9/14 湯浅誠氏ミルハス講演
ミルハスで湯浅誠さんの講演を聞いてきました。
会場は人でパンパン、だいたいは高齢の方でしたが、若い人や30-40代の方もかなり混ざっていました。
湯浅さんは、長年貧困問題に関わってきたというか、困窮者支援をやってきた人です。
2008年に年越し派遣村で村長をやった人と言えば、思い出す人も多いのではないでしょうか。
あのときはリーマンショックで仕事にあぶれた人が続出し、加えてその年がとても寒かったことから、「もしかすると年を越せないかも」という人がたくさんいました。
湯浅さんは当時の政府に掛け合い、「とにかくみんな生きて年を越して欲しい」と、日比谷公園に困窮者のためのテントを建てたのでした。
生命の危険度で言えば、前まではそういう赤信号の人の支援をすることが多かったのですが、今は特定非営利活動法人全国こども食堂支援センター・むすびえの理事長として、子ども食堂を全国に広げる活動をしています。
それは、貧困問題が何よりも「予防が重要である」と気づいたからだそうです。
湯浅さんは困窮者支援をやる中で、極限まで追いつめられた状態で相談に訪れる、いわゆる"赤信号"の人たちにいつも思っていたことがあるそうです。
「なんでもっと早い段階で相談に来てくれなかったのか」ーー。しかし人は"黄信号"のときに相談に行こうとはしません。
誰も自分が問題のある存在だと思いたくないし、他人からも思われたくないからです。
だから本当のギリギリまで追いつめられた、赤信号にならないと問題が表面化しない人が多い。
だからこそ、子ども食堂のような場所が必要だと気づいたそうです。
湯浅さんの言葉で言えば、「黄信号の人が青信号のような顔をして来ることができる場所」が必要だと。
「子ども食堂」という名前ですが、子どものためだけの場所というわけではなく、皆さんもご存知のとおり、誰でも行っていい場所です。
湯浅さんによると、全国にある子ども食堂の2/3に高齢者が訪れるそうです。
大事なのは救済する対象を選別するのではなく、人との繋がりを作ること。
湯浅さんは、貧困とは「お金がないこと」ではなく、「お金がなく、その結果人との繋がりがないこと」だと言います。
誰にでも自分のことを気にかけてくれる存在が必要で、そういう存在のいない人が困窮するのだと教えてくれました。
「子ども食堂」の名前でやっているのは、困窮者支援をやっているなかで、子どもだけは周りの反応が明らかに違うと気づいたから。
大人の場合だと、自己責任論を持ち出されて「そんなの自分で何とかしろ」と言われてしまうのですが、子どもの場合は「それは大変だ」「本人の責任ではない」「何とかしてあげなくては」という反応が多かったそうです。
もちろん救われる人が多いに越したことはないし、そもそも極限まで追いつめられる人が出ないほうがよいですよね。
だからこそ、「青信号の顔をして行ける場所が必要」なんだそうです。
"赤信号"の人には生活保護など、行政による救済が効果的です。
しかし"黄信号"の人には貧困の予防が何よりも必要です。
具体的には人との交流、地域づくりなど。
それは行政より民間でやるほうが向いている内容です。
赤信号の人のためのセーフティネット、黄信号の人のためのセーフティネット、どちらかしかないより、どちらもあったほうが、こぼれ落ちる人が少なくなります。
とくに昨今は少子化や人口減少などにより、集落の寄り合いができなくなったところが増えたりして、地域の支え合う力が低下しています。
だからこそ、子ども食堂を全国に広げる必要があるのだそうです。
「貧困」はなかなか分かりにくいものですが、生まれた子どもの数と乳幼児健診にくる子どもの数を比べてみると、約2パーセントの乖離があるそうです。
秋田県だと、令和1年に4300人生まれた子どもの2パーセントは約80人という計算になります。
その2パーセントの子どもとその親を、なんとかして地域の人と繋げる必要があります。
今回の講演を聞いて、「なぜ困窮者支援から子ども食堂へ活動を変更したのか」「なぜ全国各地につくる必要があるのか」などの疑問が解消されました。
聞きに行って良かったと思いました。
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