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[3] Ace Hotel @Portland, Oregon

滞在時期:2019年12月

業界人ならば誰しもが敬意を持つ、ザ・クールなホテルブランド、Ace Hotel。

1号店は1999年にひっそりとシアトルで開業していますが、2006年に開業した2号店、Ace Hotel Portlandを皮切りに、現在は5カ国、10都市に展開しています。(私は今まで3か所しか泊まっていませんが、急拡大を目指すスタートアップやチェーンブランドとは異なり、どの都市でも時間をかけて立地の文化と向き合い、考え抜かれたホテルを創り出してきたイメージが強いです。)

これぞPortlandという光景

大手チェーンブランドから若いブランドまで、彼らのスタイルや空間の使い方を頑張って真似しようとしてきたホテルは少なくないはず。新卒でAceに就職した友人に、「なんでAceってそんなにカッコいいの?」と聞いたところ、「Authentic(頑張ってない)だからじゃないかな?」と即答。確かにこれには納得の体験が、Ace Hotel Portlandには詰まっていました。

まずは空間デザイン。Ace Hotel Portlandは1912年築のホテル物件をリブランドして生まれたので、モダンさは無い代わりに、古き良きボヘミアンな雰囲気が魅力です。部屋はピカピカのラグジュアリーホテルではなく、寧ろ粗く、男性的なカッコよさを由緒に感じます。共同創業者達が、Ace Hotelを始める前にクラシックなバーバーを展開していた事もあり、そのDNAだと思います。インテリアのペルソナは、物を大切にする地元のお洒落なシティーボーイの自宅といった感じです。

古いけど嫌じゃないお部屋
コンパクトながら4つ星ホテルの機能は完備
「お洒落だけど使いにくい」と言わせない踏み台

Ace Hotelが業界に与えた最も大きなインパクトは、ホテルロビーの概念だと思います。Ace Hotelが拡大する前、ホテルロビーはホテルゲスト用の空間という概念が当たり前でしたが、Ace Hotelはこれを地元の人々が好きに使って良い空間と定義づけました。結果、どこのAce Hotelに行ってもフリーランスやクリエティブクラスの人々を中心に、料飲部門に一銭も落とさずとも、パソコンや新聞を広げて好きにする光景が見られます。後にこの概念に感化され、大手チェーンホテルを含む様々なホテルが、共用部やロビースペースを地元民のサードプレイスとして設計するよう潮流が生まれます。

宿泊客以外にも開かれているAce Hotel Portlandのロビー
ロビーは近隣のカフェに直結
深夜のロビー。アナログなスピーカーとPhotoboothに心ときめく

何より印象的だったのはAce Hotelという名の知れたホテルで働いているのに、スタッフ達が全く肩肘張っていないところでした。
Green Neighborhoodを読み、Portlandという街に期待高々、興味津々だった私は、地元民目線を習得しようと自転車を借りて所々を回っていました。あそこの橋を渡ると、街の様子がガラッと変わったこと。ギャラリーや地元の家具屋、ヴィーガンカフェで食べた物の感想など、気づいたらホテルのスタッフに語りかけました。いいホテルのスタッフほど、観光客のテンションに合わせて「それならここに行くといいよ!」とアドバイスをくれるのですが、Ace Hotel Portlandのスタッフはダラダラと彼らの考えを語ってくれました。
ホテルスタッフ対ゲストといった感覚は全くなく、「親しい友人の友人」との会話といった距離感が、とても新鮮でした。これは後に泊まったAce Hotel KyotoやAce Hotel Brooklynでも共通するもので、スタッフがAuthentic(等身大)で居て良いよという、マニュアルよりもよっぽど難しいサービススタンダード。その浸透度に、脱帽です。

ホテルから借りた自転車
自転車道がど真ん中。PortlandのBikers Friendlyさ
社内のクリエイティブエージェンシーAtlier Aceはインテリアデザインやブランドディレクションだけでなく、常に新しいオリジナルグッズも制作
金のパネルを貼るだけでエレベーターすらカッコ良く見える
直営のレストラン。Food &Wine&Spiritsって記載しなくてもいいけどあると何か良い


後述:
Ace Hotelのアイデンティティーの第一人者であり、共同創業者Alex Calderwoodは、2013年に惜しくも亡くなっています。最近Ace Hotel Kyoto総支配人のセミナーに参加する機会がありました。従業員育成のお話でしたが、Aceがつくりだした世界は彼が亡くなっても、しっかりと引き継がれているのだなと、話の中で確信する場面が多かったです。多くの人に愛されるブランドをつくることの力と、美しさを感じた瞬間でした。


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