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数学ギョウザ

私の夫は数学者だ。
この数学者というのが厄介な生き物で、とかく日常の諸々を数式や定理に当て嵌めたがる。
この日は大好物のギョウザを前に、お決まりの講義が始まった。

「ギョウザ満足度、いわゆるGSは一次関数で表せるんだよ、葵ちゃん」
ウザい。ウザいにも程がある。
何がいわゆるGSだ。勝手に世間一般化するな。
ギョウザを一つ頬張った夫は楽しそうに続けた。

「一次関数の公式『y=ax+b』これは判るね?yがギョウザ満足度とすると、変数xはギョウザの個数。たくさん食べれば満足度が上がるのは当然だよね」
「……うん」

何を隠そう、私も無類のギョウザ好きであることをここに記しておく。

「定数a、これは簡単。僕の好きな飛角亭のギョウザは一個30gだから、故にa=30」

普通の会話で"故に"とか言うな。

「じゃあ定数bは何なのよ?」
夫は立ち上がると嬉々として冷蔵庫を開けた。

「2人で飲むビールの本数、故にb=2。ギョウザにビールは鉄壁の公式だからね」

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秋田柴子
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