かった。大丈夫だよ」といったようなことを言われました。

幼稚園児レベルでも(相手も私の話を聞いて理解しないと困ることになるシチュエーションならば)必死に話せば何とかなるのかもと思いました。

でも、出張が終わればまた英語がなくても困らない日々です。
大学院生のとき(50歳くらいのとき)に英語の論文を書く必要があったけど、日本語で書いて業者さんに訳してもらって、古川先生に添削してもらって、ことなきを得ましたし。

だから、この連載の目標も低いです。
ALTTAの合格は、目指しません。

ALTTAの範囲の相談事を友人や開発者から受けたときに該当する回をその人と一緒に読んだら何となく問題は解決に向かうといいな】レベルを目指します。

そのためには、毎回、読んだ人が「何となく分かった気になる」ことが大切です。そうでないと読み返す気にならないからです。

逆に言うと、書く方としては、100%分からない人が読み進めても問題が無いように、各回は独立しているように書きたいと思っています。
思っているだけでできるとは限りませんが。

だから気楽に読んでください。もちろん質問があればコメントに書くかTwitterで聞いてもらえればできるだけ回答します。



≡ ALTTAシラバスの構成

JSTQBの「ALTTAシラバス」の「0. 本シラバスの紹介」に「0.9 本シラバスの構成」という節があります。
そこには、これから学ぶことがリストされていますので読んでみましょう。全文引用します。

6 つの章で構成され、すべて試験対象である。各章のトップレベルの見出しには、その章の最低時間が指定されており、章より下のレベルの時間幅は指定されていない。認定トレーニングコースでは、シラバスでは最低20時間の講義が要求され、6つの章で以下のように配分する。

第1章:リスクベースドテストにおけるテクニカルテストアナリストのタスク(30分): pp. 11-13(3)
第2章:ホワイトボックステスト技法(300分): pp. 14-22(9)
第3章:静的解析と動的解析(180分): pp. 23-28(6)
第4章:テクニカルテストのための品質特性 (345分): pp. 29-45(17)
第5章:レビュー(165分): pp. 46-49(4)
第6章:テストツールと自動化(180分): pp. 50-57(8)

ALTTAシラバスより(太字は私が追記したページ情報)

ALTTAの学習時間は、全部で20時間(47ページ)のボリュームです。この連載も一年くらいで完了できそうです。
とはいえ、一年という明確なゴール期日を設定して急ぐ必要はないので、一年は目安のペースメーカーとして、自分が知っていること、このnoteを書くときに参考にした情報を書いていこうと思います。



≡ JSTQB ALTTA試験対策

今回は試験範囲ではなく導入情報なので「学習の目的」はありません。だからここに書かれている内容は試験にはでません。

《問題》
 ALTAとALTTAの違いとして、最も★誤っている★ものを選びなさい

1. ALTAはブラックボックス、ALTTAはホワイトボックスを担当
2. ALTAは機能、ALTTAはメカニズムを対象とする
3. ALTAは手動テスト、ALTTAは自動テスト
4. ALTAは誤りの分析技術を活用、ALTTAは解析技術を活用する

答えは次回に書きます。



≡  おわりに

今回は、「ALTTAビジネス成果」と、「ALTTAシラバス」の「0. 本シラバスの紹介」がテーマでした。

これから一年に渡り連載する内容のオーバービュー回でした。

今調べたら「over view」ではなく「overview」という単語があるのですね。
なお、「overall view」(全体図)のほうはスペースが入るようです。

※ 「electronic mail」が、「e mail」となり「e-mail」にかわり「email」になったようなものでしょうか。ああ、でも携帯のメールは「text」なのかも。やだやだ。

さて、次回は「1. リスクベースドテストにおけるテクニカルテストアナリストのタスク」について書きます。
ALTAと共通するところは省略して一度で終わろうと思います(推奨学習時間も30分ですし)。

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