【小説】影の囁き 三毛猫ミケ【朗読動画】
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東京の賑やかな街で働く三毛猫のミケは普通の会社員として忙しい日々を送っていた。毎日、スーツを着てオフィスに向かい、同僚と人間のように会話を交わす。だが、仕事のストレスから不眠症に悩まされるようになり、最近は夜もなかなか眠れない。
ある夜、ミケはまたもや寝苦しさに目を覚ました。部屋の時計を見ると深夜2時を回っていた。
「にゃあ、今日も眠れないにゃ…」ミケはため息をつきながら、天井を見上げた。
そのとき、部屋の隅に黒い影が立っていることに気づいた。
ミケは驚いてベッドから飛び起きた。
「にゃんだ、あれは…」影はじっと立っており、動く気配はない。ミケは恐怖と好奇心が入り混じった感情で影を見つめ続けた。やがて、影はゆっくりと消えていったが、その存在感は確かに感じられた。
影が消えた後、ミケはしばらくその場で動けなかった。
「にゃんだったんだろう、あれは…」ミケは震える声でつぶやいた。結局、その夜は再び眠れず、翌朝の出勤も疲れ切った顔で迎えることとなった。影の存在がミケの心に深い不安を残し、日常生活にも影響を及ぼし始めたのだった。
夜になると、ミケの部屋に現れる黒い影は少しずつ近づいてくる。毎晩、その距離が縮まっていくことに気づいたミケは恐怖と不安で眠れない日々を過ごしていた。
「にゃ、あの影がもっと近づいてきたら…」ミケの心は恐怖でいっぱいだった。
昼間は仕事をこなしながらも、夜になると影の存在が頭から離れない。ミケはインターネットで調べ始め、同じような経験をしている人々がいることを知った。彼らの間では「影の囁き」という名でこの現象が広く知られており、古くから伝わる呪いであることが判明した。
ミケは「影の囁き」に関する集まりに参加することにした。そこでは同じ悩みを持つ人々が集まり、互いの体験を語り合っていた。
「にゃんでこんなことが…」彼らの話を聞くうちに、ミケの不安はますます大きくなっていった。集まりの中で、ある人物が呪いを解くための儀式について話し始めた。
その人物は古い神社に伝わる特別な儀式で呪いを解くことができると語った。ミケはその神社の場所を聞き出し、呪いを解くためにその儀式を行う決意をする。
「にゃんとしても、あの影から逃れなければ…」ミケは一人、神社への旅立ちを決めた。
ミケは廃墟と化した古い神社にたどり着いた。夜の闇が深まり、風が木々を揺らす音だけが響いていた。
「ここで呪いを解かないと、影に取り憑かれ続けるにゃ…」ミケは恐る恐る神社の扉を開けた。
神社の中は薄暗く、埃っぽい空気が漂っていた。ミケは儀式の準備を整え、古い巻物に記された呪文を声に出して読み上げ始めた。その時、影がミケのすぐ背後に現れた。影の囁き声が耳元で響き、それは意味不明な言葉でミケの精神を激しく揺さぶった。
「にゃ、こんなに近くに…」
影は形を変え、次第にミケに襲いかかろうと迫ってきた。ミケは恐怖に震えながらも呪文を唱え続けた。
「これで終わらせるにゃ!」囁き声はますます大きくなり、ミケの耳元で絶え間なく響いた。精神的な圧力に耐えながら、ミケは儀式を続けた。
影の囁き声はさらに強まり、ミケの頭の中でこだまし続けた。
「にゃ…もう限界にゃ…」それでもミケは諦めず、全力で呪文を唱え続けた。
儀式が最高潮に達し、影はミケに襲いかかってきた。
「これで終わりにするにゃ!」ミケは全力で呪文を唱え続けた。影の囁き声が耳元で響き渡り、ミケの精神を揺さぶり続けたが、ミケは決して諦めなかった。
突然、影は光の中で消え去り、神社の中は静寂に包まれた。ミケはその場に崩れ落ち、深い安堵の息をついた。
「やっと…解放されたにゃ…」影の恐怖から解放されたミケは久しぶりに安心感を感じた。
しかし、数週間後、ミケは再び不気味な感覚に襲われた。夜中に目を覚ますと、部屋の隅に微かな黒い影が見えた。
「にゃ…またか…」影は再び囁き始めた。ミケは立ち上がり、再び影に立ち向かう決意を固めた。
影の呪いは完全に消え去ったわけではなく、ミケの生活に再び忍び寄ってきた。