立方体の思い出【毎週ショートショートnote】
ここがどこなのか、僕は知らなかった。
仲間はたくさんいた。たまに誰かいなくなって、すぐにまた誰かが入ってくる。一人になることはない。
でもなぜか、いつも寂しかった。
理由は判らない。どうしてだろう。
きっとまわりのみんなが、寂しそうな眼をしていたからかもしれない。
そしてたぶん、僕も。
四角い箱の中で、僕は仲間と共にいつも震えていた。
どうして?寒くなんかないはずなのに。
「もうすぐかな」
「……かもね」
毎日交わされる同じ会話。
それが僕の箱の中の思い出。
そして今日もまた部屋の扉が開く。
いなくなるのは誰?もしかして……僕?
でもその日はいつもと違った。
白い服を来た知らない女の人と、その傍らに立つ背の高い男の人。
「この子!この子にします。前に飼ってた子にとてもよく似ているの」
そう言うや彼女は柵でできた箱の隙間から、細い腕を僕に向かって差し出した。
箱の思い出は、唐突にそこで切れている。
そして新しい思い出は、今、始まったばかり。
(406字)
【あとがき】
すみません、ちょっとシリアスで。
思いついたままに書き連ねてしまいました。
いろいろ事情はあるかと思いますが、無責任に飼い、無責任に放置することだけは控えなければいけないな、と思います。
みんな幸せになってほしいな……
不死蟹さんのご本復をお祈りしております。
どうぞお大事になさって下さい。
皆様もお体にお気をつけて……
*この記事は、以下の企画に参加しております。
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