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香港旅 2025.1 (3) M+ (現代美術館)

今回の香港旅では、アジア初ビジュアルカルチャーミュージアム「M+」にもぜひとも訪ねてみたかった。こちらには、香港到着の翌日の午後、角野隼斗公演の初日1/4(土)の前に行った。

ブランチ

M+に向かう前、宿泊先があるWan Chanからトラムで、ミシュランガイドに常連で掲載されているお粥専門店に行った。トラムに乗車の際には2階に上がり、上から街を観察するのを楽しんだ。

今回の旅で気に入ったトラムたち(2階建路面電車)

朝6時くらいからやっているお粥屋は屋台っぽい場所に多いみたいだが、私はこの日の午前中、ちょっと胃腸の調子が良くなかったため、今回は屋台ではなく通常のお店タイプのお粥屋を選んだ。

靠得住粥麺小館

常に行列ができているといくつかの記事に書いてあったが、私が行った13時前後は誰も並んでおらず幸運にもすぐに入れた。魚の出汁が美味しいと言われる魚の切り身粥と青野菜を食べた。お粥はなかなかのボリュームでやさしい味付けだった。温かい豆乳込みで、以下2,000円くらい。

かき混ぜると魚の切り身がたくさん出てくる

M+までの道のり・概要

お粥屋からM+まではMTRを2本乗り、九龍駅から徒歩10分くらい。駅から道に迷いやすいという記事を散見したが、私が行った1月4日は全く問題なくスムーズに到着できるように整備されていた。九龍駅から地下の標識に従いブランド店が並ぶデパート内を歩いたら、橋に出てすぐだった。M+の周りは開発ラッシュだった。

九龍駅直結のデパートから外に出たら橋がある

西九龍文化区に位置するM+は、20~21世紀のビジュアルカルチャーに焦点を当てたアジア最大級の美術館らしい。建築自体が斬新で一見の価値があり、豊富なコレクションは、世界中から注目を集めているようだ。

逆T字型のユニークな外観
M+のエントランス

建設の経緯・設計者

調べてみたところ、M+は、香港の文化的なランドマークとなることを目指し、西九龍文化区開発プロジェクトの一環として計画されたとのこと。2012年からコレクションの収集を開始し、何度かの延期を経て、2021年11月に待望のオープンを迎えた。

M+の建物は、世界的に著名な建築事務所ヘルツォーク&ド・ムーロンが設計を手掛けた。彼らはロンドンにあるテート・モダンや北京国家体育場(鳥の巣)など、さまざまな象徴的な建築物を生み出してきたことで知られている。

建物の注目ポイントは、1)地下を走るエアポート・エクスプレスのトンネルを覆うように建てられた構造、2)ビクトリア・ハーバーや香港島を一望できる素晴らしい眺望、3)ファサードに設置された LEDシステムによるダイナミックな光の演出などである。

2)については、常設展がある2階の展示スペースの窓や3階の外の広場から楽しめた。3)については、前夜にビクトリアピークから鑑賞できたが、写真では光の演出が特定しづらいため、こちらに載せるのは断念。

M+3階(外広場)からの
ビクトリアハーバーと香港島眺め

M+の入場

先程のエントランスでチケットを購入後、大きな荷物は1時間2ドルで預かってくれるロッカーがある。私は夜のコンサート前にホテルに戻り、着替える予定もあったため、混んでいた特設展は諦め、2階と地下の常設展のみのチケットにした。

建物の見所(内側)

展示物のみならず、建物内の大胆な吹き抜け空間や廊下なども見所として堪能できる。

上の2枚、左下はお気に入りの吹き抜け空間

常設展の見所

M+のコレクションは、絵画、彫刻、デザイン、建築、映像など多岐にわたる。中国現代美術のコレクションは、中国の社会や文化を反映した作品群を包含し、アジアの現代美術は、日本、韓国、東南アジアなど、多様な地域の作品を紹介している。

中国・アジアの現代美術の作品の一部

デザインと建築のコレクションは、日用品から建築模型まで幅広いジャンルの作品を展示している。私が特に気に入った作品は、李禹煥(1936年生まれ、韓国、パリと鎌倉で活動)の石とステンレス鋼で作られたRelatum-The Mirror Road(2021/2024)だ。小石の上や鋼板を何度も歩いて私も新しい一年の生き方についてしばし模索してみた。

小石の上に立ち、磨かれた鋼板でできた反射する道を歩く。周囲と溶け合う自分の姿を観察し、岩の永遠性と、自分の体や都市の風景からより広い宇宙まで、すべてのものの相互関係について瞑想する。タイトル「Relatum」が示唆するように、この作品は特定のオブジェクトではなく、アートワーク、鑑賞者、周囲の空間のダイナミックな関係に焦点を当てている。

現地の作品紹介文より(和訳)
李禹煥/Relatum-The Mirror Road 2021/2024
別の空間にあった作品のうち、赤と白の物を並べてみた

映像のコレクションは、実験的な作品から商業映画まで様々な映像作品を網羅しており、映画館も備えている。映像コレクションは、A.A.ムラカミの浮世絵を立体的に見せた作品に感銘を受けた。

"Beyond the Horizon"

浮世絵は、1600年代から1800年代にかけての日本の美術様式で、幻想と現実を融合させ、美、詩情、そして別世界の風景を描いたものだが、A.A.ムラカミらはこの浮世絵を独自の解釈で表現していた。彼らの作品「Beyond the Horizon」は、浮遊する虹色の泡が雲に変化していく様子を、五感を刺激する作品として表現していた。泡は人生のはかなさを示していたようだ。大人も子ども、泡が生まれては消えていく映像に魅せられており、私もしばらく見入った。

現場にあった解説によれば、A.A.ムラカミは、これらの作品を通し、テクノロジーを用いた環境がどのようにして儚い体験や相互作用を生み出すことができるのかを探求し、物理的な世界と仮想世界がシームレスに共存する未来の可能性について、私たちに熟考を促している。A.A.ムラカミは、アレクサンダー・グローブス(1983年生まれ、イギリス)と村上梓(1984年生まれ、日本)による、東京とロンドンを拠点とするアーティストデュオで、彼らはStudio Swineとしても活動しており、Studio Swineでは現代的なデザインを、A.A.ムラカミではアートインスタレーションを制作しているとのこと。

M+は、アジアのビジュアルカルチャーを世界に発信する拠点として、これから重要な役割を担っていくのだろう。展示物も建物のなかの吹き抜け空間にもさまざまな刺激を得ることができた。また機会があれば再訪し、今度は特別展やなかにあった雰囲気のいいレストランで食事をしたり、周辺の文化地区を散歩してみたい。

M+を出る時には日が暮れ始めて、ライトに灯りが!

(終わり)

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