地方自治体とコラボしよう
空き家のお隣さんには,自分に迷惑をかけないよう,持ち主にその物件をどうするか尋ねる資格があり,またそれを探す方法があることをお話しました。
その方法に気付いた頃に、私たちの事務所のある市からのオファーがありました。
今回は、そのことについてお知らせしたいと思います。
市役所も辛いよ
私たちの事務所は千葉県船橋市にあります。
そして、事務所から歩いて5分のところに船橋市役所があります。
今でこそ「空き家特措法」のおかげで、空き家問題に取り組んでいる地方自治体が多いですが、私たちが活動を始めた頃はその法律がありませんでした。
それで,船橋市は,あくまでも住民からの相談に対応する形で、防犯担当の方が兼任して空き家対策を扱っておられました。
私の知り合いの市会議員に、その当時から空き家問題を取り組んでいる方がいて、「一度関係部署のスタッフに会わせたい」という提案があり、それがきっかけで上記の方々にお会いすることになりました。
本来の仕事がありながらも、どこにどんな迷惑空き家があるかを把握しておられ、市民の問い合わせがあれば出動して尽力している、そんなとても温かいかつやる気のあるメンバーばかりでした。
私たちの理念やメンバーについてご紹介したところ、ぜひ力を貸してほしいということで、「市民協働モデル事業」という形で、約2年間一緒に取り組ませていただきました。
追記
公益社団法人日本都市計画学会の論文にも、私たちと船橋市との協働事業が取り上げられていました。
どうやら、当時はかなり先駆的だったようです。
(下記ファイルの1ページ目)
市役所の視点
この時の船橋市役所は、空き家を点というより、面として考えていたようです。
どこに空き家が集中しており、かつ利活用しやすい地域はどこかを分析し、エリアを絞って集中的に調査して、解決策を探り、それを所有者や関係者に提言するという内容でした。
なので、コラボが正式に始まった時、モデル地区を4つほど提示され、各々の地区の特性、空き家の状況、そのエリアの町会の取組みなどについて説明をいただきました。
その情報収集力や分析力など、さすがお役人さん! とびっくりしたのを覚えています。
今考えると、「空き家特措法」がなかったからこそ、自由な発想で、義務の履行を求められることなく、住民に寄り添う方法が取れたのかな? とも思います。
逆に、今はそれに縛られ、役所ゆえに公平性を担保しなくてはならないので、空き家問題解決を名乗る各種業界団体に気を遣っている有様です。
そのため、相談者は業界団体間をたらい回し、解決スピードは遅いという悲しい状況です。(それについての具体的事例は、今後お知らせします)
コラボ,スタート
4つのモデル地区のうち,1つを選ばせていただき,協働事業がスタートしました。
空き家マップ,登記情報,これまでの調査に基づくデータなど,基本的な資料をお預かりできましたので,登記上の所有者の住所が正確であれば,そちらにお手紙を出しました。
内容としては,市民からの相談(通報)により手紙を出したこと,また「アンケート」という形で,空き家となってしまっている事情や今後の意向などをお尋ねしました。
約半数の方がきちんと回答してくださり,その中にはサポートを依頼されてきた方もいます。
やはり,ここは地方公共団体との協働作業ゆえ市民の方々の信頼感が違い,詐欺のようなものではないとすぐに理解してくださったようです。
登記上の所有者の住所が正確でない方は「職務請求」を利用して,現在の住所を調べたり,あるいは法定相続人を探し出した上で、同じように「アンケート」を出しました。
やっていく中で、比較的取り組みやすい案件と、そうでない複雑な要素が関係している案件が分かってきました。
次回は、その中の1案件をご紹介します。駅近なのに、不動産屋さんから見放されたゆえに、ずっと空き家にせざるを得なかった物件です。