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呪いの臭み【毎週ショートショートnote】

「ねえ、オリジナルの香水作ってくれるお店があるんだって!」

美波の可愛いねだり顔に、つい俺の頬も緩む。

「当店では世界でただ一つの香りをお作りしますので、お二人の髪を頂けますか?」
「髪?」
「はい。仕上げにご本人の髪をひたすと、その方の魅力が香水と融合して唯一無二の香りとなるのです」

美波の目が輝く。
店主は俺たちの髪の先を切り取ると、手元の瓶に浸した。見る間に香水が鮮やかな黄金色に変わる。

美波はうっとりして、さっそく香水を俺と自分の手首に吹きつけた。
確かにいい香りだ。魅惑的でちょっと妖しげな。

喜んで店を出た途端、道行く人が一斉に振り返った。
やっぱりこの香りが……

「何あれ、くっさ!!!」

近くの女子高生が遠慮のない声を上げた。他も慌ててマスクを取り出したり、足早に逃げていく。

「え、なんで……?」

俺たちは訳も判らず、ただ呆然と立ち尽くすしかなかった。


「髪の持ち主以外には途轍もない悪臭になる呪いがかかっているとも知らず……妹の恋人を奪った女と、腐ったクズ男には似合いの香りだよ」

店の中で若い店主が顔を歪めて嗤いながら呟いた。

(458字)
*久々でオーバーしました。すみません。

【あとがき】
毎週ショートショートnote道場の皆様、お久しぶりです。
しばらく長編にかかりきりになっておりましたが、諸般の事情でいったん中断となりましたので、リハビリを兼ねて久々にお邪魔させていただきました。
また少しずつ参加できたらなと思っています。
読んでくださってありがとうございます!


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秋田柴子
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