見出し画像

星に射たれて

秋田では、不揃いな夏が訪れている。蒸し蒸しとした、湿った夏。お米の農家さんのあいだでは、日照不足を心配する声が広がっているとか。東京などでは、35度を超える暑さというから、まだマシなのかもしれないが、梅雨が終わったのかどうかもわからず、曖昧なまま、もしかしたらもうすぐ夏が終わってしまうのではないかとさえ思う。祭りもない、花火もない。2020年、秋田の夏。せめて広栄堂のかき氷くらい、食べに行きたい。

やはり、どうにもこうにも、仕事が忙しいようである。辛いこともあった。自分ではどうにもならないことがある。自分ではどうにもならないと、慰めるより他なさそうなこと。

そんな8月のある日の帰り道、ふと夜空を見上げたら、きれいな星が輝いていた。しばらく見とれていると、自然と言葉が浮かび上がってきた。こんな歳にもなって、年甲斐もなくポエジーで気恥ずかしいものだが、こんな日々の記録として残すことを、お許しいただきたい。


星に射たれて

心を無にしていたい
ときどき無性に
風のように消えたくなる
ふっと一息
誰の心にも留まらず そっと

どこにいたって追いかけてくる
期待や役割
応えなければ 果たさなければ
自分が生きる意味さえ
無いような気がして

そんな僕は

星に射たれた
夏の夜
心のど真ん中
貫いていった
気が遠くなるくらい
長い時間をかけて
いま 弾丸のように


ああ 辛い
もう生きていても仕方がない
何のために僕はいるのだろう
ずっと閉ざしてきた青春の扉
誰かが僕を覗き見ていた

自分が自分であるために
そんなわかりきったこと
それこそ風で吹き飛ばされる
あなたに承認される
その悦びが失われた瞬間に

そんな僕は

星に射たれて
夏の夜
心のど真ん中
貫いていった
ずっと見上げていた
どこか懐かしく
蒼くきらきらと 星の光


頭上には夏の大三角
デネブ アルタイル ベガ
ああ夜空は広く無限で 美しい
そして
南の空に輝く
あの星の名は・・・


誰にも評価されない
生きたいようには生きられない
失望を繰り返して絶望になる
手の届かないディスタンス
もう頭が破裂しそうだ

そんな僕は

星に射たれて
夏の夜
湿った風が
身体を包んだ
ただ立ち尽くしていた
道路の真ん中
見上げるばかりのきれいな星

星に射たれた
一人の夜
心のど真ん中
貫いていった
生きている
そう実感した
なぜかわからず
いつまでも眺めていた

夏の帰り道
暗闇に瞬く一筋の光で
僕の胸は満たされていった

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?