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気高き敗者

試合に負けて、ラグビーで勝った。ピッチの敗者は、最後までラガーマンだった。赤く燃えるジャージーはたくましかった。

高校ラグビー三重県大会決勝が5日、鈴鹿市の三重交通Gスポーツの杜 鈴鹿で行われた。朝明(四日市市)が四日市工業に35-24で勝利し、12年連続14回目の優勝を果たした。

https://rugby-rp.com/2023/11/06/domestic/106193

色づいた木々に囲まれたスタジアムに歓声が響く。13時15分、晴天の下、キックオフ。高校生活のすべてをラグビーに捧げた彼らの戦いが始まった。

白子駅からバスと徒歩で向かった三重交通Gスポーツの杜鈴鹿、遠かった…

ラグビーマガジンのA記者と記事の狙いを打ち合わせ、前半を四日市工業のアタック側で撮影した。

「四日市、2年生の代がとにかく良いんですよ」。そう話すA記者の顔が、期待に満ちていた。10年以上もその座を譲ることなく三重の頂点に立つ朝明、その牙城を崩れるかもしれない。カメラとレンズをセットしてピッチに向かった。

ただ、思う通りには行かないもの。前半から朝明の猛攻で点差は開いていくばかりだった。四日市工業も鋭い攻撃を見せるものの、あと一歩届かない。もどかしいまま、あっという間に前半を終えた。スコアは21−3だった。

朝明のタックルするが何度も突き刺さる。その度にスタンドから歓声が飛んだ

控室に戻ることなく、ピッチ上で体を休める両チーム。四日市工業の円陣がやや静かなのが気になった。心が折れなければ必ずチャンスは訪れる。W杯フランス大会、フィジー対ポルトガルの試合のように。

ハーフタイム、四日市工業の円陣。静かに燃える選手たち

後半も立ち上がりで朝明がトライを決めた。「これで大丈夫だ」ーー。朝明の選手、ベンチ、スタンドから安堵が伝わってくる。安堵であれば、良かった。余裕は相手に突きいる隙となる。

四日市工業は粘り強くフォワードを走らせて朝明のゴールへと迫った。1本、2本とトライを重ねる。焦る朝明は退場者を出して14人となった。試合終了間際にもう四日市工業が1本トライを奪った。

幾度となく朝明の壁に向かっていった四日市工業

ノーサイド、気高き敗者の前に、勝者の笑顔はなかった。

良いラグビーを見た。最後はドキドキした。1週間前、フランスのスタッド・ド・フランスで南アフリカとニュージーランドの決勝戦を撮っていた時と同じく、興奮した。

もちろん体格やレベルの差はある。ただ、目の前にあるラグビーという競技の本質は変わらない。どう熱く戦うか、高校生たちの姿からはW杯の舞台と同じく、伝わってくるものがあった。

試合直後、両チームの選手たちの姿からラグビーの本質が伝わってきた

今週末(12日)は岐阜県決勝へ向かう。是非、彼らの戦う姿を見てほしい。きっと何か感じるものがある。

未だ現役、魔法のやかん
この日を楽しみに全国からOBが集まる。高校ラグビーの良き風景
スタンドで試合を見つめる部員たち。声を合わせてエールを送った
チケットのもぎりや場内アナウンスを担当した四日市農芸のマネージャーたち。彼女たちの存在も試合には欠かせない
部員たちの勇姿をカメラに収める四日市工業のマネージャー
最後までラガーマンだった四日市工業

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イワモトアキト
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