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消しゴム顔【毎週ショートショートnote】

「最近さ、みんな消しゴム顔になってきたよね」

放課後の教室で、美咲が唐突に言った。

「消しゴム顔?何それ」

「ほら、今ってみんなマスクしてるでしょ?それでその上から顔が覗いてて」

それのどこが消しゴム顔?

そんな僕の表情を見た美咲が、ぷっと頬を膨らませる…マスクの下で。

「だからぁ、顔が中身でマスクがケースと思えばさ。ちょうどケースから中身が出てる消しゴムみたいでしょ?特に四角いマスクの人は余計にね」

なるほど、そういう意味か。

「更に髪が黒くて短いと、先っぽだけ黒くなった使いかけの消しゴムに見えない?」

「…まあ、ね」

「それにマスクしてると、そこだけ日焼けしにくいから、どうしても肌の色が変わっちゃうんだよね。消しゴムもケース外すと中身白いでしょ?」

「…確かに」

ねえ美咲。
僕としては、君のそのマスクを外してみたいって誘惑に悩まされてるんだけどな。

でも今はまだよしとくよ。
君の友達リストの中から、僕の名前が消されちゃったら困るからね。



【あとがき】
消しゴムに顔を書くのか、消しゴムで顔を作るのか。はたまたそれ以外のナニかで攻めるのか。
毎週、料理の仕方に悩みますね。
さて「僕」は、果たして美咲ちゃんのマスクを外す栄誉にあやかれるのでしょうか…。

*この記事は、以下の企画に参加しております。

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秋田柴子
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