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第305回: 「ALTAのテキストをつくろう」58 (使用性の評価後編: 使用性評価手法)

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≡ はじめに

前回は、JSTQBのALTAシラバスの「4. ソフトウェア品質特性のテスト」の「4.2 ビジネスドメインテストの品質特性」の「4.2.5 使用性評価」の「4.2.5.1 使用性の側面」について書きました。

ISO 25010(JIS X 25010)の製品品質モデルの話と「ユニバーサルデザイン」という概念について説明しました。私は、障害者や高齢者に配慮したデザインを目指すのではなく「どんな人に対しても使いやすく人にやさしいデザインにすればよい」というユニバーサルデザイン(UD)の発想が好きです。

UDの成功例として語られるものの一つに、「シャンプーの容器にギザギザ状のきざみを付ける」があります。初耳と言う人は、花王のページを読まれることをお勧めします。
要は、「シャンプーとリンスの容器の区別がつくようにシャンプーの容器に凸凹した突起をつけておくというデザインにした」という話です。(以下の図が分かりやすいです)
誰でもシャンプーとリンスのボトルを間違えてしまったことがあると思います。シャンプーボトルの凸凹だけを見ると視覚障害者に向けてデザインしたのかなと思うけれども、そうじゃないという話です。その後、ボディソープのボトルにも応用されました。
「ユニバーサルデザイン」の本はたくさん出ていて、どれもよいので“これがお勧め”と書けません。
大きな本屋さんか図書館でお気に入りの一冊を見つけて通読してみてください。

スクール・アドバイス・ネットワークのサイトより

前回の復習は以下で模擬試験問題の確認を通して行います。

今回はJSTQBのALTAシラバスの「4. ソフトウェア品質特性のテスト」の「4.2 ビジネスドメインテストの品質特性」の「4.2.5 使用性評価」の「4.2.5.2 使用性評価手法」について書きます。



≡ 前回の復習

以下は前回出題したJSTQB ALTAの模擬試験問題を𝕏にポストした結果です。


𝕏によるアンケート結果

投票の結果、選択肢4の「インテグリティ」が95.0%と最も多く、正解も4です。

インテグリティが使用性の副特性ではないこと(おそらく多くの人は更に、インテグリティがセキュリティの副特性であるということ)をご存じのようです。

でも、「インテグリティの評価用のテストケースを見せてください」というと、たいてい「機密性」や「真正性」のテストケースが出てくるのです。

機密性、インテグリティ、否認防止性、責任追跡性、真正性の違いについてそのうちこの連載で書くぞ、と思ったらALTAじゃなくてALTTAの試験範囲でした。
試験にはでないけれども、インテグリティについてALTAを受ける人も知っておいたほうが良いと思います。セキュリティの深い話はTTAでいいけれど。

……ちょっと気になって、ALTTAのシラバスの該当箇所「4.3.3 セキュリティテスト仕様」をチラ見したけど、その情報だけではセキュリティのテストはできないぞという内容でした。使用性とセキュリティは、テスト技術に加えて、専門の知識が必要なテストタイプのようです。

復習は以上として、今回のnoteのテーマに移ります。



≡ 使用性評価手法

「使用性評価手法」には、「使用性テスト」、「使用性レビュー」、「使用性の調査およびアンケート」の3つの方法があります。以下ではそれぞれについてシラバスにそって説明します。


■ 使用性テスト

システムが使いやすいかどうかを「有効性」、「効率性」、「満足性」の3つの項目を測定するテストが使用性のテストです。この3つの項目のシラバスによる定義は以下の通りです。

● 有効性 - 利用者が指定された利用の状況で、正確かつ安全に、指定されたゴールを達成できるテスト対象の能力
● 効率性 - 特定の使用条件下で、有効性を達成することに関連し、ユーザーに適切な度合いの資源を使用させるテスト対象の能力
● 満足性 - 指定された利用の状況で、利用者を満足させるテスト対象の能力

