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きみは私を喜ばせたい

一昨日のことでした。
次男が仕事から帰った私に、
一冊の本を差し出して言いました。

「母、これ、読みたがっていたでしょう?
図書室にあったから、借りてきてあげたよ。
僕はもう読んじゃったから、読んでいいよ」

それは『おてがみ』で有名な
アーノルド・ローベル作、三木 卓訳の、
かえるくんとがまくんシリーズの本でした。

たしかに私はこのお話が好きで、
次男の教科書に載っているので、
本読みの宿題の時にそんな話をしていました。

それを覚えていて、
彼は自分が借りたいものよりも私が読みたがっていたものを借りて来てくれたのでした。
それも“先にもう読んだから”という気づかいまでして。

いつまでに読めばいいかを確認して、
私はその本を借りたのでした。

その本を受け取り、
私の部屋に持ち帰りながら、
ふと、私は彼に対してもっていた不思議がひとつ納得できたことに気付きました。

私は、嘘を吐かれるのが嫌いです。
なかなか嘘を吐かれて喜ぶひともいないのでしょうが、、、
とにかく次男はよく、どうでもいい嘘をつく子で、
それを私はよく怒ってきました。
最近は大分ましになりましたが、
ちょっと気を抜くと、
すぐに「宿題はもう終わった」とか、「今日はお手紙はなかった」とか
嘘をつきだします。
「じゃあ、できた宿題を見せて」
「ランドセルの中を見るけどいい?」
というと、とたんに
「やっぱりまだだった!」
「忘れてた!」
と急いで訂正してきます。
そんな秒でバレる(それも毎日、、、)嘘をなんでつくのか。
それも“嘘を吐かれるのが嫌い”“嘘を吐く子は嫌いになる”と言っているにも関わらず。

次男は、物凄く私が好きです。
なんにもしていないのに、母を贔屓してしまう子です。
好きな物でも、私が欲しいと言えばくれる子です。
(もちろん、もらいません笑)
母に「かわいい」と言ってもらうことに、全力を傾ける子です。
そんなに好きなのに、何故私の嫌がることをするんだろう、
ということが、私にはけっこう真剣に謎でした。
ですが、この本の一件で、
ふと、分かった気がしたのです。

ああ、
この子は私を喜ばせることに興味があるけれど、
私を困らせること、嫌いだということをしていることには興味がないのだ、と。

私の好きなキャラクターと知れば絵を描き、
私の好きな歌を覚えて歌ってくれようとしたり、
私の好きな本を借りて来てくれたり、
いつでも私の意見を尊重してくれようとしたり。
ちょっと献身を感じるくらい、彼は母が好きなのです。
だから、喜ばせたい。
そっちに興味が全振りしていて、
私に嫌われる行動にまで気持ちがいかないのだと、
やっと分かりました。
喜ばせる方は、きっとテンションも上がるのでしょう。
彼自身も楽しく感じるのだと思います。
だから、やりたくなる。

でも宿題をすることは面倒くさい。
とりあえず嘘ついておこう、となる。

いや、それもまあまあ面倒だと思うけど、、、

とりあえず、ちょっとすっきりした気持ちで、私は貸してもらった『ふたりはともだち』を読んだのでした。

このお話も、
お互いがお互いのためにしてあげたいことを全力でする二人のお話ですよね。
何回読んでも、『おてがみ』は視界がかすむくらい好きでした。



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