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「灯す」から「いつも悲しい」までの解説のような

溜めに溜めた詩の解説のような、
のnoteです。


血は熱く
筋は動く
ためらいはなく
心の恥じらいは
ラインを越えて吸い上げられていく
その色は腕に
手の指に
刺せば灯る色に通じる

私はひとでありました
私の手のひらはほのか太陽を透した色に
編み上がっております

「灯す」

自分の体が人間だと、
やっと認めていくような詩を書くようになりました。
結びがけっこう気に入っています。

わたしというやつはとんちきで
まんまの天邪鬼

勤勉な人間ではないから
はじめたことはおわりまで
きちんとやることを決めて
終わらせるまで順々に進む

きっと一度でも手をとめたら
ああ 一度でも息をついたら
拝めるものも拝まずに転がってたくさんの日に焼かれただろう

続けたことは続けたかったことだった
どれかひとつに成り得ない
どれにもにこの全てを傾けてきた
どのひとつも甘くはないから

私はまた進む
ひとつ越えては
明日の着地点をおぼろに描く
私か私か私を長く愛してあげられるように

ようようと腕をひらく

「洋々」

私の世界を動かしているエネルギーは、
ひとつではありません。
だけど、
その全部にかける気持ちはけして半端な気持ちではないという、
そのままを書いた詩です。

ママはたくさんのキスをくれる
ほおに
ひたいに
ときどき うでをかんだり
ひっくりかえった 僕の足うらにも
キスをしてくれた
くすぐったくて
たくさんわらった
けれど
どうしてママの唇は
ひとりだけの場所なのだろう
いちばんあかくて
いちばんおいしそうで
たぶんきっと いちばんやわらかいのだろう
僕のママ
あと何回あとに
くちとくちをくっつけるの
それはきっと神さまの祝福の音が
聴こえるキスだと
僕は思うんだ

「僕のキス」

男性の母親への許す精神、慕う手足、瞳が追いかける事情はどういった伏線なのだろうと、いつも考えてしまいます。
自分の心を探っていくとき、
けして出てこないものがそこにはあるように感じて。
だから時折、どこかの僕の話を書きたくなるようです。

ビードロのような薄青の空
泡より白い雲を浮かべて
ゆっくりと動いている
まだ 明けて暫しの空

君の話し方に似ているね
君の横顔の静かさにも
または 私に振られた
君の手首の儚さみたいでもあって

気づいたら寂しいから
瞼を閉じていたいのに
白い闇がどうしてもと
私の腕ごと掬い起こす

ためらいひとつない うつくしさ
かつてを洗う あたらしさ
涼やかな青に身は沈んで
私の手の甲は少し君と似ていた

「今だけの青」

朝がゆっくりと進んで行く。
その様子のなかで思い出の中の君を、
ここにいて欲しいと頭に描く。
そういう詩です。

この世界は混迷を続けている
それが逐一の完成でもある

この世界に在るものは
等分にうつくしい 傾けど

だからね
あなた
あなたが何をみて哭いたとして
なんの心配もいらないのよ

「昏々」

誰のための美しさなのか。
だからどれを見ても、観ても、視ても、
うつくしさを刈り取ることはないのよ、という詩です。

手を繋いで歩きましょう
あなたが好きだから

指を絡めて歩きましょう
私は歩幅を合わせますから
あなたは背中を丸めてください

どんな季節も歩くから
あなたの心は月までも
わたしの心はその思いでとして

さあ いつか いつか 月に着きましたら
次はまた頁を捲るように
星々のあいまへと歩いていきましょう

「手を繋いでください」

大切なひとと、
どこまでも歩いて行けるなら、
そういう願いの詩です。

私の糧に
私が映り込んでいる

あなたは私に成る
または流れていく私

まどろみのような輪郭
うとましいほどそっくりの

口を開ける 唇が光る
私はあなたに成る

「食べる」

食べるものは、
私だ。
私は、食べるものと同じだ。
そんなことを考えた詩でした。

想えば想うほど
重くなるおはようの

つなげばつなぐほど
冷たくなるさよならの

喉奥から叫び出したい
この心を空っぽの息だけが振り返る

手が年をとり
あなたが立ち尽くす毎日を

誰も呪いたくはない毎日を
砕けそうな指を涙が湿らせてとどめる

あなたにあいたいだけの私が
頬に広げる滑り止め

私はまた一秒を越える

「あえない、重い」

会えないほど愛は重くなってくる。
けして会えないと思えば思うほど。
日常の世界には積み重ねてしまう想いがあるのではないかなと。
いう、詩です。

あなたは少し猫背で
気が付くと少し恥ずかしそうに
背筋を伸ばす

うすい胸も
細い腕も
病にひたされた肌だってうつくしかった

あなたは笑うと口を大きく開けてた
あなたは甘いものが好きで
仲良しのちいさな友達と食べるのが好きだった

平らな額は白く
まっすぐな髪は細く
真っ黒な瞳はきらきらしてうつくしかった

私が褒めた指の形
光に透かした不思議そうな顔
誰も壊せないと信じたい人だった

あなた

「とおくひとり」

どんな手でも、
誰に何を言われても、
壊れない人がいた。
うつくしいの基準をわたしに植え付けたような、
静かで信じがたいほど寂しい人でした。
何度詩に書いても、
また書きたくなってしまうひとなのです。

いつも悲しい
いつも悲しい
わたしの割れた部分は鋭いまま
誰かの血で固まっている

触ることができない
生々しさはもうない
それでもうすらいでいく影さえ
私はあなたの死に圧される

いつも悲しい
いつも悲しい
そんなことを誰にも言うものじゃない
「あなたってほんとに恥知らずの恩知らず」

足らなかったもので家は建てられた
欠けたものを喉は通せない
ありえたはずの未来は今確かに
ありえない今に成っていることに

気付くことが悲しい
毎々恐ろしいほど悲しい

いつも悲しい
いつも水際でただひとりだ

「いつも悲しい」

時間が癒してくれるもの、
というものは確かにある。
殆どはそうであると思う。
でもそうはならないものはある。
これはそういう詩。


以上、詩の解説のようなものでした。

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