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EtB エッセンス2 「コスト」

Enter the Battlefields,〜TCGで学べる7つのビジネステクニック〜

#創作大賞2024 #ビジネス部門

▶コストのないところに、何も立たない

TCGでは何をするにもコストが必要

 TCGでは何かを行動するとき、必ずコストを支払わなければなりません。たとえば、MTGでは「マナ」と呼ばれるエネルギーを発生させて、その力を利用して、魔法を使ったり、魔物を登場させたりします。つまり、カードをプレイするのです。コストはこのようなエネルギー体だけではありません。時間(ターン)をコストとして費やすこともありますし、戦士を生贄にして強大な魔法を唱えたり、ときにはプレイヤーのライフ(ゼロになるとゲームオーバー)を費やしたりもします。遊戯王でも高位のモンスターを呼び出すには、下位モンスターを数体、生贄に捧げたりしています。

コストがかかることでゲームバランスが保たれる

 強力な魔法を使用するには大きなコストを、小さな効果の場合は小さなコストを、それぞれ支払うようにさせることで、適切なゲームバランスが保たれます。また、中には低コストで強い効果をもたせることがありますが、こういうコスパの良いカードは少ない出現率にしてレアリティ(希少価値)を高めることが一般的です。だからたまにコモンカード(下っ端カード)で、「あれ?」っていうぐらいに低コストで高い効果を発生させられるカードが登場すると、その時期のゲーム大会を席巻したりします。あまり強すぎるとそのうち使用が制限されたり(デッキに入れられる枚数が抑えられる。通常は4枚までが一般的)、昔のカードで強すぎるものが使用禁止に指定されることもよくあります。いずれにしても、魔法や召喚など、TCGでは何をする場合にもコストを意識せざるを得ません。

現実世界はゲーム以上にコストにシビア

 想像上の世界なら、無限機関も稼働するし、ダークマターを燃料にした魔王エンジンも可能でしょう。しかし、我々が住むこの世界は、質量は保存されるし、慣性の法則もバリバリ効いています。なんらかの動力源、エネル源なしに、ものは動きませんし変化しません。人間もそうです。行きている以上は飯も食うし、家にも帰るし、生活するし、セックスもします(個人差あり)。これらの生命活動には当然コストがかかります。ただで飯は食えても、食料はただでは入手できません。あなたが無料で食事にありつけたとしても、それをあなたの前に用意するには誰かが相応の金を誰かに支払っています。それは税金かもしれないし、大富豪のポケットマネーかもしれませんが、ただではありません。金銭が発生しないからといってノーコストというわけではありません。待たなければならなかったり(時間コスト)、自分で料理しなければならなかったり(労働コスト)、なんらかの形でリスクを負わなければならないのです。

コストの発生しない業務は、架空の業務だけ

 ビジネスも同様です。ビジネスでは1つの事柄を除いて、すべてになんらかのコストがかかります。重要なのはそのバランスです。1つの業務を行うにあたり、スケジュールに余裕をもたせればコストは下がります(労働コストが増える場合を除く)。逆に特急料金であればコストは上がります。あなたがクライアントで、下請けが同じコストで急ぎの仕事を引き受けた場合、下請け企業が急ぐことで発生するコストをかぶってくれているというだけのことです。決して神の手によって不思議と同じ価格になったというわけではあありません。時間も人も、使えば使うほど費用は嵩むものなのです。ただ唯一、ほぼコストなしで業務を推進できるものがあります。実体のない架空のお話の場合。妙に安かったり、納期が早すぎたり、そういう現実離れした事業計画を見させられたら、できるだけ早く関わりを断つほうがいいでしょう。逆にコストがあることで、ある程度実体のある話だということがわかったりします。実際、呼び水として少しのコスト負担を求める詐欺の手口もありますね。信憑性を演出するテクニックというわけです。

 CASE STUDY "Cost"

では実際にありそうな、あったかもしれないシチュエーションを見てみましょう。

課長「ナカヨシくん、ちょっとこれ見てくれないか」
仲吉「はい。これは秋のイベントのパンフレットですかね」
課長「出来栄えがいまいちなんだよねえ」
仲吉「まあ、ぶっちゃけ言うとだいぶひどいですね。雑というか適当というか、強いていえば、安っぽいの極み」
課長「お前もそう思うか。うーむ」
仲吉「どうしちゃったんですか? 去年はわりといいパンフレットだったような」
課長「サトウ部長が昇格したのは知ってるよな。元広報部の」
仲吉「ええ、まあ」
課長「後任がサトウ常務と同期のワタナベさんでなあ。いちいち対抗意識が飛び出るのよ。それで、センスでは勝てないもんだから、コストダウンだ! って言い出して、それで上がってきたのがコレ。俺の同期がワタナベさんの部下で、振り回されて泣きが入ったってわけだよ。まあ俺が横槍入れてもどうもならんとは思うんだがね」
仲吉「コストですか」
課長「コストカットはいいけど、クオリティ下げたんじゃ意味ないよな。別に赤字のイベントじゃないんだし」
仲吉「そうですねえ、クオリティを下げずに安くするにはコツがありますよね。それがわかってないとこうなるわけで」
課長「ほうほう」
仲吉「同じクオリティのものを作る場合、同じだけお金をかければ、同等のものができるとします。まあ実際は必ずそうなるわけではないですが、そうなると仮定してください」
課長「うむ」
仲吉「金をかけるか、人手をかけるか、時間をかけるか。このトータルで一定以上をキープしないとあとはクオリティを下げるしかなくなります。つまり、金がかからないようにするのであれば、こちらで受け持つ範囲を大きくするとか、制作期間を長く取るとか、そういう工夫がないとダメです」
課長「なるほど、キミの言う通りかもしれない。ワタナベさんは、費用を安くさせておきながら、制作会社に丸投げのまま、納期も融通させるどころか、内部調整に手間取って逆に急がせたと聞いている。となれば、この出来栄えも当然ということになる。なんということだ。しかしキミはどうしてそんなことがわかるんだい」
仲吉「先日MTGをやりましたよね」
課長「ああ。教えてもらってよかったよ」
仲吉「マナコストだとか、生贄だとか覚えていますか?」
課長「そうか。MTGだと何をするにもコストがかかっていたな」
仲吉「そうなんです。コスパのいいカードはレアカードなので、入手コストがかかりますから、ゲームの内外でコストの法則は続いています」
課長「これはワタナベさんにもMTGやらせたほうがいいんじゃないかな」
仲吉「それはw」

 ということで、ワタナベ部長も誘ってみたんですが、どうしてもトランプとTCGの違いがわからないようで、不公平じゃないか、不公平なんじゃないか、どう考えても不公平だろうと繰り返すばかりで、参加しませんでした。

現実のコストは置き換えができる

 MTGの中では、カードに指定されている種類のものしかプレイのコストにはできませんが、現実はもっと融通がきく世界であるので、金がなければ自分で手間暇をかけて実現する方法があります。DIYなどはその典型。また、新作のテレビゲームは高いかもしれませんが、中古を待てば安くなります。金銭コストを時間コストに置換した結果と言えるでしょう。このように、時間と人力、金銭は相互に互換できます。時間も人手もないときはどうすか。金にモノを言わせて解決すればいいのです。え?金も人手も時間もない? そんなときは空想で済ませれば、ノーコストでフィニッシュです。はい。

急ぐなら金を払え!

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