サクラ咲く季節に、さくらは散りゆく ③
ある日、さくらが水飲み場の前でしばらく固まっていた。
よく見ると、朝あげたご飯も食べていない。
フードを変えてみるものの、食いつきも悪いので1度病院に連れていく事に。
診断の結果は………
白血病の発症。
前に効いていた薬を投与しても、新しく認可された薬を投与しても、さくらの体調は一向に良くならない。
病理検査で改善するかもしれないとの事で、検査してもらい、結果を見て合わせた薬を投与してみる事に。
その間にも、さくらの体力はどんどん落ちていって、とうとうトイレにすら自分で行けずに粗相してしまう事も。
当然、食事も受け付けないので、栄養剤を点滴するためだけに病院と家を行ったり来たり。
そんな事が続いたある日、たまたま担当医がお休みで、代わりに診てくれた院長先生が重い口を開く。
「正直、さくらちゃんの回復は難しいと思います。点滴のためだけに往復するのも、費用も色々と大変だと思います。覚悟、と言いますか、最期くらいはお家でゆっくりさせてあげてもいいんじゃないかと。厳しい言い方になってすみません」
言葉にならないほどショックではあったが、いつもなら色々と試行錯誤してくれる先生がそこまで言うのならば、きっとさくらの命もあとわずかなのかもしれない。
その日の夕方、さくらにそっと声をかける。
「今までありがとう。辛い思いさせてごめんね」
「でもさ、あと1つだけワガママ聞いてくれないかな」
「もし天国に行くならさ、パパが家にいる時にしてくれないかな」
「仕事から帰ってきたら天国に行っちゃった、っていうのは寂しいじゃん。最期まで一緒にいさせて欲しいな」
明日も早朝から仕事があるので、看病を妻に任せて就寝する。
そして、その日はやってくる。
夜11時頃、妻に起こされる。
「さくらが痙攣してる!瞳孔も開いてる!」
慌てて駆け寄り、夫婦で声をかける。
ありがとう、よく頑張ったね、そう言いながら、夫婦でさくらをそっと抱き締める。
少しづつ、呼吸が細くなっていって、
2007年の3月22日、もうすぐサクラは満開になる季節なのに。
さくらは天国へと旅立っていった。
さくらが亡くなってから、もう15年ほど経つが、今だに後悔する事が多い。
結局、病理検査のために毛を剃ったところは生ええなかった。
自分達のエゴではなく、さくらに寄り添うならば、治療をしない、という選択肢もあったのかもしれない。
色々と思う事はあるし、きっといつまでも考えてしまうのだけれど、さくらが幸せに過ごせたのかな、なんて思う事にする。
さくらが亡くなり、我が家に訪れる静寂。
家ってこんなに静かだったのかな、と思うほどに。
妻がペットロスにならないように、休みの前日からネットカフェで過ごし、特に何をするでもなく1日を過ごして終わり。
そういった日々が続いたある日、ふっと思い立って、お世話になった病院のホームページを覗いてみる事に。
そこで、私達夫婦は運命の出会いをする事になる。
続く