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心お弁当【毎週ショートショートnote】

「ねえ、明日のお弁当、ナシでいいよ」
「え、どうして?」
「うん……たまには購買のパンとか、買ってみたくて……あ、あのお母さんのお弁当が嫌ってわけじゃ……」

途端にお母さんの声のトーンが跳ね上がる。

「何でそんなこと言うの!お母さん、毎日一生懸命作ってあげてるのに!」
「う、うん。それは判ってるけど、だからたまにはお母さんも休んで、とか……」
「何言ってるの!親が子供のごはん作るのは当たり前でしょ!お母さん、そんなひどいことできません!」
「……」

贅沢だっていうのは判ってる。でも、でもさ。
たまには友達とわいわい騒ぎながらパン選んだりしたいって、そんなに我儘なのかな。


翌朝、お母さんは満面の笑みで、きっちり包んだお弁当を差し出した。

「ほら麻実、今日は唐揚げよ。朝から揚げ物って大変なんだから。お母さんの心が込もったお弁当、パンなんかよりずっといいでしょ?ね?」

私は曖昧に頷いた。
家を出ると、ひとりでに溜息が洩れる。

――心って、時たま、重い。

(415字)

【あとがき】
ふう、今週も何とか参加できました。
『心 × お弁当』と来ると、どうしてもハートフル路線が多くなりそうなので、敢えて真逆に振ってみました。
実際に結構あるお話のようですね。考えさせられます……。

*この記事は、以下の企画に参加しております。


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秋田柴子
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