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[7] Nine Orchard @Manhattan, New York
滞在時期:2024年7月
より多くのホテルを体験する為に、同じホテルに泊まることは滅多にないのですが、Nine Orchardはまた泊まりに行くと確信しています。築年数100年以上の建築的特徴を活かし、ホテルに再生された、いわゆるヘリテージホテルです。ニューヨークらしい力強い西洋建築と、China Townという立地に絡めたオリエンタル要素の融合に、音楽・料飲などのライフスタイル的コンセプトメイクもしっかりされていて、個人的な「大好き」が詰まったホテルです。
歴史的背景
1912年築の元ユダヤ系の銀行Jarmulowsky Bank Buildingが、おおよそ10年間のフルリノベーションを経て、2022年にNine Orchardとして開業しました。ボザール様式と言われるアメリカン・ルネッサンスな建築様式は、ランドマーククラスの、本当に立派な建物です。
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DLJ Real Estate Capital Partnersが33百万米ドル(約52億円)で買収し、総額190百万米ドル(約300億円)かけて116室のラグジュアリーホテルに仕立て上げました。投資リターンにシビアなはずのファンドが、1室当たり3億円近いコストをかけた事は不思議ですが、抜け目のない完成度です。
マテリアルと圧巻のデザインセンス
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Nine Orchardに泊まって一番良かったなと思ったことは、マテリアル(材質)の力を感じたことです。写真でもわかる程、随所本当に良いマテリアルを使
っています。見るもの、触れるもの全てが、気持ち良いのです。ホテルの看板レストラン・バー、Swan RoomはTennessee marbleというピンクの大理石(アメリカのテネシー州でしか採れないらしい)、シルクファブリック、歴史的なディテールにパワーが宿る高い天井などで空間がつくられていて、息をのむ美しさです。
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最高品質のマテリアルを使う事は昨今のラグジュアリーホテルでも見られるトレンドですが、チェーンや老舗のラグジュアリーホテルのデザインはどこか保守的で、シンプルさに落ち着いてしまう印象です。逃げのシンプルさはともかく、考え抜かれた故のシンプルさにも感動はありますが、オリエンタルな華やかさ(派手さ?)をみせながらも、全く嫌味がないNine Orchardの共用部のデザインセンスには圧巻されました。
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お部屋の心地よさ
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部屋に入った時にびっくりしたのは、音楽がかかっていた事です。これ自体は、ホテルのテレビから音が出ていたりする事はあるのですが、ベット両脇の高い壁に取り付けられている、ニューヨークのローカル・オーディオブランドOJASのスピーカーによる高音質な演出に、テンションマックスにならざるおえません。
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プレイリストもいくつかのムードとテーマがキュレーションされていて「ご自分のデバイスをBlueToothでどうぞ」にはない、ライフスタイルへの引き込みを感じました。
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インテリアはとてもシンプルですが、こちらも全ての木材や石に触るとマテリアルの良さを感じます。合成をなるべく使わず、自然のもので綺麗なエイジングを図れるのは、お金をかけたホテルの特権です。
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宿泊費に含まれる料飲サービス
チェックイン時間〜17時には、コーヒーやお茶がSwan Roomで提供されていました。(18時の営業開始直後から満席になる程Hotなレストラン・バーに、宿泊客だけが入れる時間を設けている、場所の使い方が天晴れ)
17時からSwan Roomが営業開始する18時の1時間は、Corner Barのテラス席でナチュールワインのテイスティングがオファーされていました。
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Swan Roomではカクテルを一杯と料理をいただきましたが、ホテルゲストと認識されるとバーテンダーが「特別に」という顔でもう一杯フリードリンクを提供してくれました。(これは最近の高単価・ドレンディーなバーでよくある手法で、バーテンダーの気まぐれや私の魅力ではなく、隠れた緩めのマニュアルだと思っています。)
デフォルトで付いてくる朝食はCorner Barにて、アラカルトで頼むとまあまあなお値段がするメニューです。ウェイトレスさんに
”You can order anything. However many you want."(何個でも好きなものをどうぞ)と言われ、"Really?"と聞き返してしまいました。
"You can order everything on the menu if you want."(メニューにあるもの全部注文してもいいよ)と言われましたが、食べきれない量を注文しても良い雰囲気のレストランではないので、大きなコストはかけずにお得感を上手く提供しています。フードクオリティーはかなり高いですし、内装もニューヨークのイラストレーターHappy Menocalとコラボレーションしていて、ゆるエレガントです。
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Nine Orchardの宿泊費はUpper Upscale ~ Luxury の価格帯にはなりますが、「支払う価値があった」と思わせる内容が十分にあり、大変勉強になりました。そして同じ宿泊費を払っても「また泊まりたい」と思える、心からお勧めできるホテルの一つです。
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