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モンブラン失言【毎週ショートショートnote】

「失礼ですが、大臣は学生時代からモンブランの万年筆をご愛用とか」

質疑応答で切り込む議員の口調は、ひどく刺々しかった。
対する大臣はまだ若い。過去に総理も輩出したというエリート家系の四代目だ。

「お若い身で平然とそんな高級品をお使いの方に、庶民の暮らしの苦労が判るものでしょうか」

そのとおりだ! と無責任なヤジが飛ぶ。してやったりとほくそ笑む議員に向かって、大臣は穏やかに口を開いた。

「仰るとおりです。実はこの万年筆、今は亡き恩師より当時頂いたものでして」

途端に議場がしんとした。

「恩師曰く『これに恥じない、ひとかどの人物になれ』と。その戒めとして今も常に身に着けております」

議員の顔が真っ赤に染まる。

「ただ同じモンブランでも、実は私、不四家のモンブランが大好物でしてね」

庶民御用達の菓子店の名前をさらりと口にした大臣に、世論は大喝采を上げ、件の議員の無礼を「モンブラン失言」と揶揄した。

「――おかげで世間の目を逸らせたよ。失言様々だな」

そう呟くと、大臣は銀座にある超高級店のモンブランを美味そうに頬張った。


【あとがき】
モンブラン、秋しばも大好きです。と言うか、栗菓子全般が死ぬほど好きです。以前、長野県の小布施に行った時は、街中至るところが和洋の栗菓子にあふれ、何とも幸せな気分になりました。
高級店のモンブランもいいのですが、黄色のマロンクリームがぐるぐると山盛りになった昔懐かしいモンブランを突然猛烈に食べたくなったりします。
それにしても、政治家の方々というのはいったい何枚の舌をお持ちなのやら。地獄の閻魔様も途中で嫌になるほどかもしれませんね(笑)


*この記事は、以下の企画に参加しております。


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秋田柴子
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