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草食系男子に教えられたこと【毎週ショートショートnote】

女子生徒が騒ぐのも無理はない。
涼しげな目元に鼻筋の通った顔。スタイルも抜群だ。
それなのに……

「あ、俺、そういうの興味ないんで」

毎週のように女の子から告白されても、いつも返事は判で押したように同じ。今日なんて学年一の美少女が決死の覚悟で思いを打ち明けたというのに、眉ひとすじ動かさず、お決まりの台詞をおざなりに口にするだけだ。

「おまえさあ、めっちゃもったいなくね?」
「女の子より男が好きなタイプ?」
「てか、いっつも本読んでばっかりじゃん」

クラスの男子たちの心中は穏やかではない。
だが彼は手にした本から目も上げずに答えた。

「……だから興味ないんだ。本読んでる方が好きなだけだよ」

「またまたそんなこと言って!なあ、そんな熱心に何読んでるんだ?……『悟りを開くとは』ってなんだよ、これ!」

彼は静かに笑った。

「人は結局、最初も最後も独りだからね。ならその途中だって独りでよくないか?いつか悟りを開くのが俺の唯一の望みなんだよ」

「……僧職系か」

(416字)

【あとがき】
諸事情あって、先ほどまでえらくおカタい文章を書いておりました。
そんでようやく終わって道場に来ましたら、まあ書くのが楽なこと楽なこと(笑) こんなけったい、いえ個性的なお題でも、自由に書けるというのはいかに楽で幸せなことか、としみじみ噛みしめている秋しばです。
さ、ごはんにしよっと。

*この記事は、以下の企画に参加しております。


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秋田柴子
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