具体的な方法については、

使用性テストの設計と仕様化の作業は、テストアナリストが、使用性テストの専門スキルを持つテスト担当者、および人間中心の設計プロセスを理解している使用性設計エンジニアと協力して行うことが多い点に気を付けることが重要である。(詳細については、[ISTQB_UT_SYL]参照)。

※ ISTQB® Specialist Syllabus in Usability Testingは、まだJSTQBの翻訳が公開されていないようなので英文のシラバスへのリンクを張っておきます。

ALTAシラバスより

UI/UXの専門家と相談してねということです。

相談する人がいない場合は、前回紹介した、樽本 徹也氏の『UXリサーチの道具箱II ―ユーザビリティテスト実践ガイドブック』を読みましょう。

と、2回連続お勧めしているのですが、この本、目次と索引がないから使いにくいんですよね。内容は良いのでもったいないと思います。

※ Kindleにしておけば検索機能が使えますので索引については解決します。


■ 使用性レビュー

「使用性評価手法」の2つめは「使用性レビュー」です。

ユーザーインターフェースがより視覚的である場合は、レビューがより有効である。例えば、スクリーンショットのサンプルの方が、特定の画面で提供される機能の説明よりも、通常、理解および解釈しやすい。ドキュメントの使用性を適切にレビューするために視覚化が重要である。

ALTAシラバスより

上記の引用の通り、「知ってる」ってことが書いてあります。


■ 使用性の調査およびアンケート

「使用性評価手法」の3つめは「使用性の調査およびアンケート」です。使用性を定量化して評価する方法のひとつと考えると良いです。

SUMI(ソフトウェア使用性測定一覧表)やWAMMI(Webサイト解析と測定一覧表)など、公開されている標準的な調査方法を使用する

ALTAシラバスより

とあります。

SUMIとWAMMIについては、shiroさんが紹介されていますので、そちらのリンクを張っておきます。

樽本 徹也氏の本ではSUS(System Usability Scale)が紹介されていました。あとWUS(Web Usability evaluation Scale)が名前だけ紹介されていました。

まずは、この2つ(SUSとWUS)を使うと良いと思います。← シラバスにはないので、試験にはでないと思うけれど。



≡ JSTQB ALTA試験対策

いつものことですが、まずは、「学習の目的」を確認します。

TA-4.2.4 (K2)使用性の要件の実装と、ユーザーの期待の達成の両方を検証および妥当性確認するのに適している手法を説明する。

ALTAシラバス52ページ

(K2:理解、K3:適用、K4:分析)

《問題》
 JSTQBのALTAにある使用性評価手法ではないものはどれですか?

1. 使用性テスト
2. 使用性レビュー
3. 環境適応性テスト
4. 使用性の調査およびアンケート

答えは次回に書きます。



≡  おわりに

今回は、「4.2 ビジネスドメインテストの品質特性」のうち、「4.2.5 使用性評価」の「4.2.5.2 使用性評価手法」がテーマでした。

先日、とあるテストの勉強会のあとに「A/Bテスト、毎日、ガンガン使っています」という人と食事をしていて、「そっかー」と思ったのですが、ISTQBのシラバスには、A/Bテストはでてこないんですよね。用語集にありましたので、貼っておきますね。

ISTQB用語集より

ISO/IEC TR 29119-11 (2020) Software and systems engineering — Software testing — Part 11: Guidelines on the testing of AI-based systemsを読めってことかなあ。

そういえば、以前、カイ二乗検定の流れで、「A/Bテスト」の統計処理について書いたことを思い出しました。

「第160回: 「統計の実務」20 クロス集計とカイ二乗検定《その1: A/Bテスト》」です。
エクセルでクロス表から簡単に求められますので、確からしさを検定しましょう。

さて、次回の「4.2.6 移植性のテスト」が終われば、残るは、「5. レビュー」と「6. テストツールおよび自動化」の2つです。あと少しですね。

年内受験しちゃう?


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