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メガネ初恋【毎週ショートショートnote】

「アタシ、明日こそ運命の人に出会うの!」
「馬鹿言え!それより俺を手に取ったあの子、めっちゃかわええーー!」

ここは市内某所の眼鏡店。
店が閉まるや、実は夜な夜な眼鏡たちが大騒ぎ。

「おい、黒ブチ。おまえはどうなんだよ」
「べ、別に僕は……」

口ごもる僕を、お堅いヤツだとみんなが嘲笑う。

「――あ、こんなのもいいかな」

ある日、一人の女性が僕を手に取った。
綿のように白い肌と筋のとおった鼻にそっと触れる。

「あいつ、うまくやりやがって」

仲間のやっかみを背後に、僕は生まれて初めて店を出た。
ああ、日差しが眩しい。
いや、眩しいのは君の眼差しだ。だって君の瞳がすぐ近くにあるんだもの。君の吐く息が僕をぼうっとさせる。
こんな気持ち、初めてだ……

「すみませーん」
「おや、昨日のお客様。どうなさいました?」
「この眼鏡、フレームがふにゃふにゃするんです。レンズもずっとボケてるし。交換してもらえません?」

――「初恋は実らない」なんて誰が言ったんだよ、ちくしょう。


(416字)


【あとがき】
みなさま、お久しぶりです。
今月から、少しずつ再参戦したいと思っています。
フル参戦は難しいかもしれませんが、ぼちぼち書いていきますので、またお付き合い頂けたら嬉しいですー!!

*この記事は、以下の企画に参加しております。


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秋田柴子
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