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「秋は起き」から「咲くように」の解説のような
昨日の詩も入れて、
10編になったので、
再びの詩の解説のような、です。
では、どうぞ。
音も無く私を包み込んだ秋は
あまりに寂しい穴を突き付ける
この年の夏の死を
否応なしに広げる
ここから私は生まれたの
四季の巡りのうつくしく
残酷な物語を思い起こす
秋を待った私と
分かち合いたいと秋はおもっている
愛した夏の穴の空いた腹を
撫でてくれと請う
静かの間に冷たい風が通り抜け
腹の傷を風化させていく
増々つよくすすめる弔いに
私はぽつりぽつりと語り掛ける
ああ夏よ
お前の秋は
疎まれずに生まれたのよ
透明へ溶けていく夏に私も指を沈める
お腹に大穴を開けた夏の死を、
秋と分かち合いたいと、
互いに互いをもたれ掛けさせながら、
静かに時を落としていく、という詩です。
米を研いだ水を捨てていると
私はこんなにも澄んだものを
捨てていいのだろうかと
疑問と恐れがわく
細やかな汚れを取り除いた
浄化へと進化させるようなことが
ここでは行われているのではないか
そしてその聖水のような何かを
私はまたしても汚れのなかへ押し流している
ように思ってしまう
これは罪かと問う
しかしどうだろう魂の裏側は
それを否という
聖水のようなものをひとが持っては
いけない、
と言い含む
それはそうだ、確かにそうだ、と
私は頷く
そしてまた米を研ぐ
お米を研いだ水って、
きれいだな、と
思います。
こんな雲が空にかかっているとレースの繊細さを思わせる。
飲めば何か体の悪いものを一緒に流してくれるような気がする。
全部気がするというだけ。
それでも、
時折、思う事だったので詩にしたかったものです。
ずっと隣にいた
声を掛け合うほどじゃない
花を愛で
嵐は被った
朝日を浴びて
ただ遠く
遠くへと視線を投げ放っていた
隣にその目があったから
見つめる先はあったのだ
目を合わせることはなくとも、
歩んでいく私がいる。
隣りを見ることはしなくても構わない。
だからこそ見つめる先を失わずにすんだ、という詩です。
逃げていく
月を
追いかけていく
手はありますか
水滴の呪い
太古の言葉
引き寄せあったものたちの心の破片は
網となるでしょうか
逃げた月は
私を
淋しく思いはせるでしょう
つよく
そのとき天にどれほどの哭き声が吸い込まれても
塗り潰せない黒を刷いてしまう
そして私は月の影に
この身の影を覆いかぶせて見送るのです
ちょっといつものわたしの詩とは違うかもしれません。
いつもの泉ではないところから汲んだような気がしてしまう詩です。
経験は
知恵と
対等ですか
どちらの手が白く
どちらの手がぬくもり多いか
争うのでしょうか
あなたは私ではないことを驕り
私はあなたではないからこそ微笑み
あなたは唯一のひとりだと言うでしょう
満たされたことを幸せと呼ばせようとする
その手は要りません
足りないことの暴力を愛という瞳もあるのです
愛という名はどこにも溶け、
それも少量で色を染めていく効果を持つ。
咲きなさい
失くさないために
生み出しなさい
私を個と認めさせるために
映り続けなさい
その瞳に数多のあなたは生きる
愛し憎しむ
心の絵の具と混ぜ続ける
いつかすっぽりとあなたを包む
しっかりとした闇を育てるの
今、
手を伸ばせることは全て伸ばして生きたい。
そうでなければ、
どうでもいい暗闇に吸い込まれて長く目を閉じることになってしまいそうで。
だかた必死に闇すら描く。
自分の身を覆う闇の彩を知っていたかった。
という詩です。
あなたが私に全てを求めるから
妻として母として女として
要求は揺り返すから
私はいつかその手を死が引いた後
すぐに誰かを選ぼうかしらと考える
あたなを粗末に扱って薄い笑みだけ整える
あなたが私の女の処女性を奪ったことだけに拘るために
それをさらりと棄てる宵に
私は高らか靴響かせて薄く笑みを深める
夫という生き物は、
家では夫という顔をしないような気がする。
まるで少年。
社会の荒波に疲れて憩いを求めて巣を求めているような気がする。
受け入れることを願われる。
女のやわらかさはその為だと考え違いをしているような、
気がしてしまうなぁ、という詩。
人波が頭の中を通り過ぎる
声 声 足音 斜めの生々しい音
気が短いわけじゃない
この気圧が苦痛を何倍にもする
人と人との挨拶も
像を結ばない
影がにやりと口をまげて
放たれたいるはずの言葉を曲げる
終わればいい逃げればいい撒いてしまえば
走り出せば好奇の眼の一瞬を振りほどいて
立つ瀬を崩す それでも 溢れてしまう前に
腰は微かに浮かび出す
人波の中の自分の浮遊感。
足が地面を蹴れないの。
仕方ないので息を止めて、
身体を重くする。
逃げ出すためには、息をしないといけないのに。
立ち止まれ
何処か分からない道の端
息を止める歩き方をするな
全てをおろそかに
歩くことは愚かだ
頭の中の水分まで放り出してどうする
苦しい舌を吐きだせ
涎に毒を混ぜて
殺される前に
立ち止まれ
お前は殺人未遂だ
人波のパニックの続き。
息をしているのに、
息ができていない状態。
波に押し流されるともう、
私は私を殺してしまう一歩手前まで進んでしまのです。
水が流れるように
灯火が役目を終えるように
その頭の中のパズルが完結を飾るように
今の今が
閉じるはずのない扉の前へと
咲くように
扉の奥へと閉じていく
静かに閉じていく、
その最中を書きたかった詩です。
以上、詩の解説のような、でした。