まりと日本の遊び
まりを作っていると、日本の昔の遊びを思い出すことがあります。
糸を長くとって使うときはあや取りを思い出しますし、紙テープを折っているときには折り紙を思い出します。
〈菊〉の柄のまりを作っているときは、折り返しのところがまるでお着物の襟元のようだなあと思います。糸の重なりが、半襟を重ねた着物のように見えませんか?
するっと糸を回しかけていると、まるでお人形にお着物を着せているような感覚になります。
思えばまりも、もともとは子供の遊具でした。
現在では綿や籾殻、あるいは発泡スチロールの球などで作っているため、全く弾まないのですが、昔はゼンマイという植物の綿を集めて作っていて、少し弾んだそうです。
『鬼滅の刃』にまりを投げて攻撃する鬼が出てきましたね。
イベントに出店していると、お子さんが近寄ってきて、「これ弾むの?」と無邪気に聞いてくることがありますが、(たまに大人の方も聞かれます)残念ながら弾みません。
弾ませて遊ぶのであれば、やはりゴム製のまりが一番です。
ゼンマイの綿でできたまりも、ゴム製のまりの出現によって消滅していったそうです。
本荘ごてんまりもそうですが、手製のまりは、子供の玩具からお部屋を飾る「飾り物」へ変化することによって、現代まで生き残ってきました。
現在ではその用途に加えて、身体を飾るアクセサリーとしての需要も高まっているように思います。
お部屋の「飾り物」になったまりは、必然的に実用性を離れて、ひたすら美しさと華やかさを求められるようになりました。美しく華やかなまりを見て、自分の身体に飾りたいと思うのは自然でしょう。
わたしも作っているまりの8割以上はアクセサリー用の小さなものです。
小さくして欲しいという要望にお応えするうち、直径1.4センチくらいまで小さくなりました。
そんな小さなまりを作っているときにも、「そういえば、まりも遊び道具だったんだよなあ」と気づくと、なんだか不思議な気持ちになります。